リーダーシップについては数多くの研究があり、組織を率いるために重要なポイントがまとめられています。この記事では、リーダーシップの定義や種類、リーダーシップに必要な要素・スキルについて、具体例を挙げながら解説します。
リーダーシップとは何か?定義はある?
リーダーシップとは、組織を率いるために必要な能力のことです。
かつて、リーダーシップとは「カリスマ性」のような、特別な人材のみが持つ資質であると考えられてしました。
しかし現在では、リーダーシップとは誰もが持ち得る能力であり、トレーニングによって身に付けられると考えられています。
リーダーシップの定義にはさまざまなものがあり、公式に基準が定められているわけではありません。
なかでも特に有名なリーダーシップの定義として、ドラッカーによる3つの定義があります。
ドラッカーによる3つの定義
著名な経営学者で、組織のマネジメントに関する研究で知られるドラッカーは、リーダーシップを以下の3つの性質によって定義しています。
- リーダーシップは資質ではなく「仕事」
ドラッカーによれば、リーダーシップは人を引き付ける資質ではなく、組織の使命をメンバーに示し、目標を達成するための仕事です。
- リーダーシップは特権ではなく「責任」
リーダーとは特権的な地位ではなく、プロジェクトの成否に対して責任を負うべきポジションとされています。
- リーダーシップには「信頼」が必要
リーダーシップが発揮されるために、リーダーを信頼して自らの意思でついていくフォロワーの存在が必要です。
さらに、リーダーシップで有名なのが、 社会心理学者の三隅二不二によって考案された「PM理論」です。
PM理論のPはPerformance(目標達成)、MはMaintenance(集団維持)を表します。
三隅二不二は、目標を定めて達成するP機能と、協調性を保って集団を維持するM機能の2つによってリーダーシップを定義しました。
リーダーシップとマネジメントスキルの違いとは?
リーダーシップと混同されやすいものとして、マネジメントスキルがあります。リーダーシップとマネジメントスキルは、ともに経営などで求められますが、同一のものではありません。
マネジメントとは、業務の進捗状況やスケジュールを管理することです。
マネージャーは組織の成果を達成するために、メンバーの編成やタスクの割り当てなど、さまざまな管理業務を行います。
一方、リーダーの役割はビジョンや方針を明確にし、組織全体を導くことです。
マネジメントの方向性が成果に向いていることに対して、リーダーシップの方向性は組織に向いていることが主な違いとなっています。
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Udemyで講座を探す >リーダーシップの種類とは?
リーダーシップの目的は組織を率いることですが、そのために用いられるアプローチは1つだけではありません。
心理学者で、世界的なベストセラー『EQ こころの知能指数』の著者であるダニエル・ゴールマンによれば、リーダーシップには次の6種類があります。
- 強圧型
- ビジョン型
- 親和型
- 民主主義型
- 実力先導型
- コーチ型
それぞれについて、どういうタイプなのかをご紹介します。
強圧型
強圧型のリーダーシップは、リーダーがメンバーに対して強制的に命令し、指示に従わせることが特徴です。
トラブルが起きたときなど、緊急事態においては強圧型のリーダーシップが効果を発揮します。
ただし、強圧型のリーダーシップのもとでは、メンバー自身の考える力や、組織内の一体感が形成されません。
ビジョン型
ビジョン型のリーダーシップは、組織が目指すビジョンをリーダーが明確に掲げ、メンバーを導くことが特徴です。
組織の成長期や変革期において、ビジョン型のリーダーシップが効果を発揮します。
ビジョン型のリーダーシップは、組織への帰属意識が高まりやすく、メンバーの自主性を育むことも可能です。
ただし、リーダーの強い信念や価値観が必要なため、理想論とされる場合もあります。
親和型
親和型のリーダーシップは、リーダーを含む組織のメンバー全員が良好な人間関係を築くことが特徴です。
気持ちよく働けて、やる気を維持しやすい組織が構築されます。
ただし、親和型のリーダーシップは責任の所在が曖昧になったり、成果よりもコミュニケーションが重視されたりしやすいことが短所です。
民主主義型
民主主義型のリーダーシップは、リーダーがメンバーの意見を聞き入れながら意思決定をすることが特徴となっています。
メンバーから意見を集めるため新たなアイデアが出やすく、合意も得やすいことが民主主義型リーダーシップの長所です。
ただし、成果や効率よりもメンバーの参加を重視する民主主義型のリーダーシップは、急を要する意思決定には向いていません。
実力先導型
実力先導型のリーダーシップは、実力の高いリーダーが手本となりメンバーを導くことが特徴です。
リーダーのスキルにメンバーがついていける場合は、実力先導型によって高い成果が得られます。
ただし、リーダーとメンバーのスキルややる気にギャップがある場合、実力先導型のリーダーシップで組織を率いることはできません。
コーチ型
コーチ型のリーダーシップは、リーダーがメンバーのコーチ役となって目標達成を支援することが特徴です。メンバーのスキルを活かしながら成果を出すことができます。
ただし、メンバーのモチベーションが低い場合には、コーチ型のリーダーシップは効果を発揮しません。
これら6種類のリーダーシップは、1人のリーダーに1つ当てはまるわけではなく、状況に応じて使い分けることが理想的です。
リーダーシップに必要な要素・スキルとは?
