【Polars入門】基本的な使い方からPandasとの違い・移行方法を解説

Pandasで大量のデータを扱う中で、次のような課題を感じたことはありませんか。

・pandasの処理速度やメモリ消費に不満がある
・より高速で省メモリなデータフレーム処理ツールを探している

そこで注目したいのが、高速・省メモリを特徴とする次世代データ処理ライブラリ「Polars」です。

Polarsは、Pandasの処理速度やメモリ使用量に課題を感じている方にとって、有力な代替手段となります。そこでこの記事では、

・Polarsの基本的な特徴と概要
・Pandasとの性能比較や違い
・Polarsの導入方法と基本操作
・Polarsを使うメリットと注意点

についてわかりやすく解説します。

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Polarsとは?

Polarsは、Rustで開発された次世代のデータフレームライブラリで、並列処理と列指向メモリ構造により、高速かつ省メモリな処理を実現しています。PandasがPythonやNumPyの上に構築されているのに対し、Polarsは完全にRustで実装されており、基盤としてApache Arrowを採用しています。

polarsのホーム画面

出典:Polars — DataFrames for the new era

メモリ効率が高く、特に文字列や複雑なデータ型の処理も効率的に行える構造となっています。また、Polarsはマルチスレッドの並列処理によって、大規模データでの高速処理が可能です。実際のベンチマークでも、Pandasと比較して「5~10倍の高速化」や「2~4倍の低メモリ使用量」といった結果が報告されています。

エンジニアが抱えるパフォーマンスやリソースの課題を解決できる選択肢として、注目されているものがPolarsなのです。

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Polarsの特徴

ここでは、Polarsがもつ主要な特徴について、簡単にまとめて紹介します。

高速で大規模データを扱える

Polarsは、Pandasよりも大規模データの高速処理が可能です。Plasrsが公開しているベンチマーク(5億件のeコマースデータを処理したベンチマーク)では、Pandasが4.5時間かかったのに対し、Polarsは1.2時間で完了しています。

さらに、メモリやエネルギー消費も、最大で8倍の効率化や63%の消費削減といった実績が報告されています。

Pandasについて詳しくは「【Pandas入門】Pythonのデータ分析ライブラリ「Pandas」を解説!」をご覧ください。

複数言語で利用可能

PolarsはPythonだけでなく、複数の言語向けにAPIを提供しています。Rustで実装されたコア部分により、一貫したパフォーマンスが得られる点が特徴です。

PythonやRustについては「Python(パイソン)とは?人気プログラミング言語の特徴・活用事例を解説!」、「【Rust入門】概要や環境構築、プログラムの作成方法を詳しく解説!」をご覧ください。

他ツールとの連携が豊富

PolarsはArrowフォーマットに対応しているため、ParquetやCSV、IPCなどと互換性があります。また、dbtやDuckDB、データ基盤など他ツールとの統合も進んでおり、ETLパイプラインへの組み込みも容易です。

Lazy evaluation(遅延評価)で無駄な処理を省く

Polarsは、遅延評価をサポートしており「.scan_csv」などのLazy APIを使うことで、処理が必要なタイミングまで遅延させられます。最終的に.collect()を呼び出すことで一括実行され、次のような最適化が自動的に適用されます。

・predicate pushdown:必要な行だけ読み込み
・projection pushdown:必要な列だけ処理する

遅延評価により、大規模データやストリーミング処理でも無駄なリソース消費を抑えつつ、効率的なデータ処理が実現できます。

 

PandasとPolarsとの違い・性能比較

PandasとPolarsの最大の違いは、Polarsが圧倒的な高速性を発揮する点です。先述したように実際のベンチマークでは、PolarsはPandasに比べて処理速度が5〜100倍速くなるケースも報告されています。特に、大規模データの集計やログ処理、CSVファイルの連結といった場面で処理速度の差が顕著に現れています。

HPCログの処理では、Pandasで30分かかった作業がPolarsでは約3分で完了し、CSVの連結もPandasの40秒に対しPolarsは10秒と大幅に短縮されました。また、メモリ使用量も優れており、PolarsはPandasに比べて30~70%削減することができます。

ただし、小規模データの場合は処理速度の差が小さく、既存のワークフローではPandasのほうが使いやすいという意見もあります。

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Polarsの導入と基本操作

ここからは、実際にPolarsに触れ、インストール方法から基本操作、Pandasからの書き換え方法について解説します。

一つずつ見ていきましょう。

Python環境でのインストール方法

はじめに仮想環境を作成し、pipでPolarsをインストールします。

pipでPolarsをインストールする画面

pipで簡単にインストールすることが可能です。

Conda環境でPolarsをインストールする画面

Conda環境であれば、次のコマンドでインストールできます。

PolarsはRustで実装され、Pythonへ統合されているため、ネイティブに近いパフォーマンスが得られます。

基本の操作方法

基本操作として、データフレームの生成、ファイルの書き出し・読み込み、フィルタ・集計を試してみましょう。

ここからは、Pythonの対話モードで進めていきます。

今回は次のデータを準備しました。「data.csv」として作成しておき、読み込んでデータフレームとして進めていきます。

年齢 名前 職業 年収 都市
25 佐藤 エンジニア 450 東京
32 鈴木 デザイナー 380 大阪
45 高橋 マネージャー 700 名古屋
28 田中 エンジニア 480 東京
37 伊藤 営業 520 大阪
41 渡辺 マーケター 460 名古屋
29 山本 エンジニア 470 福岡
34 中村 デザイナー 390 東京
50 小林 マネージャー 720 大阪
26 加藤 営業 510 福岡
38 吉田 マーケター 440 名古屋
43 佐々木 エンジニア 460 東京
31 松本 デザイナー 400 大阪
27 井上 営業 530 福岡
40 木村 マネージャー 710 名古屋

