【講師インタビュー】熱狂にも恐怖にも流されない。「AIの歴史」から10年使える判断力を手に入れる方法

今日も新しいAIモデルの発表や、目まぐるしい技術トレンドのニュースが社会を賑わせています。しかし、その情報に追いつくだけで、どこか疲弊してはいないでしょうか。

実は、現代のAI導入で起きている失敗や組織の混乱は、1980年代のAIブームの時と「構造的にほぼ同じ」だといいます。技術は進化しても、人間と組織の問題は40年間変わっていないのです。

Udemyで25万人以上の受講生にAIを教えてきた専門家であり、法政大学兼任講師でもある我妻幸長講師に、流行のツールを追うだけでは手に入らない「10年間使える本物の判断力」の身につけ方を伺いました。歴史という『他人の失敗の記録』を自分の武器に変える、新しいメタ認知の視点をお届けします。

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コースの原点:AIブームの歴史に潜む「螺旋」

ーー自己紹介を簡単にお願いします(専門分野・これまでのキャリア)。

「ヒトとAIの共生」をミッションに掲げる、SAI-Lab株式会社の代表取締役を務めています。
AIの教育・研究・アートを軸に活動しています。東北大学大学院理学研究科物理学専攻を修了し、博士(理学)の学位を取得しました。現在は法政大学デザイン工学部の兼任講師も務めています。
様々な学会で講演したりして、アカデミックな場での活動を広げています。

Udemyでは現在25万人以上の受講生にAIを教えており、複数の著名企業でもAI技術の指導にあたっています。また、福岡在住なのですが地元でAIコミュニティ「AGI福岡」を主宰しています。これまでに『はじめてのディープラーニング』など何冊かAI関連の本を書いてきました。

ーーなぜこのテーマを選んだのですか?原点は何ですか?

きっかけは、ある違和感でした。2023年、ChatGPTが爆発的に広まったとき、世の中には大きく分けて「AIですべてが変わる!」という熱狂と、「AIに仕事を奪われる」という恐怖の2種類の反応がありました。ただ、どちらも感情的で、根拠が薄かったんです。

そのとき思ったのは、「この人たち、1980年代のエキスパートシステムブームを知らないんだな」ということです。1980年代にも、まったく同じことが起きていました。「AIで業務が変わる!」という熱狂。導入してみたら実運用が難しい。300社が撤退。そして「AIは使えない」という幻滅。同じサイクルが、40年前にすでに一周していたんです。もっと調べると、1950年代にも同じ構造がありました。
つまりAIの歴史は、「希望→過剰期待→幻滅→しかし種は残る」という螺旋を70年間描き続けていました。

技術は変わる。しかし人間と組織の問題は変わらない。この構造を知っているかどうかで、判断の質がまったく変わります。歴史という「他人の失敗の記録」を、自分の判断の精度を上げるための道具に変換する。それがメタ認知であり、このコースの原点です。

もう一つ、個人的に強く感じていることがあります。ChatGPTを使い始めてから、自分の思考が変わっていることに気づしました。検索の前にAIに聞く。文章をゼロから書かなくなる。AIの出力を自分の考えと混同し始める。

これは便利さの裏側で、静かに進行している変化です。1966年にELIZAという単純なプログラムに人々が「理解」を投影したとき、開発者のワイゼンバウムは衝撃を受けました。60年後の今、同じ構造がChatGPTで、しかも数億人規模で起きている。この変化に気づいていない人は、流される。気づいている人は、対応できる。その差を作りたかったんです。

「歴史を知っている人は、同じ場所に立っても違うものが見える」——このコースが目指しているのは、その「違う目」を手渡すことです。

AIに振り回されない「俯瞰する力」

ーーこのコースの「一言で言うと何を学べる講座」ですか?