リーダーシップ論の世界的権威であるジョン・アデアは、リーダーの仕事として以下「8つの機能的行動」をあげています。
- 仕事の明確化
- 計画
- 説明
- 統制
- 評価
- 動機付け
- 組織化
- 模範となること
リーダーシップを発揮するために必要な要素・スキルについて上記8つの機能的行動をもとにご紹介します。
仕事の明確化
チームおよびメンバーが行うべき仕事を明確にすることがリーダーの1つ目の仕事です。
プロジェクトを開始する際に、達成すべき目標や行うべきタスク、締め切りの日時などを明確化する必要があります。
計画
プロジェクトの進め方について計画することが、リーダーの2つ目の仕事です。メンバーの欠員や予算調達の失敗など、不測の事態に備えた代替案も含めて計画する必要があります。
説明
仕事内容やスケジュールについて、メンバーに説明をすることもリーダーの仕事です。
組織が目指すゴールや、誰が・何を・いつまでに行うべきかなど、リーダーがわかりやすく説明します。
統制
計画に基づいて、プロジェクトの進捗やメンバーの行動を統制します。
メンバーの仕事が予定より遅れていたり、連絡が滞っていたりする場合に、リーダーが働きかける必要があります。
評価
リーダーの5つ目の仕事は、メンバーの仕事の成果を正しく評価することです。成果を出したメンバーを評価するだけでなく、失敗してしまった点について反省と改善を促すことも重要となります。
動機付け
「動機付け」とは、メンバーにやる気を出させることです。
メンバーの実力に応じた適切な目標設定や、メンバーを信頼して自主的に挑戦させるなど、モチベーションアップにつながる働きかけを行います。
組織化
「組織化」とは、メンバー構成や指示系統などを適切に調整することを指します。
メンバーの実力や得意分野に応じて組織を編成したり、必要に応じて編成を見直したりするスキルが求められます。
模範となること
メンバーの模範となることが、リーダーの8つ目の仕事です。
仕事を進める手順やコミュニケーションの取り方、トラブル発生時の立ち回りなど、メンバーの手本となる行動を示すことが重要となります。
リーダーシップ以外にも必要な「シェアドリーダーシップ」「フォロワーシップ」
組織が成果を出すために必要な要素は、リーダーシップだけではありません。
近年では、リーダー以外のメンバーにとって必要な考え方として、「シェアドリーダーシップ(Shared Leadership)」と「フォロワーシップ(Followership)」が注目されています。
シェアドリーダーシップとは、単独のリーダーがメンバーを率いるだけでなく、チームの全員がリーダーシップを発揮することです。
組織の目標を共有しつつ、メンバーがそれぞれ主体性を持つことで、メンバー間の相乗効果や、さらなる業績の向上が見込めます。
フォロワーシップとは、メンバーがリーダーを信頼し、リーダーへの支援や提言などを通じてチームを成功に導くことです。
フォロワーシップのある組織はリーダーとメンバーの結束力が強く、高いパフォーマンスを発揮できます。
この記事では、おもにビジネスにおけるリーダーシップについて解説しました。リーダーシップの定義は1つではなく、さまざまな種類があります。この記事読み、組織に合ったリーダーシップの実践にお役立てください。
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