はじめにPolarsをインポートし、CSVのデータをデータフレームとして格納します。

データフレームの表示画面

Pandasと同じように、フィルタや集計ができます。

まずは「年齢が30歳以上」の条件でフィルタし、年齢順にソートして出力してみましょう。

年齢順にソートしたデータベース

ソートの対象を「年収」に変更し、降順に出力する場合は次のとおりです。

年収でソートしたデータベース

続いて、職業別の平均年収を集計してみましょう。

以下を実行することで職業別にグループ分けされ、年収の平均が算出できました。

職業でソートしたデータベース

このようにPolarsでもPandasと大きく変わることなく操作することができます。

Polarsの2つの動作モード(Lazy/Eager)

PolarsはLazyとEagerの2つの動作モードを備えています。

・Lazyモード:クエリが必要とされるまで評価されず、最後にまとめて実行する
・Eagerモード:各ステップが順次実行され、中間結果が返される

前述の基本操作では、Eagerモードで動作させていました。

Lazyモードは動作を最適化し、メモリとCPUの負荷を軽減するため、Lazyモードの利用が推奨されています。モードの切替は、ファイルを読み込む際に「scan_csv」を使用すればLazyモード、「read_csv」を使用すればEagerモードとなります。

「年齢が30歳以上の職業別の年収平均」をEager/Lazyモードそれぞれで集計してみましょう。

【Eagerモード】

Eagerモードの画面

【Lazyモード】

Lazyモードの画面

どちらも得られる結果は同じですが、前述のとおりメモリとCPUの負荷が軽減されるため、Lazyモードの利用が推奨されます。そのほかの使い分けとしては、クエリが定まっている場合はLazyモード、クエリが定まっていない・中間結果を確認したい、という場合にはEagerモードを使うとよいでしょう。

Pandasからの移行・書き換え方法

基本的には、「import pandas as pd」を「import polars as pl」に変更し、エイリアスを適宜修正していくことで対応できます。「pd.read_csv」→「pl.read_csv」のようなイメージです。

Pandas-code.py

Polars-code.py

比較しても大きな違いはないといえます。Polarsはカラムのエイリアスを変更できるため、よりわかりやすい形式に修正しました。

Pandasからの移行・書き換え画面

APIや書式がPandasと似ているため、移行自体は比較的スムーズです。ただし、groupbyはgroup_byに変わっているなど、文字列・日付処理の違いに注意が必要です。

そのため、移行時にはAPI差異を確認しながら進めることが重要です。

 

Polarsを利用するメリット

Polarsを利用することの主なメリットについて解説します。

処理速度とメモリ効率が高い

多くのベンチマークにおいて、Pandasと比較して5~100倍の速度向上が確認されています。また、メモリ消費もPandasと比べ30~70%削減できるため、リソース効率の面でも優れています。その結果、業務で扱うデータ量が増加しても、安定したパフォーマンスを維持することが可能です。

無料で使用できる

Polarsは、OSS(オープンソースソフトウェア)として配布されており、ライセンス費用は不要です。商用利用にも制限がなく、企業のプロジェクトや個人の研究用途でも安心して導入できます。

コストを抑えつつ、最新のデータ分析基盤を構築したい場合に便利です。

APIが使いやすい

PolarsのAPI設計はPandasに似ており、直感的に操作できます。特に、列単位での処理を中心とする構造化された関数設計が特徴です。ラムダやapplyの多用を避けることで、コードの可読性やパフォーマンスが向上します。また、LazyFrameやexplain()といった機能を学ぶことで、高い生産性を発揮できます。

 

Polars使用時の注意点

Polarsは高いパフォーマンスを発揮する一方で、いくつか注意点も存在します。

ここでは、実際に導入・運用する際に気をつけたいポイントを見ていきましょう。

一部ライブラリが未対応

PolarsはPandasほど可視化ライブラリや機械学習ライブラリと密接に統合されていません。例えば、MatplotlibやSeabornなどの可視化ツールや、scikit-learnなどのMLライブラリ(機械学習ライブラリ)との連携は限定的であり、Pandasのようなシームレスな統合は期待できません。

また、Arrowフォーマット由来で抽象構文木(AST)の指定が必要な場面もあり、Pandasとは異なる対応が求められることがあります。そのため、データ分析や可視化を中心とした用途では、PolarsとPandasを併用するのが現実的です。

習得に時間がかかる

PolarsはPandasと似たAPI設計を持っていますが、細かな差分が存在するため、実務での移行には一定の学習コストが発生します。特に、文字列や日付に関する関数や操作はPandasと異なる点が多く、Pandasの.dt系操作とは使い方が異なるため注意が必要です。

こうしたAPIの違いに慣れるまでには一定の習熟が必要です。効率的に学習するためには、Udemyなどのオンライン教材を活用することも有効です。

 

Polars導入でデータ分析を加速させよう!

Polarsは、次世代データ処理に求められる高速性・省メモリ・マルチ言語対応を備えています。Pandasより大規模データに強く、複数言語や他ツールとの連携も充実しています。学習コストや一部ライブラリ未対応といった注意点はありますが、効率的なデータ分析を目指すエンジニアにとって有力な選択肢となります。

より詳しく実践的な内容を学びたい方には、Udemyの動画講座がおすすめです。

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レビューの一部をご紹介

評価:★★★★★
コメント:データサイエンティストに転職したく活動をしています。その中で、いい刺激になりました。Polarsも使いこなせるように学習を進めます!

評価:★★★★★
コメント:気になっていたPolarsが基礎から学べました!(サンプルコードもあってスタートしやすかったです)実践できるデータ分析演習もあり非常に参考になります。

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