データレイクとは?類似システムとの違いや活用例、構築方法を解説

ビッグデータの管理や分析にデータレイクの導入を検討しているものの、

・これまでのシステムとの違いが分からない…。
・具体的に何を実現できるのか知りたい…。

という方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、

・データレイクと類似システムの違い
・データレイクの機能・できること
・データレイクを使うメリット

についてご紹介します。

この記事を読めば、近年のビジネスシーンでデータレイクが注目されている理由や、自社での活用方法を理解できます。

データレイクとは?

データレイクとは、大量のデータを保存・処理・保護するためのリポジトリ(=保管場所)です。構造化データ・半構造化データ・非構造化データなどを一元的に扱えます。

  • 構造化データ:ExcelやCSVファイルなど、行や列で整えられたデータ
  • 非構造化データ:電子メールや画像・動画ファイルなど、整形せず取得したそのままの状態のデータ
  • 半構造化データ:XMLやJSONファイルなど、構造化データと非構造化データの中間的なデータ

また、データの形式を問わず、加工や変換をせずに格納できるという特徴があり、データレイクに格納されたデータは、多様な方法で分析できます。

データレイクが注目される理由・背景

近年、データレイクが注目を集めている理由は、ビッグデータを扱う企業が多くなり、大量のデータを活用するための環境が必要とされているためです。

ビッグデータを適切に保存し効率的に管理するには、データの保管場所が欠かせません。また、自由度の高い分析を実施するうえで、高度なデータ分析に対応可能なデータ基盤が必要となります。

こうした背景から、データ管理機能やデータ分析機能を備えたデータレイクが役立てられているのです。

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データレイクと類似システムの違い

データレイクとよく似たシステムとして、「データウェアハウス」「データレイクハウス」「データマート」「クラウド」「データベース」などが挙げられます。ここでは、類似システムとの違いを解説します。

システム名 概要
データウェアハウス 構造化データを格納し高度な分析に用いられるリポジトリ
データレイクハウス 非構造化データの格納と高度な分析の機能を兼ね備えたリポジトリ
データマート 構造化データを整理して格納し、迅速な分析を実現するデータベース
クラウド インターネット経由でリモートサーバーにデータを格納するサービス
データベース 特定の用途のために整理されたデータの集合体

 

データウェアハウスとの違い

データウェアハウスは、大規模なデータを扱う点でデータレイクと共通していますが、構造化データを格納する点が異なります。

データウェアには、不要なデータや重複したデータなどが含まれないため、データの検索や高度な分析などに適しています。

データレイクハウスとの違い

データレイクハウスは、データレイクとデータウェアハウスのメリットを兼ね備えているのが特徴です。データレイクと同様に非構造化データの格納が可能、かつデータウェアハウスと同様に高度な分析を実現できます。

データマートとの違い

データマートは、特定の部門や業務上の目的に応じて構造化データを整理して格納します。比較的サイズが小さいので、特定のユーザーがデータへ効率的にアクセスしたり、迅速に分析したりできるのが特徴です。

クラウドとの違い

クラウドとは、インターネット経由でリモートサーバーにデータを格納するサービスのことです。これまで紹介したデータウェアハウスやデータレイクハウスはデータを格納する場所でしたが、クラウドは方法です。

データレイクにデータを格納する方法として、インターネット経由で別のサーバーへ格納して運用する方法(=クラウドデータレイク)と、自社で構築・運用するサーバー(オンプレミス環境)に格納する方法があります。

クラウドサービスについて、詳しくは「AWSとGCPを比較!人気クラウドサービスの特徴と選び方を解説」で解説しています。

データベースとの違い

データベースは、特定の用途のために整理され扱いやすい形式となったデータの集合体です。検索やレポート作成などに適しています。ただし、スキーマ(=構造)を必要とするため、データレイクのように半構造化データや非構造化データは扱えません。

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データレイクの機能・できること

データレイクを利用し出来ることは、主に以下のとおりです。

ここからは、具体的にどんなことができるのかを解説します。

データを簡単に移動できる

データレイクを活用することで、データを異なるソースから簡単に取り込めるようになります。その際、データの加工や変換はせずに、元の形式のままでインポートできます。データを移動するためにかかる時間と手間を省けるのが魅力です。

