GX(グリーントランスフォーメーション)という言葉を見聞きしたものの、
・どのような取り組みか分からない…。
・取り組むべき理由が知りたい…。
という方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、
・GXの概要や注目されている理由
・企業や個人がGXに取り組むメリット
について、具体的な事例を交えながらご紹介します。
GXの知識を初めて学ぶ方でも、この記事を読めば、GXの取り組みや背景について理解できます。
INDEX
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GXは「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略語で、読み方は「ジーエックス」です。
現在、私たち生活を支えているのは、石油や石炭などによる化石燃料です。ほかのエネルギーと比べて少ないコストで大量のエネルギーを取り出せる、用途が幅広い、などのメリットがあります。一方で、環境への影響や燃料の枯渇が問題視されています。
この化石燃料から、風力や太陽光などのクリーンエネルギーに転換していこうとする取り組みがGXです。化石燃料を燃やした際に発生する二酸化炭素などの温室効果ガスを減らし、地球温暖化の課題を解決するためには、GX推進が欠かせません。
また、エネルギーの転換だけでなく、世界的な経済や社会のシステムを変え、より良い環境を実現するための取り組みもGXに含まれます。
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Udemyで講座を探す >GXとカーボンニュートラル・脱炭素との違い・関係性
GXと関係性の深い言葉に、「カーボンニュートラル」と「脱炭素」があります。3つの関係性は以下の図のように表せます。
脱炭素化は、二酸化炭素の総排出量をゼロにすることを目標にした取り組みです。脱炭素化の推進や、取り組むことがGXにつながります。
また、GXにはエネルギーの転換だけでなく、社会・経済の構造改革も含まれます。これらの結果として実現されるのが、温室効果ガスの排出量と吸収量が均衡したカーボンニュートラルな社会です。
ここからは、それぞれの言葉の詳しい意味や、GXとの関係性を説明します。
カーボンニュートラルとの関係
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量が差し引きゼロの状態を指します。2020年10月時点で、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。
カーボンニュートラルは、CO2(二酸化炭素)に限らず、N2O(一酸化二窒素)やフロンガスなどの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにした状態です。温室効果ガスの総排出量から、植林や森林の管理といった取り組みによる総吸収量を差し引いて実質ゼロにすることを目指しています。
GXは、カーボンニュートラルを実現するために欠かせない取り組みです。
脱炭素との関係
脱炭素とは、CO2(二酸化炭素)の排出量を実質的にゼロにする取り組みです。排出量を削減するとともに、後から回収する取り組み含めて、CO2の排出量が実質的にゼロにすることを指し、冊炭素が実現した社会を「脱炭素社会」といいます。
カーボンニュートラルと似ていますが、カーボンニュートラルは温室効果ガス全般の排出量の削減を指していることに対して、脱炭素は二酸化炭素の排出量のみが対象です。
GXが注目されている理由
近年、GXの取り組みが注目を集めている主な理由として、次の2つが挙げられます。
地球温暖化対策になる
1つ目の理由は、政府や企業によるGXの推進が地球温暖化対策につながるからです。
地球温暖化は、世界全体の大きな社会問題です。過去100年間で世界平均気温が0.74℃上昇、世界平均海面水位が17cm上昇しています。
地球温暖化が進み海面が上昇すると、陸地が減り小さな島国は海の底に沈んでしまいます。また、海の面積が広がると気候にも影響します。これまでと雲のできかたや風の吹き方が変わることで、豪雨や台風などの災害も増えたり、砂漠が深刻化したりする可能性があるといわれています。
GXの取り組みとして温室効果ガス削減を推進することは、地球温暖化対策にもつながります。
GXの推進が重点投資分野の一つになっている
2つ目の理由は、GXの推進が日本政府による重点投資分野の一つとなっているためです。2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」において、GXは重点投資分野の一つとして定められました。
具体的には、「10年間で官民による150兆円超の投資を行い、GXを実現」することが、岸田文雄元首相によって表明されています。
主な取り組みとして、政府による20兆円規模の支援で民間投資を呼び込むことや、GX実現を目的とした国債である「GX経済移行債」を10年間で20兆円発行することなどが挙げられます。
企業がGXに取り組むメリット
企業がGX実現に向けた取り組みを行うと、地球環境の保護以外にも次のようなメリットが期待できます。
それぞれ詳しく解説します。
ブランドイメージの向上につながる
企業がGXに取り組むと、環境問題への対策を積極的に行っているというブランドイメージを構築できます。環境配慮を重視している消費者や取引先にアピールできることが、GX推進のメリットです。
また、ブランドイメージの向上により求職者からの印象も良くなり、採用活動を有利に進められる可能性があります。
長期的なコスト削減が見込める
省エネルギー化の取り組みにより、長期的なコスト削減が見込めることも、企業がGX推進を行うメリットです。例えば、太陽光パネルで発電した電力を自社で使うなどの取り組みが、コスト削減につながります。
政府からの補助金が期待できる
政府は、GX推進を重点投資分野としているため、企業に対する様々な補助金を用意しています。カーボンニュートラルに関連する主な補助金は、「事業再構築補助金(グリーン成長枠)」や「ものづくり補助金(グリーン枠)」などです。
これらの補助金を受け取れることが、GXに取り組むメリットです。また、今後も新たな補助金による支援が期待できます。
今後の経済社会の変化に適応できる
今後想定される経済社会の変化に適応しやすくなることも、企業がGX推進に取り組むメリットです。
近年はパリ協定が採択されるなど、地球温暖化対策が世界的に推進されています。その中で、GXへの取り組みを進めていけば、企業に求められる責任を果たしながらビジネスを展開することが可能です。
個人でもGXに取り組むメリットはある
