フォトグラメトリとは?写真から3Dモデルを作成する方法を解説

フォトグラメトリに興味があるものの、

・必要なツールや機材が分からない…。
・基本的な使い方が知りたい…。

という方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、

・フォトグラメトリで3Dモデルを作成する手順
・フォトグラメトリとほかの3Dモデル作成手段との違い

についてご紹介します。

3Dモデルの作成が初めての方でも、この記事を読めば、フォトグラメトリの特徴や基本的な使い方について理解できます。

フォトグラメトリとは?

フォトグラメトリとは、写真データから3DCGのモデルを生成する技術です。様々な方向から撮影した対象物の写真をデジタルデータとして取り込み、専用のソフトウェアで解析することで3Dモデルを作成できます。

以下の画像は、うさぎの置物の画像(右)とそれを3Dモデル化したもの(左)の比較画像です。様々な角度から複数枚撮影し、ソフトウェアに取り込み・解析することで、置物とそっくりの精巧な3Dモデルが作成可能です。

実際の制作手順は後述の「フォトグラメトリの作成手順【実際に3Dモデルを作成】」で解説しています。

ポリゴン表示との比較

フォトグラメトリは日本語で「写真測量法」と呼ばれます。技術自体は19世紀半ばから存在し、当時は手作業で写真の解析や計算を行い、地形の測量などに活用されていました。

近年ではコンピューターやデジタルグラフィック技術の進歩により、3Dモデルの制作手法としてフォトグラメトリが注目されています。

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フォトグラメトリが人気の理由

3Dモデルの制作手法としてフォトグラメトリが人気な主な理由は次の通りです。

ここからは、それぞれの理由について説明します。

品質が向上した

パソコンなどハードウェアのスペックが向上したことでフォトグラメトリの精度が高まり、品質が向上したため、人気が高まっています。

パソコンのスペックが低かった頃のフォトグラメトリでは、3Dモデルによるリアルな凹凸の表現などが難しい状態でした。

しかし、フォトグラメトリを行うためのハードウェアスペックが向上した昨今は、フォトグラメトリで作れる3Dモデルのクオリティが上がり、3DCGゲームの制作などにも使用されています。

費用対効果が高い

低コストで高品質なモデルを作成できるため、費用対効果が高いこともフォトグラメトリが人気の理由です。

フォトグラメトリでは、一般家庭用のパソコンやスマートフォンのカメラなどを使って3Dモデルを制作できます。そのため、フォトグラメトリは個人での利用や小規模なプロジェクトにも適した手法です。

一般の人でも扱える手軽さ

フォトグラメトリは、3DCGの専門知識が無い人でも、写真を撮影するだけで3Dモデル作れるという点も、フォトグラメトリが人気を集める理由です。

フォトグラメトリ用のスマートフォンアプリもあるため、ハイスペックなパソコンや撮影機材が無くても手軽に始められます。

3Dモデルを作成する際も、1から構築する必要はありません。写真データを取り込むだけで、対象物の色や模様、質感などを簡単に表現可能です。

活用可能な分野の幅が広い

フォトグラメトリは、様々な対象物の3Dモデルを制作できます。建築物の外観や文化財の記録、ゲームや映画、アート作品の制作、教育など幅広い分野で活用が可能です。

写真データがあれば、対象物の大きさにかかわらず3Dモデルを作成できるため、ドローンで撮影するような大きな対象物にもフォトグラメトリを利用できます。

フォトグラメトリに向いていそうな建造物

 

ほかの3Dモデル作成手段との違い

3Dモデルを作成する方法には、フォトグラメトリ以外にもいくつかの手段があります。各手法の大きな違いは、3Dモデル作成時に基となるデータの有無です。

ここでは代表的な手法として、3Dスキャン・3D制作ソフトとフォトグラメトリの違いや特徴を解説します。

手法 違い 特徴
フォトグラメトリ 写真データを基に3Dモデルを作成 ・高性能な機材や専門知識なしで気軽に3Dモデルを作成できる
・寸法の正確さは3Dスキャンに劣る
3Dスキャン レーザーなどで対象物の立体構造を捉え、3Dモデルを作成 ・対象物の形状や寸法を細部まで読み取れる
・高価な機材(3Dスキャナー)が必要
3D制作ソフト 基になる素材無しで、1から作成 ・実在しないものの制作が可能
・労力がかかる