データを柔軟に分析できる

データレイクに格納されたデータを分析する際は、別のシステムへ移動させずに、そのまま分析可能です。

さらに、データレイクでは構造化データや非構造化データを保存し、目的に合わせて変換できるため、あらゆる分析へ柔軟に対応できます。

大量のデータを適切に保存できる

データレイクに保存したデータは、カタログ化して検索・参照できる状態にすることが可能なため、保存したデータを容易に把握できます。

また、クラウド型のサービスの場合は、データレイクを提供するベンダーが強固なセキュリティ対策を講じています。

機械学習を実施できる

企業がビッグデータを機械学習に活用することで、ビジネスの新たなインサイトを得られる可能性があります。

機械学習ツールを用いてデータを有効活用することで、経営の意思決定の支援や、新たなビジネスチャンスの創出などが期待できるでしょう。

 

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データレイクを使うメリット

企業がデータレイクを使うと、データ活用の推進につながります。ここでは、データレイクを使うメリットをご紹介します。

コストの削減

データレイクを使うと、大量のデータを一元管理できるので、従来よりも管理コストの削減が期待できます。

データを格納する場所が一元化され、検索や参照にも手間がかかりません。データを個別に管理する場合と比べて、管理コストを大幅に抑えられる点がメリットです。

データ利用の利便性向上

データレイクは収集したデータの形式を問わず、柔軟に格納できます。あらゆるデータをそのままの形式で保存するため、追加で必要が生じたデータを取り出すことも容易です。

データを利用しやすくなり利便性が高まるというメリットもあります。

セキュリティ向上

データレイクを活用して企業のセキュリティを向上させる方法があります。

例えば、大量のデータからユーザーの行動パターンを分析すれば、通常とは異なる行動を検知し、異常の早期発見に役立てられるでしょう。セキュリティの脅威に備えた対策にも貢献できます。

 

データレイクのデメリット・課題

データレイクにはメリットがある一方で、運用で注意したいポイントもあります。ここではデメリットや課題を解説します。

高水準のセキュリティ対策が必要

データレイクに格納したデータの中には重要な情報が含まれることがあります。場合によっては、企業の機密情報や個人情報などが含まれる可能性もあるでしょう。しかし、データレイク自体にセキュリティ機能は搭載されていません。

近年はサイバー攻撃や不正アクセスの手口が巧妙化し、情報漏えいのリスクが懸念されています。データレイクに保存したデータを安全に守るために、高水準のセキュリティ対策を導入する必要があります。

データの沼が生じる可能性がある

データの沼(データスワンプ)とは、どこにどの情報が格納されているか不明で、無秩序な状態のことです。

データレイクの運用時に適切な計画や管理が行われていないと、データの沼が生じて活用が困難になるおそれがあります。

データレイクは比較的データ管理しやすい構造になっていますが、より有効活用するためにも、メンテナンスを徹底することが重要です。

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データレイクの主な製品・サービス

データレイクの主な製品・サービスをご紹介します。導入を検討する際は、代表的なデータレイクの製品・サービスを比較検討してみましょう。

Apache Hadoop

「Apache Hadoop(アパッチハドゥープ)」は、Apacheソフトウェア財団が開発したサービスです。数あるデータレイクのサービスの中でも高い知名度を誇ります。

無料または低コストで利用できるオープンソースのサービスであるため、抵抗ストでデータレイクを構築したい場面に適しています。

Cloud Storage

「Cloud Storage(クラウドストレージ)」は、Googleが提供するストレージ「Google Cloud(グーグルクラウド)」に含まれるサービスです。

保存したデータは「Google Cloud」の各種ツールと連携できます。例えば、「Dataproc(データプロック)」によるオープンソースのデータ分析、「Vertex AI(バーテックスエーアイ)」による機械学習モデルの構築などが可能です。

Amazon Web Services(AWS)

Amazonが提供するクラウドサービスプラットフォーム「Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス)」では、データレイクを構築する際の基盤として利用できる「Amazon S3(エススリー)」が提供されています。

