今回のインタビュイーは、Udemyで「認知文法に基づく英語学習 英文法HACKER」を開講している時吉 秀弥さん。2019年11月に出版された『英文法の鬼100則』(明日香出版社)は7万5,000部を突破し、英文法書として異例のヒットを記録しました。Udemyにおいても人気英語講師として活躍する時吉さんに、日本人が英語を話せるようになるための英語の学習方法や、担当する講座のこだわりについて伺いました。
なお、今回の講座開講を記念して、時吉さんによる無料ウェビナー「ネイティブの気持ちをハックしろ! “暗記しない” のに “覚えられる” 英文法」が12月19日(土)に開催されます。効率よく英語力を磨きたい方は、ぜひご参加ください。
※今回の取材はオンラインで行い、使用している写真は後日提供いただいたものです。
時吉 秀弥さんプロフィール
神戸市外国語大学英米語学科を卒業後、米チューレン学で国際政治学を学ぶ。帰国後は落語家の弟子やお笑い芸人、ラジオパーソナリティなどを行う傍ら、20年以上にわたり予備校で英語指導を行う。
現在は、株式会社スタディーハッカーが運営するENGLISH COMPANYにて、トレーナー(受講生に英語を教える立場の人)に対し、研修を行っている。また、2019年11月に出版された『英文法の鬼100則』(明日香出版社)は7万5,000部を突破し、英文法書として異例のヒットを記録している。2020年11月13日に出版された新刊「英熟語の鬼100則」は、発売2週間ですでに1万4,000部を突破。
Udemyとは?
Udemyは、世界最大級のオンライン動画学習プラットフォーム。全世界で3500万人が学び、コース数は13万におよびます。企業導入だけではなく、個人の学習者にも使用されています。(2020年9月現在)
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英語は日本語の鏡!着想は舞台経験から
――まずは、今回リリースした講座のテーマである英語学習について、お話しいただけますか。
わたしにとって、英語というか、外国語の学習は、どういうふうに日本語でしゃべっているかを見る鏡として役立つものだと考えています。
わたしたちが母語である日本語を話す際には、なぜそういう話し方になるのか考えもせずに話しますよね。英語の言い回しと日本語の言い回しの違いを実感することで、自分自身の話す日本語を振り返るきっかけになります。普段無意識に話している日本語の会話の流れや考え方を意識化することで、より日本語への理解も深まります。
言語教育においては、英語が先か、日本語が先かという論争がありますが、私は外国語と母語の学習は両輪になるものだと考えます。外国語を学ぶことは、「言語を相対的に見る」訓練になると考えています。
――多様なご経験の中で、「英語は日本語の鏡」「言葉の流れや考え方を学ぶべき」と気付いたきっかけがあったのでしょうか?
はい。1つのきっかけは、自分が舞台に立つ仕事をしていた時のことです。
アドリブが多い中で、ちょっとした「てにをは」の使い方や言葉の順番を変えるだけで、目の前の観客の反応が全然違うことに驚かされました。単に意味が伝わればいいというものではなく、細かいところにメッセージがあるなと感じました。これは、英語も同じことです。
また、もう1つのきっかけは、自分が英語を教える立場になってからのことです。自分がただの学習者であるときは、どのような知識でも自分の中で納得できていればそれで良い、覚えてしまったならそれで良いと考えていましたが、教える立場では、相手に納得してもらわなければいけません。
生徒さんにどう伝えていくかを考えた時に、教科書や辞書に書いてあることの奥に何があるのかを教えよう、と思いました。そのため自分自身も、教科書や辞書を読むたび、その奥にあるものを日々考えるようになりましたね。
その頃から、「英語を話すには単に文法のルールをたくさん知っているよりも、その文法が表す心理的なメッセージを知る方がより重要なのではないか?」と考えはじめ、その後認知言語学に出会い、今に至ります。文法が人の心を映す鏡であるからこそ、同じ内容を伝えるのにも、言い方の違いで聞き手の反応が変わるわけです。
我々が気づきにくい、英語学習の難しさの「真の理由」
――日本人の中には、英語に対して壁を感じている方も多く、時吉さんのように前向きにとらえている方は少ないと感じます。日本人の英語への苦手意識には、どんな課題があるのでしょうか。
少しレベルの高い話になりますが、実際に英語ネイティブと話した経験にある人ほど感じることのひとつに、「なぜこんな質問をされたのか、その意図がわからない。だからどう答えて良いかわからない」というものがあります。
英語には英語の話の流れがありますし、日本語には日本語の話の流れがあります。言語には「普通は、こういう話の流れになるよね」という、「談話の文法」と呼ばれるものが存在し、言語によってそれは異なります。
各言語が持っている談話の型を無視して会話に臨むと、なぜこんな話の流れになるのかわからない。何を意図して私にこんな話を振ってきているのかがわからない、というふうにパニックに陥ります。
英語にあって日本語にない談話文法の典型は、「理由を問う」というものです。日本語での会話の場合、多くの人は、次のAさんのように、同調することで親しみを示すという流れが一般的です。
Aさん:食べ物では何が好き?
