ITIL4は、ITサービスの活用法や成功事例をまとめた最新のフレームワークです。この記事ではITIL4とITIL v3の違いやITIL4の資格制度、日本語資格の情報などを紹介します。ITサービスの導入や活用に携わる方はぜひ参考にしてください。
公開日:2022年12月27日
ITIL4とは?
ITILは「Information Technology Infrastructure Library」の略称で、ITサービスマネジメント(ITSM)の成功事例と重要なポイントを集約した書籍群のことです。IT技術の進歩やビジネス環境の変化に合わせて、内容が随時更新されています。
ITIL4は、前バージョンのITIL v3に代わって2019年2月にリリースされました。2022年現在、ITIL4は最新のバージョンです。アジャイルやDevOpsなど、システム開発やIT部門のプロジェクトマネジメントに関する新たな概念に対応した体系となっています。
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ITIL4とITIL v3は、ITサービスマネジメントに対する考え方や、使われている用語に一部違いがあります。ITIL v3では、サービスプロバイダが顧客に対して一方的に価値を提供するという考え方が採用されていました。ITIL4では、双方が価値を共創するという考え方に更新されています。
ITIL v3の「4つのP」が、ITIL4では以下の「4つの側面」に変更されたことも主な違いです。
- 組織と人材
- 情報と技術
- パートナーとサプライヤ
- バリューストリームとプロセス
ITIL v3の「プロセスと機能」に含まれていた内容は、ITIL4では「プラクティス」に再編されています。
ITIL4の主な内容
ITIL4には、サービスバリューシステムなど、ITIL v3までにはなかった新たな概念が加えられました。ITIL4で体系化されている主な内容は次の通りです。
サービスバリューシステム
ITIL4のサービスバリューシステムとは、ITIL v3のサービスライフサイクルに代わる概念です。サービスライフサイクルは安全なITサービスを安定的に提供するための枠組みでしたが、IT技術の進歩に追いつかない部分も出てきました。
一方、サービスバリューシステムなら環境の変化に柔軟に対応し、より迅速に価値を提供できます。サービスバリューシステムは、ITサービスに関する機会や需要が、サービスバリューチェーンを通じて価値へと変換されるまでの流れをモデル化したものです。
サービスバリューチェーンとは
サービスバリューチェーンとは、ITサービスを開発・管理する方法を体系化したものです。サービスバリューチェーンはサービスバリューシステムの中心的な役割を担います。サービスバリューチェーンの構成要素は次の活動です。
- 計画
ITサービスやそのマネジメントについて、現在の状況や事業のビジョンなどを踏まえた計画を立てます。
- 改善
サービスとプラクティスに対して、継続的な改善を行います。
- エンゲージ
エンゲージとは、ITサービスに関わる事業者やユーザーのニーズを踏まえて、良い関係を築く活動です。
- 設計と移行
計画に従い、求められるサービス品質や開発期間、コストなどの条件をより具体的に設計します。
- 調達と開発
必要なリソースの調達やシステム開発などを行います。提供とサポート ニーズを満たすITサービスを提供し、必要に応じたサポートも行います。
プラクティス
プラクティスとは、ITサービスの開発や提供を行うために組織に求められる具体的な実践項目のことです。ITIL v3の「プロセスと機能」に代わる概念として、ITIL4で新たに取り入れられました。
プラクティスには全部で34の項目があり、次の3つのカテゴリに分類されています。
ジェネラルマネジメントプラクティス
ビジネスの運営に必要となる全般的な項目です。ITIL v3から継承された「戦略管理」や「ポートフォリオ管理」、「サービス財務管理」などが含まれます。ITIL4から「アーキテクチャーマネジメント」や「リスク管理」などが加わり、全部で14種類のプラクティスとなりました。
サービスマネジメントプラクティス
ITサービスの提供に関わる項目です。従来からあった「サービスレベル管理」や「サービス評価とテスト」などに、「ビジネス分析」や「サービスデザイン」など新たな項目を加えた全17種類のプラクティスが含まれます。
テクニカルマネジメントプラクティス
技術的な内容に関する項目です。ITIL v3にあった「展開管理」が大幅に変更され、さらに新たな項目を加えた全3種類のプラクティスが含まれます。
バリューストリーム
バリューストリームは、ITIL4で定義されている「4つの側面」の内の1つです。顧客に価値を提供するプロセスの中で、誰がどのプラクティスにおいて何を行うかという一連の流れを指します。
従うべき原則
従うべき原則とは、サービスバリューシステムの実現に向けた共通の価値観です。組織の戦略や構造が変化するなど、あらゆる状況に対応するため価値観として、従うべき原則が設定されています。 従うべき原則の具体的な項目は「協働し、可視性を高める」や「最適化し、自動化する」などです。
ITIL4の資格制度
ITIL4の資格制度は、レベルや内容によっていくつかの種類に分かれています。そのため、求めるスキルに応じて最適な資格を取得することが可能です。
最も基礎的な資格は「ITIL4ファンデーション」です。ITサービスマネジメントに関する基礎的な知識や、日常業務における価値提供などを体系的に学べます。
その上位資格が、「ITILマネージング・プロフェッショナル(MP)」と「ITILストラテジック・リーダー(SL)」の2つです。
ITILマネージング・プロフェッショナルの資格取得には、以下の4つの認定が必要です。
- ITILスペシャリスト(作成・提供・サポート)
- ITILスペシャリスト(利害関係者の価値を主導)
- ITILスペシャリスト(ハイベロシティIT)
- ITILストラテジスト(指示・計画・改善)
また、すでにITIL v3のマネージング・プロフェッショナルを取得済みの方向けの移行研修も用意されています。
ITILストラテジック・リーダーの資格取得には、以下の2つの認定が必要です。
- ITILストラテジスト(指示・計画・改善)
- ITILリーダー(デジタル&IT戦略)
これらの他、最上位資格の「ITILマスター」や、2種類の拡張資格も用意されています。
(※)資格の詳細はこちらをご確認ください。
日本語資格は2022年12月以降順次リリース
基礎的な内容のITIL4ファンデーションをはじめ、一部の資格についてはすでに日本語資格がリリースされています。
ITILマネージング・プロフェッショナル(MP)の取得に必要な研修は、2022年12月に日本語版がリリース済みです。ITILストラテジック・リーダー(SL)は、2023年の1月~3月に日本語版のリリースが予定されています。(※)
(※)詳細はこちらをご確認ください。
旧バージョンであるITIL v3の日本語資格も、現状では継続的に実施される予定です。ただし、ITIL4の日本語資格がすべてリリースされたあと、一定期間でITIL v3の提供が終了する可能性があります。
ITIL4は、ITサービスマネジメントに役立つ考え方や事例を体系的にまとめたものです。アジャイルを始めとした最新の概念やシステム開発手法に対応しています。ITIL v3ではプロバイダから顧客への一方的な価値提供が想定されていましたが、ITIL4では価値を共創するという考え方に変化しました。 ITIL4には難易度が異なるいくつかの資格制度があり、日本語資格は順次リリースされる予定です。ITサービスマネジメントに携わる方は、ITIL4について学んでみてはいかがでしょうか。
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