Amazon S3は、耐久性の高さやスケーラビリティなどの観点で、データレイクに適しているのが特徴です。

AWSの基礎知識やメリットについては、「AWS(Amazon Web Services)とは?利用するメリットや資格を徹底解説」を併せてお読みください。

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データレイクの活用例

データレイクをビジネスに導入すると、具体的にどのように活用できるのでしょうか。ここでは活用例をご紹介します。

顧客データの保管・分析

データレイクにあらゆる顧客データを格納し分析に活用することで、サービスの改善につながり、顧客満足度の向上が期待できます。

例えば、顧客の行動パターンを分析してパーソナライズを実施すれば、より顧客ニーズに適したサービスを提供できるようになるでしょう。

マーケティング分野の改善

データレイクに格納したデータをマーケティング分野に活用することも可能です。

例えば、自社の売上や在庫のデータを分析することで、精度の高い予測が可能となります。これにより在庫管理の最適化やコスト削減などを実現できます。

製品やサービスの質を向上

データレイクで大量のデータを扱えるようになれば、品質管理が強化され、製品・サービスの質を向上させられます。

例えば、製造業の場合、IoTデバイスで収集したデータをデータレイクに保存し分析することで、不良率を低下させられる可能性があります。

 

データレイクの導入に必要なスキル・ツール

高機能なデータレイクを最大限に活用するには、専門的なスキルやツールが不可欠です。データレイクを使いこなすために必要なものを把握しておきましょう。

データの移動や管理:ETLツール

複数のソースから大量のデータを取り込み、統合してデータレイクを構築するには、ETLツールが必要です。ETLとは、Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(書き出し)の略で、大量のデータを格納するための一連のプロセスのことです。

データレイクを準備するだけではデータの移動や管理ができないため、ETLツールを用意します。

また、保存したデータを整理して検索性を高めるには「データカタログ」のツールが必要となります。このほか、格納したデータをセキュアな環境で保存するには、データ暗号化やアクセス制限などのセキュリティ技術が必須です。

適切な分析方法の選択:データ分析スキル

データレイクに格納したデータは、活用して初めてビジネスにメリットをもたらします。

データを有効活用するには、目的に適した分析ツールを選ぶことが大切です。「ビッグデータ分析」や「リアルタイム分析」などのさまざまな方法の中から、自社の目的に合わせて分析ツールを選定し、経営の意思決定に役立てましょう。

機械学習の活用:専門知識

データレイクを機械学習で活用するには、機械学習に関する専門知識とスキルが求められます。

プログラミングやデータベースといった基本的なITスキルのほか、数学や統計の知識、機械学習アルゴリズムやフレームワークの知識などがなくてはなりません。

機械学習を行うには、担当者がこれらの高度な知識とスキルを身につける必要があります。

 

データレイクの構築方法

最後に、データレイクの構築方法の流れをご紹介します。データレイクの構築はザックリ以下の手順で行います。

  1. システムやデータの整理
  2. ディレクトリ設計
  3. 製品の導入・データの統合

各手順について説明します。

システムやデータの整理

まずは、自社が保有するシステムやデータの整理から取り組み始めましょう。

各部署が保管するデータや、それぞれの用途などを洗い出します。社内に点在するデータを収集して、優先度の高さなどを踏まえてデータレイクへの統合を検討します。

多くの手間がかかりますが、データレイクの構築に不可欠な工程です。

ディレクトリ設計

データレイクに格納するデータを整理できたら、続いてディレクトリ(=保管場所)を設計していきます。

例えば、導入後の管理や運用のしやすさに配慮し、業務や部署などに分けて管理するのも一つの方法です。

製品の導入・データの統合

事前準備ができたら、データレイクの製品・サービスを導入し、データの統合に取り組みます。格納したデータはカタログ化しておくことで、必要な場面で速やかに活用しやすくなります。

これらのデータを分析で利用する際は、まずデータレイクに保管したデータを取り出して加工し、構造化データをデータウェアハウスに保管します。

その後、必要に応じてデータを取り出してデータマートに保管し、分析に利用するという流れが一般的です。

 

データレイクで実際に分析をしてみよう

データレイクを活用すると、大量のデータを一元管理し、柔軟に分析を実現できます。分析によって顧客ニーズを把握したり、売上の予測精度を高めたり、製品・サービスの品質を向上させたりとビジネスシーンで幅広く役立てられます。

ご紹介した情報を参考に、データレイクによる分析に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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コメント:全体的に期待通りの内容でした!
サンプル事例やSQLの構文もデータ分析をするにあたりとてもいい題材でした。サンプル命名規則もわかりやすかったです。
すぐに自分の手で動かせるように練習して、業務に役立てたいと思います。
ありがとうございました!!

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コメント:一通りの基本的な内容を学べたことが有益でした。
実際に業務に使うにはまだまだ覚えることが沢山ありそうですが、実践しながら学んでいきたいと感じれたことが良かったです。

データレイクの理解を深め、活用できるようになりましょう。