企業が目標を達成するためには、KPIを設定することが非常に重要です。KPIは「新規顧客獲得数」「新規受注獲得数」など、マーケティングや営業の現場でよく使われます。また、サポートや管理部門で「顧客満足度」や「従業員満足度」などのKPIを導入している企業もあります。
では、そもそもKPIにはどのような意味があり、どのように活用すればよいのでしょうか?
今回は日常業務でKPIを設定している筆者が、KPIのメリットや具体的な活用方法についてご紹介します。この記事を読み終わるころには、KPIを業績向上に役立てる知識が身に付いているでしょう。
KPIの意味とは?
組織における目標を実現・達成するには、具体的なプロセスや進捗状況を把握し、改善することが必要です。ここでは、業務の各プロセスに設定されるKPIについて詳しく説明します。
KPIとは?
KPIはKey Performance Indicatorの略称で、日本語では「重要業績評価指標」と言われます。経営にはさまざまな種類の業績評価指標が使用されますが、KPIは、目標の達成に向かってプロセスが適切に実行されているかを定量的に評価するための指標です。
KPIは一般的に、一定の期間を定めて計測されます。通常は月次、スピードの速い組織では週次、日次で目標設定をするケースもあります。期間ごとにパフォーマンスを評価し、成績が悪い場合は改善策の策定と実施が必要です。
KPIの例
KPIは、組織のマーケティング部門や営業の現場で使われることが一般的です。以下はKPIとして、よく使われる指標例です。
- セールスの場合:売上目標を達成するための「訪問回数」「成約数」「成約率」など
- マーケティングの場合:ウェブサイト経由の売上目標を達成するための「訪問者数」「回遊率」「資料ダウンロード」など
- 人事の場合:社員定着数を目標とした「離職率」「従業員満足度」など
目標とKPIの関係について具体例を紹介します。
例えば、自社サイトに対する新規の問い合わせ件数が月間30件という目標がある場合、Webサイトへのアクセスが減少すると、目標達成が困難です。ここで、目標達成のために、検索エンジンからのセッション数の増加をKPIとして設定します。
そして、KPIの達成レベルを確認するために、定期的にGoogleアナリティクスを利用して検索エンジンからのセッション数を確認していきます。
KPI設定のメリット
KPI設定の主なメリットは、以下の通りです。
- メンバーの意思統一が図りやすくなる
- 公平な評価を行える
- メンバーのモチベーションやパフォーマンスアップにつながる
KPIを設定するメリットは、組織内における共通の指標を用いることでメンバーの意思統一が図りやすくなる点です。また、評価基準が客観的になり、チームとメンバーに対する評価を公平に行うことができます。
客観的な目標設定によりメンバーのモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンス向上につながる事もKPI設定のメリットと言えるでしょう。
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KPIのほかに、KGIやOKRという指標もよく使われます。それぞれどのような違いがあるのでしょうか?
KGIとは?
KGIは「Key Goal Indicator」の略称で、「重要目標達成指標」と訳されます。組織の売上や利益、課題の達成レベルなどがKGIの例です。KGIとして設定される指標は、組織の規模や業種などによって異なります。
KPIとKGIの関係性
KPIは目標達成の進捗状況を管理するために使われ、KGIは企業や事業全体の目標を管理するために設定されます。KGIは組織が目指すべきゴールを数値化した指標、KPIはKGIを達成するためのより細かな目標を数値化した指標と言ってもよいでしょう。
例えば、KGIを「売上目標1億円」に設定したとします。このKGIを達成するために定められるKPIの例は以下の通りです。
- 新規問い合わせ件数1,000件
- 新規商談件数100件
- 新規顧客獲得件数20件
- 平均受注単価500万円
売上や利益の目標金額など、大まかなKGIを設定する企業は数多くあります。しかし、KGIを定めてもKPIを設定しなければ、目標達成のプロセスを管理できません。
KPIを導入していない場合、KGIを実現するための取り組みとしてKPIを設定するとよいでしょう。
KPIとOKRの関係性
OKRは「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な成果」と訳されます。組織が達成するべき目標(Objectives)と、目標達成に必要な成果(Key Results)をセットにして扱う目標管理方法です。
KGIとKPIを設定して取り組む手法と比べて、OKRではよりシンプルで短期的な目標設定を行います。そのため、目標設定に時間がかからず、施策の評価や見直しをより高い頻度で実行できるのが特徴です。
KPIを設定して目標を達成しよう!
