SAP ERPとは?主な機能や導入のメリット・デメリットを解説!

SAP ERPとは、国内外の企業で活用されているERPシステムです。この記事では、SAP ERPの機能や導入のメリット・デメリット、サポート終了に伴う2027年問題への対策方法について解説します。SAP ERPの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

SAP ERPとは

SAP ERPとは、ドイツのSAP社によって開発・提供されている統合基幹業務システムです。SAP社のERP製品は世界におけるシェア上位を継続的に獲得していて、日本でも多くの企業で利用されています。(※)

(※)SAP社のシェアに関するデータはこちらをご確認ください。

SAP ERPが高いシェアを誇る理由

ソフトウェアのカスタマイズ性の高さが、SAP ERPが多くの企業に導入されている理由の1つです。SAP ERPは、機能をカスタマイズすることにより、様々な業界・業種の企業で活用できます。

SAP社が長年に渡ってERP業界を牽引してきたことへの信頼も、高いシェアに繋がっています。また、優良企業から寄せられた要望をもとに、ベストプラクティスを構築していることもSAP ERPの特徴です。

優良企業から寄せられた要望をもとに、ベストプラクティスを構築しているSAP ERP

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ERPとは?何ができる?

そもそもERPとは、企業における基幹業務を統合的に管理し、経営判断を迅速化するためのシステムを指します。ERPで統合管理できる基幹業務は人事や財務会計、物流、生産などです。

ERPを企業に導入すると、部門ごとに管理していたデータを一元管理できます。人・もの・金の動きを1つのシステムで管理し、全社横断的に活用することが可能です。

SAP ERPの主な機能

SAP ERPの機能は、業務領域に合わせて複数のモジュールに分けられています。SAP ERPに含まれる主な機能は次の通りです。

モジュール できること
財務会計 決算書などの財務帳票作成、固定資産や債券の管理など
管理会計 業績やコストの管理、分析、レポート作成など
販売管理 受注や請求状況の管理、出荷・納品などの手続き、納品書などの作成
在庫購買管理 入出庫管理や、資材・サービスの購買管理、請求書照合など
生産管理 生産計画の作成や原価管理、生産工程の管理など
人事管理 勤怠管理や給与計算、組織内の配置、福利厚生の使用状況管理など
品質管理 品質計画、品質検査、使用決定など
倉庫管理 多品目の在庫管理や人員計画、ロケーション管理など
生産計画/詳細計画 生産日程や作業順序の計画立案・管理
プラント保全 プラントの保守運用に必要な指図や進捗状況の管理
プロジェクト管理 プロジェクトの計画から実行、完了までの進捗管理

これらのモジュールの中から、自社に必要な機能を選んで業務に活用できます。

SAP ERP導入のメリット

SAP ERPを企業に導入すると、業務の効率化やデータの可視化などが可能です。SAP ERPの導入で得られるメリットには次のようなものがあります。

業務を統合できる

SAP ERPを導入すると、調達や販売、生産などの基幹業務を統合し、一元管理することが可能です。部門ごとに管理システムが分かれている場合、情報共有に手間がかかります。企業が保有する情報を同じシステムで統合し、部門間のデータ連携を効率化できることがSAP ERPのメリットです。また、業務を効率化すると残業時間を短縮でき、余計な人件費の削減にもつながります。

データの分析・可視化が容易になる

SAP ERPは、業務に関するあらゆる情報を保存できるシステムです。システム上に保存されている様々なデータは、SAP ERPの機能によって簡単に可視化・分析できます。例えば、販売データを分析して仕入れを適切に行ったり、部門ごとの売上を可視化して経営戦略を立てたりすることが可能です。データ分析やグラフ作成に関する専門知識が無くても、必要な情報を容易に読み取れます。

機能が豊富で多様なニーズに対応できる

豊富な機能が備わっていることも、SAP ERPのメリットです。標準機能が充実しているため、多様な業種・職種の業務効率化に活用できます。さらに、SAP ERPは企業の業務内容や組織構成に合わせた機能のカスタマイズも可能です。ベンダー企業やコンサル企業のサポートを受けることで、様々なニーズに応じた機能を実装できます。

SAP ERP導入にはデメリットも

SAP ERPには、デメリットも存在するため、導入前に把握しておく必要があります。SAP ERPの導入時に注意すべきデメリットは次の通りです。

費用が高額

SAP ERPの導入時には、システム構築費用やソフトウェアのライセンス費用などがかかります。コストは企業の規模やアカウント数などによって異なるものの、初期費用で1,000万円以上かかる場合もあります。また、初期費用以外に、サーバー管理料金など固定費も必要です。費用を上回る効果が得られるか考慮した上で、導入を検討する必要があります。

設定が複雑になる

SAP ERPは、機能が豊富である反面、設定が複雑な点がデメリットです。特に、SAP ERPで高度な機能を使用したい場合には、専門知識が必要です。SAP ERPのシステムは、ABAPと呼ばれる独自のプログラミング言語で記述されています。開発や運用を行うにあたって、ABAPを扱える専門性の高い人材が求められます。

SAP ERPサポート終了に伴う2027年問題とは?

SAP社のERP製品である「SAP ERP 6.0」は、2027年に公式のサポートが終了となる予定です。サポート終了後にSAP ERP 6.0を使用することで想定される様々なリスクは、2027年問題と呼ばれています。

SAP ERPサポート終了に伴う2027年問題のイメージ

すでに「SAP ERP 6.0」を導入している企業は、サポート終了への対応が必要です。 「SAP ERP 6.0」 は、2027年以降もセキュリティプログラムは更新されるため、標準サポートなしで継続することもできますが、システム障害により業務に支障が出る可能性があり、リスクがあります。その他の選択肢として、他社のERP製品やクラウドサービスへの切り替え、SAP社が提供する新バージョンのERP製品「SAP S/4HANA」への切り替えが挙げられます。

「SAP S/4HANA」の詳細に関しましては「SAP HANAとは?SAP S/4HANAとの違いやメリット、導入事例を紹介」をご確認ください。

「SAP S/4HANA」への移行方法

「SAP S/4HANA」は、オンプレミスまたはクラウドのいずれかで利用できる次世代型のERPシステムです。コンバージョン方式と呼ばれる移行方法では、既存のSAP ERPのシステム設定を保ったまま、データを移行できます。現場への負担が少なく、移行時のコストも抑えられることがコンバージョン方式のメリットです。ただし、「SAP S/4HANA」から搭載された新機能への刷新ができません。

リビルド方式は、新規に「SAP S/4HANA」のシステムを構築する移行方法です。リビルド方式では最新の機能を活用できる一方、移行時のコストや時間がかかります。既存のシステムの状況や重視する点を整理した上で、企業に合った移行方法を選びましょう。

SAP ERPは、国内外の企業に幅広く導入されているERP製品です。SAP ERPを導入すると、基幹業務を1つのシステムで統合管理し、業務を効率化できます。ただし、導入コストの高さや設定の複雑さなどのデメリットに注意が必要です。社内の業務システムを刷新し生産性を高めたい方は、SAP ERPの最新版である「SAP S/4HANA」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。