 

なお、3Dモデル作成に興味がある方は、「3Dモデルの作成方法は?概要から使えるソフトまで詳しく解説!」もぜひ一読してみてください。

フォトグラメトリ:気軽に制作できる

フォトグラメトリの特徴は、高性能な機材がなくても、対象物の写真を撮るだけで気軽に3Dモデルを作成できることです。初心者はもちろん、建築物やゲームなどの3Dモデル作成に向いています。

ただし、色や質感を表すテクスチャーは実物に近く表現できるものの、寸法の正確さについては3Dスキャンに劣ります。

3Dスキャン:高価だが高精度

3Dスキャンは、レーザーやセンサーを対象物に照射して立体構造を捉え、3Dモデルを制作する手法です。

3Dスキャンには高価な機材が必要ですが、対象物の形状を細部まで読み取れるため高精度な3Dモデルが作れます。3Dスキャンは、医療や産業などの分野でも活用される技術です。

3D制作ソフト:空想を自由度高く制作できる

3D制作ソフトでは、現実に対象物が無い場合でも3Dモデルを作成できるというのが、ほか2つの手段と大きく異なる点です。

想像上のキャラクターや場所など、実在しないものの制作が可能であり、制作したモデルを3Dプリンターで実物として出力することもできます。

3D制作ソフトを使用する場合、撮影やスキャンなどは必要ありません。ただし、ソフトウェアの操作によって3Dモデルを一から作り上げるため労力がかかります。

主な3D制作ソフトとして、「Blender(ブレンダー)」や「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」などが有名です。各ソフトについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

3DCGソフト「Blender」の使い方!インストール方法から初心者向けに解説

【Unreal Engineで何ができる?】ゲームや映像制作の可能性が広がる活用事例3選

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フォトグラメトリの作成手順【実際に3Dモデルを作成】

ここでは、フォトグラメトリの作成手順を以下の流れで解説します。

今回は、スマートフォンで撮影した写真データを「3DF Zephyr」というソフトウェアで解析し、うさぎの置物の3Dモデルを作成していきます。

3Dモデル化するうさぎの置物

必要なものをそろえる

フォトグラメモリは、以下の3つがあれば始められます。

  • カメラ(撮影機材)
  • パソコン
  • 専用ソフトウェア

できるだけ高品質な3Dモデルを作成したい場合は、一眼レフカメラと処理能力の高いパソコンを用意することが理想的です。手軽に始めたい場合は、スマートフォンのカメラとノートパソコンでも十分です。

フォトグラメトリの専用ソフトウェアとしてよく使われるものは、「RealityCapture(リアリティキャプチャー)」や「Metashape(メタシェイプ)」、「3DF Zephyr(スリーディーエフゼファー)」などです。

RealityCaptureは基本無料で利用でき、年間収益が100万ドルを超える企業が利用する場合のみ費用が発生します。操作画面が使いやすく、チュートリアルやサポートも充実しているため、初心者の方におすすめです。

Metashapeは有料のソフトウェアで、フォトグラメトリで3Dモデルを作成するための機能が豊富に備わっています。また、処理能力の高さもMetashapeの特徴です。

3DF Zephyrには無料版と有料版の両方があります。無料版でも十分な品質の3Dモデル制作が可能です。利用者が多くインターネット上に情報が多いため、不明点を解決しやすくなっています。

写真を複数枚撮影

準備が整ったら、撮影スタートです。3Dモデルを作成したい物体の写真を複数枚撮影しましょう。

フォトグラメトリでは、対象物の向きを少しずつ変えながら、すべての面が写るように撮影する必要があります。

全ての面が移るように撮影した画像データ

枚数が多いほど高精細な3Dモデルを作成できますが、パソコンでの合成処理にかかる時間も長くなります。10枚~100枚ほどを目安に、求めるクオリティやパソコンのスペックなどに応じて適切な枚数を撮影していきます。

