帰納法と演繹法とは?違いや注意点をわかりやすく解説!

論理的思考の基本となる「帰納法」と「演繹法(えんえきほう)」は、どちらも複数の事例や事実を組み合わせて結論を導く思考法です。結論に一貫性を持たせるために有効とされています。

この記事では、帰納法と演繹法はそれぞれどのような思考法なのか、具体例をあげて解説します。さらに、帰納法と演繹法を用いる際に陥りやすい注意点についても紹介します。

帰納法や演繹法に代表される論理的思考とは?

「論理的思考(ロジカルシンキング)」とは、情報を整理し筋道を立てて考えることです。論理の飛躍や矛盾なく、前提となる事象からの論理的推論によって結論に到達します。

そのため、人に伝わりやすく、自身の考え方の幅も広がるなどのメリットがあります。

この論理的思考の基本となるのが「帰納法」と「演繹法」です。

この記事では、帰納法と演繹法についてその考え方や具体例、関係性などを解説しています。論理的思考のトレーニング方法などについては「ロジカルシンキングとは?定義や手法、トレーニング方法を紹介」でくわしく紹介していますので、ご参照ください。

 

\文字より動画で学びたいあなたへ/

Udemyで講座を探す >

帰納法とはどのような考え方?

帰納法とは、「複数の物事や事例をならべ、これらの事象に共通する情報・ルールを抽出し、共通項を統合して結論を得る」という考え方です。帰納法の前提となる物事や事例は、過去の経験則や統計学的な側面から用いられる傾向にあります。

これだけでは少し難しいかもしれませんので、帰納法による思考・推論を具体的な例で考えてみましょう。

帰納法の考え方

帰納法の具体例

次のような3つの事例があったとします。

事例1:タイ料理の特集がテレビで流れている
事例2:タイ料理がトレンド入りしている
事例3:有名YouTuberがタイ料理に関する動画をあげている

これらの事例からどのような論理展開ができるでしょうか。各事例に共通する情報・ルールに注目して推論します。

共通する情報の1つは「タイ料理」です。そして、「テレビで流れている」、「トレンド入りしている」、「有名YouTuberが取り上げている」ことからは、注目されている、人気である、といった共通点が浮かび上がります。

これらを総合して導かれる結論は、「タイ料理が注目されている/人気がある」ということでしょう。

このように、複数の物事や事例から共通点を見つけ、これらを統合して結論を導くのが帰納法です。

ポイントはあくまで論理的であること。

たとえば上の3つの例から「タイ料理が注目されている」ことまでは推論できても、「タイ料理をみんなが食べている」かどうかはわかりません。

論理に矛盾や飛躍があると説得力を失ってしまうので、この点には注意が必要です。また、多くの事例があるほど説得力が増すのも帰納法の特徴です。

帰納法のイメージ

 

演繹法とはどのような考え方?

続いて、演繹法について解説します。演繹法は、「複数の事実を足し合わせて結論を出す」考え方です。

演繹法の前提となる物事や事例は、一般論やルールから用いられる傾向にあります。

帰納的な思考では、各事象に共通する情報を抽出し、そこから推論して結論を得ました。これに対して演繹法では、「AならばB」という事実と「BならばC」という事実を足し合わせ、「AならばC」というように結論を得ます。

実際に演繹的な論理展開した具体例を見ていきましょう。

演繹法の具体例

次の2つの事実から、演繹的にどのような論理展開ができるでしょうか。

事実1:電化製品は電気によって動く
事実2:電子レンジは電化製品である

前提となる事実は、この場合いずれも一般論的な情報です。ここから各事象を足し合わせて思考・推論します。

「足し合わせる」という考え方が難しい場合は「関連付ける」ことをイメージするとよいでしょう。

「電化製品は電気で動く」という事実と「電子レンジは電化製品である」という事実を足し合わせる、関連付けて推論すると、「電子レンジは電気で動く」という結論が導かれるはずです。

