新規事業を立ち上げる際には、フレームワークの活用がおすすめです。作業の効率化だけでなく、説明する際の材料となるほか、分析の精度を向上させることにも役立ちます。この記事では、新規事業立案のステップと、それぞれの場面で使えるフレームワークをご紹介します。
フレームワークとは?新規事業で活用するメリットは?
一説では、新規事業の成功率はわずか10%未満と言われます。新たなビジネスを創り出し、軌道に乗せることがいかに難しいかを表す数字です。
だからこそ、新規事業の立案には、よく練られたビジョンや勝算、説得力のあるスピーチが求められます。また、新規事業成功の確率を高めるためには、市場調査や自社の優位性などを分析し、それらの結果を基にした計画が必要になります。このような際に活用したいのが「ビジネスフレームワーク」です。
ビジネスフレームワークとは?
「フレームワーク(framework)」とは、本来「枠組み」や「構造」を意味する英単語です。ビジネスシーンでは、「これまでに有用と認められた考え方の枠組み」がフレームワークであるとして認識されています。
ビジネスフレームワークについて、詳しくは「ビジネスフレームワークとは?役立つ22選!使い方を図と具体例で理解」をご覧ください。
フレームワークを新規事業立案で使うメリット
フレームワークには、発想や分析を行う上での指標や枠組みが、わかりやすく図式化・パターン化されています。これらの枠組みは多くのビジネスパーソンや研究者などによって磨かれてきたものですので、わかりやすいだけでなく作業を効率的・効果的に進める助けになります。また、定められた分析手法を踏襲することで、アウトプットの質を保つことにも寄与します。
また、フレームワークを用いた説明には説得力があります。株主などのステークホルダーから事業計画について理解を得たい場面にも、大きく役立つでしょう。
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新規事業を立案する際には、以下のようなフローが一般的です。
- STEP1:ビジョン(経営理念)や目標の明確化
- STEP2:事業の方向性やマーケットの決定
- STEP3:ビジネスアイデアの検討
- STEP4:具体的な行動計画の策定
それぞれの場面で、用途に合ったビジネスフレームワークを活用することが効果的です。以下では、各ステップの概要と、おすすめのフレームワークをご紹介します。
新規事業立案STEP1:ビジョン(経営理念)や目標の明確化
新規事業を立ち上げる際に、もっとも重要になるのが「ビジョン」です。「なぜ、どうして、何のために事業をするのか」によって、今後のすべての指針が決定します。
ビジョンを定めていない事業では、さまざまな判断がその時の状況に依存してしまい、一貫した軸を見いだせなくなってしまいます。もちろん、初期フェーズではなかなか明文化が難しいこともありますが、なるべく早い段階で決定したいものです。
ビジョンの明確化に役立つフレームワークをご紹介します。
MVV
「ミッション(MISSION)」、「ビジョン(VISION)」、「バリュー(VALUE)」の頭文字を合わせたMVVは、新規事業立案でも重要です。それぞれの役割は、以下の通りです。
- ミッション:Why=自分たちは、なぜその事業をするのか?
- ビジョン:What=自分たちの事業は何を目指すのか?
- バリュー:How=どのようにその事業を実現していくのか?