3Dモデルの合成

撮影した写真を専用ソフトウェアに取り込み、3Dモデルの合成を行います。

以下のキャプチャ画像は、撮影した写真を3DF Zephyrで読み込んだ画面です。画面下部には読み込まれた画像、中央部には「点群データ」と呼ばれる3Dモデルの各頂点を表すデータが表示されています。

3Dモデルを作成するには、上部の「3Dモデル生成」ボタンをクリックします。

3DF Zephyrで写真データを取り込んだ画面

「3Dモデル生成」ボタンをクリックすると、以下画面が表示されるので、案内に沿って進んでいきます。

3DF Zephyrで3Dモデル生成中

合成処理が自動的に完了し、3Dモデルが生成されました。

3DF Zephyrで自動的に生成した3Dモデル

3DF Zephyr以外の専用ソフトウェアでも、写真を取り込んで3Dモデルを生成する基本的な流れは同様です。

レタッチ

最後に、合成された3Dモデルの質感を調整するレタッチを行います。

写真を合成しただけの3Dモデルでは、ソフトウェアが自動で対象物を認識し3Dモデル化するため、不要なものが残ったり必要なものが消されてしまったりすることがあります。

そのため、違和感がある部分のテクスチャーや色を調整し、クオリティを高めるレタッチ作業が必要です。

以下の画像は、対象物以外に映り込んでしまった床などの不要物を削除している様子です。

3DF Zephyrでのレタッチ

なお、ソフトウェアによっては、細かなレタッチの機能が含まれていなかったり、少なかったりする場合があります。

本格的な調整を行いたい場合は3D制作ソフトとの併用がおすすめです。フォトグラメトリで作成した3Dモデルを一旦保存し、3D制作ソフトで読み込めば、細かな調整が可能です。

レタッチが完了すると、3Dモデルの完成です。目のハイライトや色のムラ感、フロッキー加工がリアルに再現されています。

3DF Zephyrでのレタッチが完了

以下の画像は、写真と完成した3Dモデルの比較です。上記の画像だと、背景を透過してうさぎだけを残した画像に見えますが、表示方法を変えると、正常に3Dモデリングできていることが分かりますよね。

  • 左:ポリゴン表示、右:対象物の写真
ポリゴン表示との比較
  • 左:ワイヤーフレーム表示、右:対象物の写真
ワイヤーフレーム表示との比較

 

フォトグラメトリを成功させるポイント

フォトグラメトリで3Dモデルを作成する際は、次のようなポイントをおさえておくと成功しやすくなります。

質感に向き不向きがある

フォトグラメトリは、表面がザラザラしている対象物の3Dモデル作成に適しています。また、対象物をザラザラした質感の土台に置くと、3Dモデルの仕上がりが綺麗になります。

ツルツルした質感のプラスチック素材や透明な素材などは、写真データ内に光の反射や映り込みなどが入りやすいため、フォトグラメトリに向いていません。また、生き物など同じ場所に静止していないものも、フォトグラメトリによる3Dモデル作成には不向きです。

写真撮影時は手ぶれや色飛びに注意

手ぶれや色飛びがある写真では、3Dモデルを正しく生成できない場合があります。手ぶれ対策としては、三脚などでカメラを固定して撮影したり、多めに撮影した上で良い写真を選んで使ったりすることが効果的です。

また、明るすぎる場所では写真の色が飛びやすいため、外で撮影するときは曇りの日を選ぶとフォトグラメトリが成功しやすくなります。

 

気軽に3Dモデルを導入してみよう!

写真データから3Dモデルを作成できるフォトグラメトリは、初心者の方でも手軽に始めやすい手法です。パソコンやスマートフォンのカメラがあれば、対象物の色や質感を反映した3Dモデルを簡単に作れます。

フォトグラメトリでより高度な3Dモデルを作る方法を学びたい方には、以下の講座がおすすめです。この講座では、フォトグラメトリ用ソフトの「RealityCapture」と、3Dソフトの「Unreal Engine」を使った3Dモデルの制作方法が学べます。写真をもとにハイレベルな3Dモデルを作成したい方はぜひ参考にしてください。

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レビューの一部をご紹介

評価:★★★★
コメント:日本語で一通りの工程をわかりやすく丁寧に網羅されているので初心者には大変わかりやすいかと思います。

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