このように、複数の物事や事例を足し合わせ(関連付け)、結論を導く考え方が演繹法です。

 

帰納法と演繹法の違いや関係性をわかりやすく解説

帰納法と演繹法のそれぞれの考え方について説明してきましたが、そのうえで、考え方の違いや関係性について見ていきましょう。

帰納法と演繹法の具体例で用いた上の図を比較してみましょう。

帰納法では、各事象からのびる矢印が1つの結論へと向かっていきます。

帰納法のポイントは共通点を抽出することです。複数ある物事や事例から共通する情報・ルールを取り出して、そこから結論へと導く図式です。

これに対して、演繹法の図では矢印が鎖状につながっています。

演繹法のポイントは複数の事実を足し合わせることです。複数の物事や事例を関連付け、そこから結論を導く論理展開です。

帰納法、演繹法が使われる場面にも違いがあります。

帰納法は、前提となる物事や事例の「事実としての質・量」が大切となります。共通点を見つけ出す事象の内容に誤りや偏りがあれば、正しい結論は導かれません。また、前提となる物事や事例の量が多ければ、それだけ精度の高い推論ができます。

このような特性をもつ帰納法は、統計や分析において適しています。

演繹法が前提とする物事や事例は「一般論(ルール)」です。もちろん、前提とする一般論(ルール)に誤りや偏りがあると、正しい結論は導かれないので注意が必要です。

また、演繹法では各事象を関連付けて結論を導くため、それぞれの事象が無理なく関連付けられる内容でなければなりません。各事象を結び付ける筋道を意識することが大切となります。

このような特性をもつ演繹法は、一貫性のある物事において適しています。

結論へ導く考え方

このように、帰納法と演繹法は活躍する場面に違いがありますが、帰納法で導かれた結論が演繹法の前提となる一般論に用いられることも多く、両者には密接な関係性があることも押さえておきたいポイントです。

具体的な例で見てみましょう。

事例1:ソクラテスは死んだ
事例2:プラトンは死んだ
事例3:アリストテレスは死んだ

という3つの事例から、帰納的にどのような結論が得られるでしょうか。まず、ソクラテス、プラトン、アリストレスに共通するのは「人」であること。そしていずれの事例でも「死」が共通点となっています。これらを統合して得られる結論は「人は死ぬ」ということになるでしょう。

そしてここで得られた「人は死ぬ」という結論は、一般論(ルール)として、演繹法における前提となります。

たとえば、

事実1:人は死ぬ
事実2:アレクサンドロスは人である

という2つの事実を考えてみます。ここから演繹的に「アレクサンドロスは死ぬ」ということがいえるでしょう。

このように、実際の場面では、帰納法と演繹法を両方用いて論理を進める、ということが多くあります。

 

帰納法と演繹法の注意点

最後に、帰納法と演繹法の注意点についてです。

まず、いずれも前提となる事実や一般論(ルール)に誤りや偏りがなく、正当性があることが大切です。いずれの思考法でも前提となる情報が正しくなければ、正しい結論を導くことができません。

また、論理の飛躍にも注意が必要です。前提となる事象がもつ情報から導かれることなのか、自身の想定する仮説(結論)への強引な結び付けを行っていないかなど、慎重に進めましょう。

正しい前提と正しい論理展開があってはじめて、説得力のある結論となります。

説得力のある結論

 

「帰納法」と「演繹法」は、いずれも複数の物事や事例から結論を導く論理的思考法の1つです。

帰納法は「複数の物事や事象の共通点を抽出して結論を得る」、演繹法は「複数の物事や事象を関連付けて結論を得る」という特徴があります。

前提となる事象の正当性や論理の飛躍・強引な関連付けに注意し、正しい前提と正しい論理展開に留意しましょう。人に伝えやすく説得力のある結論を得ることができ、自身の思考の幅を広げるのにも役立ちます。

両者の違いをよく理解し、適切に使いこなせるとビジネスシーンにおいても強みになるでしょう。