WACCという指標を見聞きしたものの、
・何を表している指標か分からない…。
・具体的な計算方法が知りたい…。
という方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、
・WACCの計算方法と活用方法
・WACCを活用する際の注意点
について解説します。
経営指標に関する学習が初めての方でも、この記事を読めば、WACCの考え方が理解できます。
WACC(加重平均資本コスト)とは?
WACC(ワック)とは「Weighted Average Cost of Capital」の略称で、日本語では「加重平均資本コスト」と訳されます。WACCは、企業が資金調達をする際に、どの程度のコストがかかるかを表す指標です。
WACCを計算する際は、株式の発行によって調達する「自己資本」と、借り入れによって調達する「他人資本」に関する数値が用いられます。これらの数値に対して「加重平均」という値を計算することでWACCが求められます。加重平均とは、各データの持つ影響度を考慮した上で計算される値です。
例えば、ある企業でWACCが3%と計算された場合、調達する金額の3%に相当する資金調達コストがかかるということを意味します。したがって、経営を黒字化するためには、WACCの数値を上回る利益を生み出す必要があります。このように、WACCは新たな事業を始める際や、投資を行う際の基準として活用することが可能です。
WACCの平均値は、上場企業の場合は5%~6%、全企業では2%~3%といわれています。
ただし、需要が安定している業界の企業ではWACCの値も平均より低くなることが一般的です。倒産リスクが低いと評価されることが多く、より低い金利での資金調達が可能だからです。
一方、トレンドの移り変わりなどに影響を受ける業界の企業では、事業リスクが高く借り入れを行う際の金利が高く設定される傾向があるため、WACCの値は平均よりも高くなることがあります。
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ここでは、WACCを計算する具体的な手順を紹介します。
手順①株主資本コストを計算
株主資本コストとは、企業が株主から資金を調達する際に、株主が期待するリターン(利益)のことです。株主資本コストを計算するための計算式は次の通りです。
E(r)=Rf+β(rM-Rf) |
- E(r):株主資本コスト
- Rf:リスクフリーレート
- β:企業のベータ値
- rM:期待収益率
リスクフリーレートとは、リスクが全くない投資から得られる利子率を表し、通常は国債の利子率などが計算に使用されます。
ベータ値は、企業の株価が市場全体の動きに対して、どれくらい敏感に反応するかを示す数値です。
ベータ値が1の企業では、株式市場全体の株価指数が上昇または下落した時に、企業の株価も同程度に上昇または下落します。ベータ値が1より大きい場合は、市場全体の変化と比べて企業の株価の変化が大きく、ベータ値が1より小さければ、企業の株価の変化は小さくなります。
成長の可能性が高い反面、リスクも高いテクノロジー企業などは、ベータ値が1より大きくなることが一般的です。一方、安定性が高いものの成長性は低い公益事業などは、ベータ値が1より小さくなります。
期待収益率は、市場全体から得られる全体的なリターンのことです。株式市場全体の平均的なリターン率などが計算に使用されます。
手順②負債コストを計算
負債コストとは、企業が資金を借り入れるために支払う利息のことです。次の計算式で求められます。
負債コスト = 利息率 × (1-法人税率) |
利息率とは、借入金の支払利息の割合です。この数値に対して、「1-法人税率」を掛けたものが負債コストとなります。
「1-法人税率」を行う理由は、企業が支払う利息費用は税務上の費用として控除できるためです。企業が負債を借り入れると、その利息を支払った分の金額を課税所得から差し引くことができ、税金の減免効果が得られます。
例えば、5%の金利で借り入れを行い、法人税率が30%だった場合、負債コストは次のように計算されます。
5%×(1-0.3)=3% |
このように、法人税率が高いほど税金の減免効果が大きくなり、実質的に企業が支払うコストが安くなります。
手順③加重平均を行いWACCを求める
WACCは、これまでの手順で算出した値を用いて以下のように計算します。
WACC = 株主資本コスト×株主資本の割合 + 負債コスト×負債の割合 |
「株主資本の割合」と「負債の割合」は、株主資本と負債の合計を分母として計算します。例えば、株主資本が100万円、負債が1,500万円の場合は、合計の1,600万円を分母とします。
この条件で、株主資本コストが8%、負債コストが4%の場合、WACCは次のように計算されます。
8% × (100万円/1,600万円) + 4% × (1500万円/1,600万円) = 4.25% |
WACCの活用方法
WACCは、プロジェクトや事業、設備への投資を行う際の判断基準として活用できます。WACCが低いほど、事業投資によって得られるリターンが、投資コストを上回りやすくなることが一般的です。そのため、WACCが低いプロジェクトや事業ほど、投資する価値が高いと判断できます。
WACCとDCF法の関係
「DCF法(Discounted Cash Flow method:ディスカウント・キャッシュ・フロー)」とは、企業が将来生み出すキャッシュフローを予測し、現在の価値に換算することで企業価値を評価する手法です。
DCF法の計算を行う際には、現在の価値に換算する際の割引率としてWACCが使用されることがあります。資金調達にかかるコストの割合を表すWACCを用いると、企業価値をより正確に評価できるからです。
キャッシュフローについては「キャッシュフローとは?財務3表との関係や計算書の作り方もわかりやすく解説」をご覧ください。
WACCの注意点
WACCの注意点として、株主資本コストと負債コストが将来的に変わらないという前提で計算していることが挙げられます。経済状況や法規制の変化といったリスク要因でこれらの値が変わってしまった場合、WACCを正しく算出することができません。
また、株主資本コストや負債コストなどの値を誤って仮定してしまった場合、実態と異なるWACCが算出されるため、正確な値で計算を行うことも注意すべきポイントです。
WACCを利用して企業の経営状態を把握しよう
WACC(加重平均資本コスト)は、資金調達にかかるコストを表す指標です。WACCは、事業や設備への投資価値を判断する基準として活用でき、WACCが低いほどリターンを得やすいと考えられます。株主資本コストや負債コストなどの数値を用いてWACCの計算を正しく行い、企業の経営状態を把握しましょう!
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