ここからは、KPIとKGIを設定するコツや、「ECサイト運営」と「Webマーケティング」を例としたKPI設定の具体例を紹介します。
設定のコツ
まずは現状のデータをもとにしてKGIの目標値を設定し、そこから逆算して各種KPIの目標値を算出しましょう。
KGI、KPI共に、現実的な数値を設定することがコツです。過去の売上や成長率などと現在の数値を比較し、改善点を分析した上で、実現可能性の高い目標を設定しましょう。
実現できないような高すぎる目標を掲げても、チームや組織全体のモチベーション低下につながるおそれがあります。そのため、無理のない達成可能な目標を設定することをおすすめします。
また、設定するKPIの個数が多すぎると、管理の手間が増え業務効率が下がってしまうため、注意が必要です。1つのKGIに対して、多くても4~5個程度までのKPI設定にとどめるようにしましょう。
売上目標の達成率は、以下の方法で計算が可能です。
売上目標の達成率=実際の売上÷目標の売上×100
例えば、目標売上が100万円で、実際の売上が95万円だった場合、目標の達成率は95万円÷100万円×100=95%です。
売上以外のKGIやKPIも、上記の方法で達成率を計算できます。各指標の達成率を管理し、達成していないものがあれば、原因の分析と施策の見直しに取り組みましょう。
ECサイト運営の場合
ECサイト運営で、現在の月商が100万円というケースを仮定して、KGIとKPIの設定方法を紹介します。
例えば、月商を1.5倍にアップすることを目指す場合、KGIは月商150万円です。次に、KGIを達成するために必要なKPIを逆算していきます。
仮に、現在の月商100万円が以下のような内訳で成り立っているとしましょう。
【現状得られている成果】
新規問い合わせ件数(KPI) | 500件 |
総売上件数(KPI) | 200件 |
平均受注単価(KPI) | 5,000円 |
月商(KGI) | 200件×5,000円=100万円 |
月商を1.5倍にする方法として、単純に平均受注単価を1.5倍にすることが考えられます。しかし、同じ商品を販売しながら、平均受注単価だけを1.5倍に増やすことはあまり現実的ではありません。
そのため、平均受注単価だけでなく、総売上件数も伸ばして月商を増やす方法を考えてみます。総売上件数を1.25倍、平均受注単価を1.2倍にすると、最終的な月商を1.5倍に増やすことが可能です。
【目標とするKPIとKGI】
新規問い合わせ件数(KPI) | 500件 |
総売上件数(KPI) | 250件(現状の1.25倍) |
平均受注単価(KPI) | 6,000円(現状の1.2倍) |
月商(KGI) | 250件×6,000円=150万円(現状の1.5倍) |
総売上件数を1.25倍にするための施策として、新規問い合わせ件数を増やしたり、問い合わせからの購入率を高めたりすることが考えられます。また、平均受注単価は、オプションの追加や他商品とのセット販売などで高めることが可能です。
このように、最終的に達成したいKGIからKPIを逆算し、必要な施策を検討していきましょう。
Webマーケティングの場合
同様に、Webマーケティングにおいて現在の月商が200万円という例で、KGIとKPIの設定方法を解説します。現在の成果は以下の通りです。
【現状得られている成果】
ユニークユーザー数(KPI) | 200件 |
問い合わせ率(KPI) | 10% |
問い合わせ件数(KPI) | 20件(200件×10%) |
問い合わせからの成約率(KPI) | 25% |
成約件数(KPI) | 5件(20件×25%) |
平均受注単価(KPI) | 40万円 |
月商(KGI) | 5件×40万円=200万円 |
月商を2倍にするという目標でKGIを設定した場合、次のような施策で各指標を1.2倍にすると目標を達成できます。
- Web広告の導入でユニークユーザー数を2倍にアップ
- Webサイトの改善で問い合わせ率を2倍にアップ
- セールスプロセスの見直しで問い合わせからの成約率を2倍にアップ
- サービスの改善などで平均受注単価を2倍にアップ
【目標とするKPIとKGI】
ユニークユーザー数(KPI) | 240件(現状の1.2倍) |
問い合わせ率(KPI) | 12%(現状の1.2倍) |
問い合わせ件数(KPI) | 約29件(240件×12%) |
問い合わせからの成約率(KPI) | 30%(現状の1.2倍) |
成約件数(KPI) | 約9件(28件×30%) |
平均受注単価(KPI) | 48万円(現状の1.2倍) |
月商(KGI) | 9件×48万円=432万円(現状の約2倍) |
ただし、これらの設定はあくまでも目標のため、施策に取り組む過程で達成が難しい項目が出てくる可能性もあります。その場合は、KPIとして設定している項目を調整するなど、計画を見直しましょう。
KPIの活用が目標達成のカギ!
組織やチームの目標を達成するためには、適切な目標設定と、ゴールに至るまでのプロセスを管理することが大切です。
売上や利益など組織全体の目標はKGI、目標を達成するために必要な各プロセスの指標はKPIと呼ばれます。KPIを組織全体で共有して意思統一を図ることで、モチベーションと成果の向上が可能です。KPIとKGIを適切に設定し、着実に目標を達成しましょう。
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