個人としてGXに関する知識を学んでおくと、自社がGX推進のプロジェクトを発足させた時に活躍できるというメリットがあります。
前述のとおり、企業がGXに取り組むメリットは大きいため、今後GX推進に取り込もうと考える企業は増えてくると考えられます。しかし、中小企業だと、GXリテラシーのある人材は少なく、何から始めればよいか分からないと、二の足を踏んでしまうことが考えられます。
個人でGXに取り組み、GXリテラシーを学んでいると、そのようなケースで活躍できるでしょう。
また、GXに関する資格である「GX検定」を取得すると、転職やキャリアアップの際にアピールできることも、個人としてGXの知識を学ぶメリットです。GX検定の合格者は「脱炭素アドバイザーベーシック」の肩書を名刺に記載できるため、話題作りや信頼獲得にも役立ちます。
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講座を見てみるGXに対する政府の取り組み
GX推進の取り組みは、世界各国の政府が進めています。日本政府のGXに対する取り組みの具体例は次の通りです。
それぞれどのような取り組みを行っているのか、詳しく紹介します。
内閣官房:GX実行会議の開催
「GX実行会議」とは、GXの実現に向けた施策を検討するために2022年7月から開催されている会議です。例えば、2024年10月31日の第13回の会議では、GX推進を加速するための取り組みや具体案が話し合われました。
GX実行会議の出席者は、内閣総理大臣やGX実行推進担当大臣兼経済産業大臣、内閣官房長官などの政府関係者のほか、千葉銀行の取締役専務執行役員や三菱商事株式会社の常務執行役員、中部電力株式会社の代表取締役会長などです。
内閣官房のWebサイトでは、各回の議事録に加え、参加者の提出資料が閲覧できます。
経済産業省:GXリーグを設立
「GXリーグ」とは、GXに積極的に取り組む企業が官庁や学術機関、金融機関などと連携してGXを推進するための枠組みです。GXリーグは2022年に経済産業省によって設立されました。GXに関する市場の創出やルールの整備、温室効果ガスの排出量取引などがGXリーグの主な目的です。
2023年1月時点でGXリーグに参画する企業は769社です。これらの企業が排出するCO2の合計は日本全体の4割以上にあたり、カーボンニュートラルの実現への影響度が大きくなっています。
環境省:GXを支える地域・くらしの脱炭素
環境省では、地域やライフスタイルの転換、資源循環といった分野の脱炭素化に取り組んでいます。2025年度までに最低100か所の「脱炭素先行地域」を選び、GXの取り組みを推進する予定です。
また、環境省と経産省、国交省で連携して高性能な断熱窓への改修を推進する「住宅省エネ2023キャンペーン」なども行っています。建材一体型太陽光発電システムの開発や、建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化なども環境省の取り組みです。
GXに対する企業の取り組み
国内外の企業でも、GX推進の取り組みが行われています。ここでは、以下企業のGXへの取り組みをご紹介します。
パナソニック
パナソニックグループでは、2030年度にCO2排出量半減を目標とした「Panasonic GREEN IMPACT」を、2022年1月に発表しました。
パナソニックのCO2排出量は年間約1億トンで、パナソニックグループ全体の約9割にあたります。GX推進により、2025年度にはCO2排出量を実質ゼロにすることが同社の目標です。
また、パナソニックホールディングスはGXリーグの「GX経営促進ワーキング・グループ」のリーダー企業としての活動も行っています。
NTT
NTTグループでは、2021年9月に「NTT Green Innovation toward 2040」を策定し、カーボンニュートラルの実現への取り組みを進めています。
具体的な目標は、再生可能エネルギーの積極的な利用により、温室効果ガスを45%削減することです。また、NTTが提唱する新たなネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」による電力消費量の削減にも取り組んでいます。
Amazon
Amazon社は、国際的な組織であるGlobal Optimismと共同で「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を発表しました。この成約に賛同する企業は、発表から2年で200社以上に増え、GX推進に貢献しています。
同社の目標は、2040年までに事業全体のCO2排出量を実質ゼロにすることです。また、再生可能エネルギー100%に切り替えるという目標については、当初掲げていた2030年から2025年に短縮するなど、スピーディな取り組みを行っています。
Google社は、GX推進に取り組む先進的な企業の1つです。2007年時点でカーボンニュートラルを達成し、2017年にはすべての消費電力を再生可能エネルギーに切り替えました。
さらに、CO2を全く排出しない「カーボンフリー」化を2030年までに100%実現するという目標を発表しています。
風力と太陽光で発電する巨大蓄電池による再生可能エネルギーの利用や、AIを活用した予測による効率的な電力供給の実現などにも取り組んでいます。
GXをより深く学びビジネスに活かそう!
化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を目指すGXは、環境問題を解決するために重要な取り組みです。また、GXに取り組むメリットとして、企業のブランドイメージの向上や長期的なコスト削減、個人の場合はGXプロジェクト発足時に活躍できるといったことも挙げられます。
今回ご紹介した事例などを参考にGXへの理解を深め、ぜひビジネスに活かしましょう!
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レビューの一部をご紹介
評価:★★★★★
コメント:網羅的かつコンパクトに学べる内容で、タイトル通り「超入門」として最適でした。理解度テストがある点も良かったです。GX検定という資格があることを知ったので、これをきっかけに受験してみたいと思います。
評価:★★★★★
コメント:GXというキーワードだけはよく耳にしており、必要性はざっくり感じながらもどのように学ぶか迷っていなかでこの講座に出会いました。
実際に受けてみると、初心者でもわかりやすく、動向や技術についても理解できたので、次はもう少し踏み込んだ内容を学んでビジネスに活用していきたいと思いました。
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