なお、長く続く事業のMVVは、時代に合わせて変化しても構いません。むしろ、“今求められていること”に順応していくことこそが重要といえます。
5W1H分析
When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(何を)・Why(何故)・How(どのように)で情報を分け、誤解や漏れのない情報伝達を実現するフレームワークです。
PEST分析
マクロ環境分析に役立つフレームワークです。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の面から、自社の状況の把握・洞察に活用します。
MVP/Minimum Viable Product
MVP(Minimum Viable Product)は「必要最小限の機能を有した製品」という意味です。本格的に事業をはじめる前にMVPを制作することで、顧客のニーズを検証し、余分なコストの削減にもつながります。
例えば、服のレンタルサービスを行う際に、初めはスーツやシャツのみに商品を絞って行うようなやり方です。「プロトタイプ(試作品)」の一種といえます。
なお、MVP制作のために使われるフレームワークに「MVPキャンパス」があります。「MVPキャンパス」に沿って考えることで、仮説検証をしやすくなります。
- 仮説(Hypothesis/Assumption)
- 学び(What to lean)
- 実証(How to Validate the Hypothesis with MVP)
- データ/条件(Criteria of Validation)
- ビルド(What to Build)
- コスト(Cost of Developing MVP)
- 時間(Time of Validating Hypothesis)
- リスク(Estimate of Future Risk/Chance)
- 結果(Result)
- 得られた学び(Goal)
新規事業立案STEP2:事業の方向性やマーケットの決定
ビジョンが定まったら、事業展開の領域(マーケット)を考えていきます。
この際に行いたいのが「物理的定義」と「機能的定義」の決定です。たとえば、「画期的なチャットアプリ(物理的定義)で、社内コミュニケーションを改善する(機能的定義)」というような指標を検討します。これによって、事業の方向性やマーケットが決定できます。
以下で、事業展開を考える上で役立つフレームワークをご紹介します。
SWOT分析
内部環境の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」、外部環境の「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つから事業を分析し、具体的な戦略を立てるフレームワークです。
STP分析
ポジショニング戦略の定番フレームワークです。顧客を Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)でフィルタリングし、それを踏まえて自社のPositioning(ポジショニング)を決定します。
3C分析
環境分析でよく用いられるフレームワークです。「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」から、顧客のニーズや市場、自社や競合の強み・弱み、立ち位置を明確にします。
4P分析
自社の商材について、販売までの流れを最適化する際に用いるフレームワークです。「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」という項目を用います。
新規事業立案STEP3:ビジネスアイデアの検討
ここまで、ビジョンの明確化や、ポジショニングやターゲット、マーケットの調査・分析を行いました。次は、これらを踏まえて、具体的なビジネスアイデアやプランについて検討します。
具体的なビジネスアイデアを発想するために役立つフレームワークをご紹介します。
マインドマップ
マップの中央に掲げたテーマに関連する項目を書き足し、広げていくフレームワークです。思考を紙面上に書き出すことで要素を一覧でき、アイデアを出しやすくします。
形態分析法
カテゴリーごとに当てはまる言葉を入れていき、ランダムに組み合わせて新たな着想を得るためのフレームワークです。意外な組み合わせから、これまでにないユニークなアイデアにつながる可能性があります。
オズボーンのチェックリスト
もとのアイデアを「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「置換」「逆転」「統合」といった方法で変化させ、新たなアイデアを生み出すフレームワークです。
新規事業立案STEP4:具体的な行動計画の策定
ここからは、実際に何をしていくのかという、事業における行動計画を立てます。ビジネスプランを基に「いつ・誰が・何をする」を決めていきます。現実的に達成し得る行動計画の策定が、事業成功のカギになります。
以下に、行動計画策定の際に活用したいフレームワークをご紹介します。
ビジネスロードマップ
目標を達成するのに求められる事項や、壁となる困難を時系列順に書き出した図のことを「ロードマップ」と言います。ビジネス構造を具体的に捉えられるようになり、かつ必要な行動が明確になるのがメリットです。
記載するべき項目には以下のようなものがあります。
- 達成目標
- マイルストーン(目標達成のための中間目標)
- 目標達成時期
- 現状
- 想定されている問題・課題
- 問題・課題解決の方法
ビジネスロードマップが完成したら、チームメンバーなどに共有します。
PDCAサイクル
「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」を繰り返すことで、戦略やアイデアをブラッシュアップするフレームワークです。さまざまなシーンに応用できる、代表的なビジネスフレームワークのひとつです。
CVCA
CVCA(Customer Value Chain Analysis:顧客価値連鎖分析)は、ステークスホルダーとの間に生まれるバリューの流れを可視化することで、ビジネスモデルをチェックするフレームワークです。
バリューチェーン
自社の競争優位性を明確にする際に使われるフレームワークです。自社が行う「主活動」と「支援活動」の過程で生まれる付加価値を可視化することで、競合他社との差別化を図ります。
新規事業の成功率を高めるためには、上記のステップを踏むなかで適切なビジネスフレームワークを用いることがポイントです。今回ご紹介したものを活用し、新たなビジネスの開拓にぜひお役立てください。
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