AIの70年の歴史を学ぶことで、「AIに振り回されない判断力」を手に入れる講座です。同時に、AIとは何か、そして人間とは何かを俯瞰した立場から洞察する力を養う講座でもあります。

ーー学習を終えた受講生はどんな状態になりますか?(できるようになること・得られる成果)

AIに関するニュースや提案に出会ったとき、熱狂にも冷笑にも流されず、「これは本物か」「自分はどこまで任せるべきか」を自分の頭で判断できるようになります。
その判断の根拠は「なんとなく」ではなく、70年分の歴史のパターンです。そしてもう一つ、もっと深いところで変わることがあります。

AIが自分の思考を静かに変えていること——検索の前にAIに聞く、文章をゼロから書かなくなる、出力を自分の考えと混同する——に気づけるようになります。この自覚があるかどうかが、AIを使いこなす人と、AIに使われる人の分かれ目です。

なぜ今、歴史を学ぶべきなのか

ーー今このテーマを学ぶべき理由は何ですか?

AIの70年の歴史の中で、今だけが特別な瞬間です。「全員が当事者になった」のは、史上初めてだからです。過去のAIブームでは、希望を持っていたのは研究者や投資家だけでした。
しかしChatGPTは違います。無料で、専門知識不要で、ブラウザさえあれば誰でも使える。しかも「言語」という、すべての人が仕事と生活で使うインターフェースで動く。選ぶ・選ばないに関係なく、すでに影響が始まっています。にもかかわらず、ほとんどの人が判断の道具を持っていません。

歴史を知らないから、同じ失敗パターンが目の前で再現されていても気づけない。そして最も厄介なのは、検索の前にAIに聞く習慣、文章をAIに書かせる習慣、AIの出力を自分の考えと混同する習慣が、今この瞬間も、自覚なしに定着し続けていることです。

自覚が遅れるほど、修正が難しくなります。「いつか学ぼう」では遅いテーマです。AIがあなたの思考を変え始めている今が、それに気づくための最後のタイミングかもしれません。

ーーどんな受講生にこそ受けて欲しいですか?(ターゲット)

「AIの技術には詳しくないが、AIについて判断を求められる立場にいる人」が主な対象です。たとえば、部下から「生成AIを導入したい」と提案されたとき、何を基準に承認・却下すればいいかわからない管理職。ベンダーからAIツールの営業を受けたとき、デモの印象だけで判断してしまいそうな事業責任者。「AIに仕事を奪われるのでは」と漠然と不安を感じているが、その不安を具体的な問いに変換できないビジネスパーソン。

共通しているのは、「AIを作る側」ではなく「AIを使う側・判断する側」であること。そしてプログラミングや数学の知識はないが、判断の質を上げたいという意欲があることです。

歴史の視点を借りる演習とつまずきへの対処

ーー実践的な演習やワークはありますか?あれば一例を教えてください。

はい、各セクションの最後に、AIの父アラン・チューリングとのロールプレイ演習があります。この演習の狙いは、歴史上の人物の視点を借りることで、自分が当たり前だと思っている前提を揺さぶることです。
「画像認識が人間を超えた」という事実を、2020年代の私たちは「すごい」で済ませがちですが、チューリングの視点に立つと「それは知能なのか」という根本的な問いが浮かび上がります。最終セクションでは、ロールプレイで「10年後の自分」との対話を行います。

ロールプレイ以外にも、自己診断型のワークがあります。正解のないワークで、自分の思考の癖に気づくことが目的です。

ーー効率よくスキルを定着させるための学び方や復習法のおすすめはありますか?

学んだことを誰かに話すことをおすすめします。相手は「なんで?」と聞きます。その「なんで」に答えようとする過程で、自分の理解が試されます。うまく説明できない部分が、まだ自分のものになっていない部分です。

各セクションの学習メモをダウンロードできるようにしてありますので、全部を覚えようとせず、「今の自分に関係あるセクション」だけ手元に置いて、必要なときに参照するのもおすすめです。

ーー途中でつまずきやすいポイントと、その対処法はありますか?

