コーチングとは?ビジネスでも注目の人材育成手法をわかりやすく解説

コーチングとは?ビジネスでも注目の人材育成手法をわかりやすく解説

ビジネスでは、部下やチームが目標を達成できるようサポートする必要があります。その際に効果的なのがコーチングという人材育成の手法です。コーチングは、答えを与えるのではなく、相手と一緒に考えるプロセスが特徴です。

この記事では、ビジネスにおいてコーチングが持つ意味と概要、メリットやデメリット、コーチングの基本3原則、ビジネスでのコーチングのやり方を解説します。

コーチングとは?ビジネスにおける意味をわかりやすく解説

コーチングは、人材育成分野において注目される手法のひとつです。比較的、新しい考え方であることから、明確な定義はありません。一般的に、コーチングとは「対象者のビジョンや能力を引き出し、自己実現や問題解決の手助けをすること」といえます。

「コーチング」は英語の「coach」(馬車)に由来し、「目的地まで人を連れていくための手段」という意味合いがあります。1840年代から馬車だけでなく人を指すようになり、1900年以降からスポーツ指導法を指して使われ始めました。

1950年代以降にビジネス分野へと転用され、1990年代にはアメリカなどでコーチングが盛んになります。日本でも2000年頃から、マネジメント分野の研修などに用いられ、今日ではスポーツやビジネス以外でも、さまざまな分野で幅広く取り入れられています。

上司と部下

ビジネスコーチングのパイオニア、ジョン・ウィットモア氏によると、コーチングは「個人の可能性を引き出し、パフォーマンスを最大化すること」を指します。また、ウィットモア氏は「ただ教える(ティーチング)ことよりも、深い学びへとつながる」と述べています。

従来の人材育成手法のように、知識を指導として教える(ティーチング)方法は、対象者が答えをすぐに得られて効率的な反面、発展的な学びにはつながりにくい面もあります。

コーチングでは、一方的に教えるのではなく、質問・傾聴などの双方向なコミュニケーションを通して問題解決のための「考え方」「計画の立て方」を学ばせることで、発展的・継続的な学びへとつなげていきます。

そのため、コーチングは1対1で行うのが基本です。相手によって最適な問いかけが異なるため、個別対応が必要となるからです。

 

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コーチングのメリット・デメリットーー適したケースとは?

ここでは、人材育成の手法としてのコーチングについて、メリットとデメリット、コーチングに適したケースを解説します。

コーチングがもつメリット

コーチングのおもなメリットは、以下の3点です。

  • 考える力や課題解決力が伸びる
  • 自発性や応用力、再現性が高まる
  • 学習能力自体が向上する

コーチングでは、目標や目的に対して対象者が自ら答えを導き出すプロセスを大切にするため、次に同じような状況になった場合の解決能力が向上します。部下が持つ可能性を開花させるためには、マネジメントにコーチングを取り入れると効果的です。

コーチングのもつデメリット

一方で、コーチングには次のデメリットがあります。

  • 効果が出るまでに時間がかかる
  • 一度に大勢の人を育成するのは難しい
  • 知識や経験がない人や、体系的な知識の伝達を対象にするのは不向き

コーチングでは、従来のティーチングのような一斉授業は使えません。また、対象者が独力で解答にたどり着くためには、すでにある程度の知識や経験を持っている必要があり、そのような蓄積が全くない人には不向きです。

学習能力の向上

このような特性から、コーチングは対象者にある程度の能力がある、答えや方法がひとつではない、対象者の個性やモチベーションを尊重したいケースなどに適しています。

 

コーチングの基本3原則とは?

コーチングを行ううえで守るべき基本3原則は次の通りです。

  • インタラクティブ(interactive・双方向)
  • オンゴーイング(ongoing・現在進行系)
  • テーラーメイド(tailor-made・個別対応)

それぞれ、以下で詳しく解説します。

インタラクティブ(interactive・双方向)

インタラクティブ(interactive)とは、対話型・双方向の情報のやり取りなど、一方通行ではないコミュニケーションを指します。

従来のティーチングの手法では、上司が部下へ一方的に指示を出すケースが多くなります。しかし、一方通行なコミュニケーションだけでは、部下が自分で考える機会は生まれにくく、受け身の行動のみとなってしまいます。

