SAP HANA(High-performance analytic appliance)というシステムに興味があるものの、具体的な機能や使い方については詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、SAP HANAの特徴や導入事例、SAP S/4HANAとの違いなどを解説します。SAP HANAの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
SAP HANAとは?
SAP HANA (High-performance analytic appliance) とは、ドイツの大手ソフトウェア開発会社である、SAP社が提供する超高速データベースシステムです。従来のデータベースとは異なり、インメモリ・カラム志向型と呼ばれる技術が採用されています。
カラム志向型データベースであるSAP HANAは、DBファイルの肥大化を防止することが可能です。また、表形式のデータだけでなく、文書や画像といった非構造化データの管理にも対応しています。
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SAP HANAの主な特徴は、データをメモリに保存することやデータの格納方法、外部システムとの連携性の高さです。ここでは、SAP HANAが一般的なデータベースと異なっている点について詳しく解説します。
インメモリーデータベースによるデータ処理の高速化
従来のデータベースの場合、保存するデータはハードディスクやSSDなどに格納されます。一方、SAP HANAは、データをコンピュータのメインメモリ(RAM)に保存するタイプのインメモリーデータベースです。
メインメモリに保存されたデータには、ハードディスクやSSDに保存されたデータと比べて高速でアクセスできます。そのため、従来のデータベースの10倍~10万倍の速度でのデータ処理が可能です。また、インメモリーデータベースの特性上、サーバーがダウンしてもデータが失われません。
カラム型データベースによるデータサイズ圧縮
SAP HANAは、カラム型データベースシステムとして設計されており、データを横軸ではなく、縦軸のカラムでまとめる処理を行います。情報を行単位で扱うロー型データベースと比べて、カラム型データベースではデータサイズを圧縮することが可能となります。SAP HANAを導入することでデータの肥大化を抑制できます。また、カラム型データベースであるSAP HANAは、データの集計や分析などの読み込み処理が得意です。
SAP HANAは、データをメモリ上のデータ格納単位ごとに自動で配置するため、ユーザーはデータの格納方式を配慮する必要がありません。非構造データも自動的に圧縮し、格納できます。
DWHエンジンでのビッグデータツールとの連携
SAP HANAには、データベースとしての機能だけでなく、データを分析するためのDWH(データウェアハウス)エンジンも備わっています。DWHエンジンを活用すると、データに含まれる様々な要素を基に高度な解析を行う、多次元分析が可能です。
また、SAP HANAは、ビッグデータを解析する外部システムと連携させることもできます。SAP HANAと連携できる主なビッグデータ解析ツールは、HadoopやRなどです。
さらに、SAP HANAはデータの処理と分析を同時に行うOLAP(オンライン分析処理)にも対応しています。
SAP HANAを導入するメリット
SAP HANAを導入すると、意思決定の迅速化やシステムの最適化など様々なメリットを得ることが可能です。ここでは、SAP HANAを導入するメリットについて解説します。
事業の意思決定スピード向上
従来のシステムでは、データの分析に時間がかかることが一般的でした。一方、メモリに格納したデータを高速で処理できるSAP HANAであれば、複雑なデータであっても短時間で解析できます。マーケットの状況をいち早く判断し、事業の意思決定スピードを向上できることが可能となります。
また、自社で蓄積した顧客データや販売データなどの分析にもSAP HANAが役立ちます。販売状況や顧客の動向をリアルタイムで解析し、サービス改善に向けた取り組みを高速化できます。
システム全体の最適化
SAP HANAを導入すると、社内システム全体の最適化が可能です。様々な部門で運用されているシステムと連携させたり、データを共有したりする際に効果を発揮します。また、データ管理コストを削減できることも導入メリットのひとつです。SAP HANAのデータ圧縮機能やインデックス削除などの機能を活用することで、メモリの容量を節約しつつ、データを効率的に管理できます。今後ますます増えていく企業のデータを適切に分析するために重要なシステムです。
SAP HANAは、「2025年の崖」の解決策としても期待されています。2025年の崖とは、経済産業省によって提起されたDX推進に関する問題を指します。SAP HANAの導入によって、社内システムの最適解を実現することがDX推進に関する問題解決につながります。
オンプレミスとクラウドどちらにも対応
オンプレミスとクラウドの両方に対応しているインメモリーデータベースというのもSAP HANAが注目される特徴のひとつです。オンプレミス環境で利用する場合、自社のニーズに応じたシステムを柔軟に構築できます。ただし、オンプレミスで利用する際は、自社のハードウェア上にシステムを構築する必要があります。
クラウドサービスで利用する場合は、初期費用を抑えて短期間で導入することが可能です。また、バージョン管理やメンテナンスを自社で行う手間が省けます。ただし、オンプレミスと比べるとカスタマイズの柔軟性には劣ります。
SAP HANAとSAP S/4HANAの違いは?
SAP HANAとSAP S/4HANAは混同されやすいですが全く別のものとなります。SAP S4/HANAとは、SAP社が提供するERP製品の名称です。SAP社が培ってきたERPの技術やノウハウを基に、インメモリーデータベースのSAP HANA(データベース)上にSAP S/4HANA(ソフトウェア)を実装しています。
SAP社がこれまで提供してきたERP製品のSAP ERP Central Component6.0は、2027年に保守サポートが終了する予定です。サービス終了後の受け皿として、後継のシステムとなるSAP S4/HANAが用意されました。
すでに従来版のSAP ERPを導入している場合、サポート終了までにSAP S4/HANAへの移行を進めることが推奨されます。
SAP HANAの導入事例
SAP HANAは、世界中の企業に幅広く導入されています。一例としては、大規模な小売チェーンを展開する企業で、SAP HANAによるPOSデータの解析システムを構築しました。SAP HANAの高速性を生かし、2,000億件以上という膨大なPOSデータを対象としたリアルタイムの分析ができるようになっています。
また、従来は46.5TBだったデータベースサイズが、データ圧縮機能とインデックス削除によって5.7TBまで圧縮されました。この導入事例以外にも、様々な業界の企業でSAP HANAが活用されています。
SAP HANAとは、データを高速で処理できるデータベースです。インメモリやカラム型指向など、従来のデータベースにはない特徴が採用されています。事業の意思決定やサービス改善を高速化できることや、社内のシステム全体を最適化できることなどがSAP HANAを導入するメリットです。
DX推進に取り組み企業の競争力を高めたい方は、SAP HANAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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