「歴史の話はわかったけど、自分の仕事と何の関係があるの?」と感じる瞬間だと思います。対処法はシンプルです。そう感じたら、今自分の周りで起きているAI関連の出来事を一つ思い浮かべて、今学んでいる歴史のパターンに重ねてみてください。歴史が急に「自分の話」になります。もう一つ、技術的な用語で引っかかることがあるかもしれません。
バックプロパゲーション、Transformer、Self-Attentionといった言葉です。ただ、このコースでは技術の仕組みを実装レベルで理解する必要はありません。

「楽器の練習で間違いを逆追いする感覚」「本を順番に読むのではなくページ全体を見渡す感覚」——こうした比喩で掴めれば十分です。比喩が腑に落ちたら、用語は忘ても大丈夫です。

実務への活用とキャリア

ーー学んだスキルを仕事や副業でどう活用できますか?具体例をください。

最もわかりやすい場面は、「AI導入の意思決定に関わるとき」です。たとえばベンダーからAIツールの提案を受けたとき、「このデモのデータは本番と同じですか?」「提案書のコストにデータ整備と教育は含まれていますか?」と具体的に聞ける。
この問いを立てられるかどうかで、数百万円の判断の精度が変わります。もう一つは、日常業務でChatGPTを使うときの判断です。生産性を上げながらリスクを避けるバランスが取れます。

このコースで学んだ歴史のストーリーとフレームワークは、そのまま社内研修の素材になるかと考えています。「技術の使い方」ではなく「技術との向き合い方」を教えられる人材は、今のところ非常に少ないです。

ーー就職・転職・昇進に繋がるなら、その道筋を教えてください。

正直に言うと、このコースを受けたこと自体が履歴書の資格欄を埋めるわけではありません。プログラミングスキルや資格が得られるコースではないからです。
ただし、このコースが鍛える能力「AIについて構造で判断できる力」が最も価値を持つポジションは明確に存在します。AI導入の意思決定に関わるマネージャー、DX推進の企画職、経営企画、事業開発といった「技術を選ぶ側」の仕事です。

また、技術選定、技術に関する判断を委ねられるエンジニアにも役立つはずです。AIを実装する技術力より、AIの提案を評価し、導入の可否を判断し、組織の抵抗を予測して対処する力の求められる場面は多々あります。

ーー受講を迷っている人に向けて、短いエール

AIについて「よくわからない」と感じていること自体が、実はこのコースに最も向いている証拠です。
よくわからないまま熱狂する人は、冬が来たとき驚きます。よくわからないまま否定する人は、機会を逃します。

「よくわからないから、ちゃんと理解したい」と思っている人だけが、歴史から学べます。70年分の他人の失敗を、6時間で自分の判断力に変えられる。これはかなり効率のいい投資だと思います。

受講生に伝えたいFAQのトップ3

ーープログラミングや数学の知識がなくても大丈夫ですか?

まったく問題ありません。数式は一切出てきません。

ーーChatGPTの使い方を教えてくれるコースですか?

いいえ。操作方法やプロンプトの書き方を教えるコースではありません。
「ChatGPTの出力をどこまで信頼すべきか」「AI導入の提案をどう評価すべきか」「自分の思考がAIにどう変えられているか」——判断力と自覚を鍛えるコースです。
使い方を学ぶコースは他にたくさんあります。このコースは、使い方を学んだ人が「次に必要になるもの」を提供します。

ーー歴史の話が中心だと聞きましたが、実務に役立ちますか?

役立ちます。ただし「来週のプロジェクトですぐ使えるツール」と「10年間使える判断力」の違いがあります。このコースが提供するのは後者です。

執筆担当のひと言

「歴史とは、他人の失敗の記録を自分の判断の精度を上げるための道具に変換するもの」という言葉に、ハッとさせられたビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
AIの進化スピードに焦り、次々と登場する新しいツールの「使い方」ばかりを追いかけてしまいがちですが、今本当に必要なのは、一歩引いて全体を俯瞰する「メタ認知(客観的な視点)」なのかもしれません。
「AIに使われる人」ではなく「AIを使いこなす人」になるための、羅針盤となってくれるような講座です。

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作成者: 我妻 幸長 Yukinaga Azuma(人工知能(AI) / 生成AI / ディープラーニング / 機械学習)

ヒトの手で「知能」を作ろうとする70年の営みをたどりながら、自分の思考を俯瞰的に捉える「メタ認知」を身につけます。AIブームと冬の構造、生成AIの本質と限界を学びます。技術知識ゼロでも、AIについて「自分の判断軸」を持てるようになります。

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