Bさん:焼肉が好きです。
Aさん:いいですね。私も焼き肉が好きです。
これが英語圏での会話の場合は、次のようなケースが多くなります。
Aさん:食べ物では何が好き?
Bさん:焼肉が好きです。
Aさん:いいですね。なぜ焼肉が好きなの?
英語話者がやたら「なぜ」と尋ねる理由ですが、それは彼らが詮索好きだからだ、ということではありません。「なぜ」という質問を通して相手に興味があることを示そうとしているのです。
どちらも同じく「親密さを示そうとする会話の行動」ですが、こういった違いを知ったうえで、英語の流れや考え方を理解できれば、英語での話し方や受け答えの仕方をもっと効果的に計画できるようになると思います。
――「発言の方向性そのものを理解する」という考え方が必要になるということですね。しかし、英語学習者の中には、「英語の話の流れ」のレベルに達する以前に、英文そのものをぱっと組み立てられない、どうしたら良いのか、という人も多くいると思います。
英語を話せないという背景には、「読む・聞く」を中心に勉強してきたことがあります。英文を読む際に、文章中の知っている単語をつないで意味を推測していくという方がよくいらっしゃいます。それはまるで、中国語の文法を知らずに、漢字の知識だけを頼りにして、中国語の文章を読もうとしているのに似ています。それでは当然、中国語の文を組み立てることはできません。
英文を作ることで大事なのは、単語だけではなく「単語をどういう風に組み合わせているのか」を覚えることです。具体的には、例文を声に出して覚えるということです。
もちろんせっかく覚えても、すぐに忘れてしまうこともあるでしょう。例文を一言一句覚える必要はなく、忘れてもらって結構です。けれども例文での学習を積み重ねていくと、新しい英語の例文を読む際にも「これは前にも見たことがある。普通この単語の後ろにはこういう単語がくっつくよね。」というパターンが増えていきます。
それはつまり、文法も一緒に覚えている、ということを意味します。
なおかつ、声に出して覚えているので、会話の際にも自然に口をついて覚えたフレーズが出てきます。さらには、覚えたパターンの仕組みを文法学習を通して本格的に分析して理解していけば、さらに例文の記憶は容易になります。
こうやって知っている例文の型を増やしていけば、自分で作れる英文のバリエーションは確実に増えます。わたし自身、定期的に新しい言語を学ぶようにしているのですが、例文を中心に覚えればどの言語でも、数ヶ月で現地での買い物などは楽にできるようになっています。
新着講座:英文法のルールを「操る」側になるために
――それでは、今回Udemyで公開した講座「認知文法に基づく英語学習 英文法HACKER」についてお伺いします。この講座は、どんな方に向けた内容になっていますか?
この講座は、ある程度、英語を学習してきた方を想定して作りました。英文法のルールをある程度知っている方向けに、そのルールの奥にある心理・感情やモノの見方を説明しています。
それを通して今まで無味乾燥なルールの集まりであった英文法を、あなたの気持ちを反映させるための道具にしていきます。
この講座で、英語圏の人々が持つ言葉の心理の背景を理解できれば、ルールが自分の「気持ち」とシンクロしやすくなるので、より直感的に英語を話す・使用できるようになると思いますし、それがこの講座のゴールです。
文法ルールに支配されて、間違いを恐れるだけの人が多いと思うのですが、この講座は自分の思いを表すために、どのように英文法を使い分ければ良いのかがわかる講座です。「自分の気持ちはこうだから、こういう言い方を選ぶんだ」という気持ちになることができます。
――講座を受講するにあたり、おすすめの学び方はありますか?
拙著『英文法の鬼100則』(明日香出版社)と併用すれば、効果が高いと思います。Udemyの講座内では紹介しきれなかった細かい英文法の知識の補足として、役立つと思います。
この講座の学習をベースにして、英単語や熟語のコースに移っていくのはいかがでしょうか。わたしは「英文法は器みたいなもので、その中に単語や熟語を入れていく」と考えています。この講座を通じて英文法を学び、きちんと器を作ることで、英熟語や単語などの中身が漏れにくく、たまりやすくなると思います。
――英会話の学習者に向けて、学び方のコツがあれば教えてください。
さきほどの話を翻すようですが、英会話の学習にあたっては、前段階として「読む・聞く」が大切です。読んでわからないことは聞いてもわかりませんから、多読を学習の足掛かりにすることは1つの手です。
最初は例文を読むことで一文一文の構造の理解から始め、つぎに文章を読むことで、文脈としての英語に慣れていきましょう。観光旅行用の英語なら、例文学習だけで良いのですが、ビジネス英語などになってくると、文脈を操ることが必要になってきます。
また、音読も効果的です。リスニングの訓練で「音に注意する」よう求められますが、音に注意を払う最良の方法は自分で発音しながら、どうやったらその音が出るのかを能動的に意識することです。自分の発音が下手でもかまわないのです。
また、音読をすることで、英語を単語ではなく、句や節などの意味の塊でまとめて意識するようになるため、単語レベルで理解するのに比べ、情報処理の効率が飛躍的に上がります。
また、ビジネスパーソンであれば、TOEICの点数などの目的は常に持ち、モチベーションを保つのも重要です。覚えたフレーズを使う機会を日常に作って振り返ったり、オンライン英会話のように実践的なトレーニングを行ったりすることも大切だと思います。
ただし、オンライン英会話は練習試合のようなもので、普段の練習なしにただ英会話をやっても、実力は伸びないものと思ってください。
ネイティブの気持ちをハックする!時吉さんの英文法講座はこちら
認知文法に基づく英語学習 英文法HACKER
ネイティブの気持ちをハックしろ!