相手の意見を聞く双方向のコミュニケーションを行うには、時間や労力が必要です。しかし、自発的な気づきや行動を促すことで部下が成長していけば、指示を出す手間が減っていき、長期的な視点では効率の良い人材育成手法だといえます。

上司が部下を励ます

オンゴーイング(ongoing・現在進行系)

オンゴーイング(ongoing)は、現在進行形、継続中の意味です。

コーチングは一度きりでは効果が浸透しにくく、中長期ベースでの定期的な継続が必要です。効果的なのは、コーチングで学んだ考え方を職場で実践し、定期的に振り返って職場でまた実践するというサイクルを回していくことです。

テーラーメイド(tailor-made・個別対応)

テーラーメイド(tairor-made)は、紳士服などを注文して仕立てる(オーダーメイド)ことから転じて、個別対応という意味を表します。

コーチングは「答えは既に相手の中にある」という考え方のもとで行います。相手の中にある答えに気づかせるには、個別対応の問いかけが求められます。

たとえば、失敗の原因について考えるとき、相手の特性に応じて個別対応した言葉を投げかけなければ、人によっては失敗を責められているように感じ、答えまでたどり着けません。後述するタイプ分けを活用して、対象者に応じたテーラーメイドな問いかけが必要です。

 

ビジネスにおけるコーチングのやり方とは?

「問題解決に必要な答えやリソースは、すでにコーチングの対象者が持っている」という考え方が、ビジネスにおけるコーチングではベースになります。その「答えやリソース」をコーチングによっていかに引き出すかがポイントです。

そのためには、担当者と対象者が対等な関係で話し合い、信頼関係を築くことが前提です。担当者が上司、対象者が部下であっても、コーチング中は同じ立場に立って目標達成について話し合い、上下関係は持ち込まないように心がけます。

信頼関係の構築を心がけながら、次のステップでコーチングを行います。

  • ステップ1.現状の整理
  • ステップ2.目標の設定
  • ステップ3.リソースの明確化
  • ステップ4.計画の具体化

まずは、課題に対して対象者が置かれた現在の状況はどうなのか、これからどうしたいのかを一緒に考えます。そして、質問に対する対象者の答えを傾聴・承認します。

答えが曖昧な点については質問を重ねて、対象者のなかでの思索や気づき、意見やアイデアを促して、具体的な目標や計画の立案へとブラッシュアップしていきます。

各ステップでは、次のように3原則をベースにした手法を活用して、対象者へと問いかけを重ねていきます。

  • インタラクティブ:質問・傾聴
  • オンゴーイング:承認・計画の立案
  • テーラーメイド:タイプ分け

インタラクティブ原則のための「傾聴」とは、対象者が伝えたいことを理解し、受容・共感しながら真摯な態度で話を聞くことです。

また、オンゴーイング原則の「承認」とは、対象者を観察し行動や成果などの事実を伝えて、その人の存在や長所を認めることとなります。

テーラーメイド原則のための「タイプ分け」とは、対象者に合わせた個別対応のコーチングを行うために、対象者の特質がどのような分類に当てはまるかを考慮することです。このタイプ分けにはさまざまな手法がありますが、代表的なものとして4類型に分類する「DISC理論」があります。

DISC理論などの手法で対象者を分類したら、上記のように特性に合うアプローチをステップごとに行っていきます。

DISC理論とは?

D−Dominanca(主導型):自ら主導・決定したがる人。目標は一緒に設定し、詳細は本人に委ねると効果的。

I−Influence(感化型):感情が豊かで社交的、人の影響を受けやすい人。褒めたり、一緒に取り組んだりすると成長しやすい。

S−Steadiness(安定型):安定を好み、変化を嫌う人。目標達成のための計画や行動を具体化し、やることや見通しを明確化するとよい。

C−Conscientiousness(慎重型):客観的なデータなど、論理性を重視する人。本人が納得するまで、論理的な説明を重ねる必要がある。

 

コーチングは、相手の可能性を引き出し、パフォーマンスを最大化するためのスキルです。課題解決力や自発性、学習能力そのものを伸ばすメリットがあります。

コーチング3原則をベースに、質問・傾聴・承認・タイプ分けなどのスキルを活用して、相手の中にある答えやリソースを効果的に引き出し、目標達成や問題解決につなげていきましょう。