英単語の暗記でつまずいてしまった人も、英語を直感的に話したり書いたりできるようになりたい人も、必見の「認知文法」。もっと「ネイティブの気持ち」を読み解きながら英文法を理解することで、丸暗記に頼らずに英語を使えるようになります。
英語ネイティブの気持ちを考えることで、きっと新たな英語の学び方のヒントになるはずです。
現代人に必要なのは「中学生レベル」の英語
――最後に、グローバル化が進む中、今後のコミュニケーションのあり方はどうなっていくと思われますか。
英語を使って仕事をする機会が増えていくと、相手が必ずしも英語ネイティブではないということを念頭に置かなければなりません。おそらく、英語を第二言語として使う人と話すより、英語のネイティブスピーカーと話した方が楽だと感じるでしょう。
というのも、ノンネイティブの話し手と対峙した際には、相手の英語のレベルを測りながら、こちらの話し方を調整していく必要があるからです。その時にお互いの「共通語」として求められるのは「中学レベル」の英語力です。中学レベルというと「子どもっぽい表現なのではないか?」と懸念される方もいらっしゃいますが、makeやhave、takeなどの基本動詞を使ったやり取りは、表現に汎用性があるため、非常に重要です。
ただ、こうした基本動詞はその単純な意味ゆえに、ひとつの言葉に多くの意味を持つ、という問題を抱えます。これが基本動詞の扱いにくさの要因にもなります。多義動詞の1つである「put」を使った「put up」という表現を例に挙げてみましょう。
「put up」は「上に置く」という意味を持ちますが、「上に掲げる」という意味に派生し、「put up a sign」は「看板・標識を掲げる」と訳されます。さらにそのイメージを派生させるとput upがshowに近い意味を持つことも簡単に理解できます。例えば、「put up a fight」は、単に「戦う」「抵抗する」と訳されますが、その奥には「戦いの意思を示す」という意識が隠れています。
「put」のような基本動詞はシンプルであるゆえに、多様な使い方があります。ノンネイティブとの会話ではこのような表現を多く知っておくことも重要な武器となります。もちろん、ネイティブとの会話もより込み入った話になるほど、型式張った言い方だけでは対応しにくくなり、基本動詞が多く使われ出します。
このような基本動詞の仕組みは私の新刊である「英熟語の鬼100則」に詳しく書かれていますが、このような知識は丸暗記では対応しきれないものですので、この講座のような認知文法の観点から学習するのが効果的だと思います。
【無料ウェビナー】ネイティブの気持ちをハックしろ! “暗記しない” のに “覚えられる” 英文法【参加者特典つき!】
オンライン学習プラットフォーム「Udemy」の講座『認知文法に基づく英語学習 英文法HACKER』のリリースを記念して、講師の時吉秀弥さんが登壇する無料ウェビナーを開催。本ウェビナーでは「認知文法」をキーワードに、丸暗記に頼らず英文法を覚えるためのヒントを時吉さんより教えていただきます。
【ウェビナー内容】
- 体で覚える5文型:文型を「形」ではなく「意味」で理解しよう
- willは心の働きだ:未来「を」表すのではなく、未来「も」表すwillの世界
- 質疑応答
【こんな方におすすめ】
- TOEIC600~700点前後の中級者の方
- 英文法をひと通り学習したがピンと来ていない方
- 丸暗記に頼った学習をしていて伸び悩んでいる方
実施概要
- 日時:12月19日(土) 11:00~12:00
- 参加費:無料
- 視聴方法:Zoom
(※お申し込みいただいた方へ参加用URLをご案内します。パソコンやスマートフォンなど視聴に適した環境をご準備ください) - 定員:100名(先着順)
- 申し込み方法:
こちらの専用フォームにアクセスし、必要事項を入力のうえ、「送信」ボタンを押してください。
(お申込み者情報は、株式会社スタディハッカーが取得、管理いたします。予め、ご了承ください。)
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