より効果的なマーケティング活動を行うには、顧客の行動や心理を理解するために「カスタマージャーニー」をしっかりと理解することが重要です。しかし、何から始めればよいか分からないという方のために、この記事では、カスタマージャーニーマップを作ることのメリットや、作り方、活用事例などをご紹介します。
最後まで読み終わる頃には、カスタマージャーニーを適切に作れるノウハウが身についているでしょう!
INDEX
カスタマージャーニーとは?
インターネットやテクノロジーの発達により、顧客が目にするメディアも多種多様になりました。それにより、顧客が広告や情報に触れるタッチポイントも大幅に増え、マーケティング担当者が購買行動を正確に把握することがますます難しくなってきました。
そうした中で、顧客の心理や行動を的確に把握するために役立つのが「カスタマージャーニー」です。
カスタマージャーニーとは、顧客の購買行動を「旅」になぞらえて、その行程を整理し、視覚化するものです。顧客が商品の購入に至るまでの体験や思考の道筋をマップ化することにより、コミュニケーションの課題を明確にし、マーケティング施策の改善に役立てることができます。
私たちがモノを買うときは、街頭で見た商品をインターネットで調べたり、口コミを調べたり、比較サイトを見たりと、「認知・興味・検討・購入」というステップを踏んでいます。
このプロセスを可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」といい、現状の課題の洗い出しや、マーケティングに携わる人同士の認識をそろえるために使用します。
カスタマージャーニーが必要な理由
以前は、顧客が商品やサービスの情報を知る際に有効だったのは、新聞、テレビ、雑誌などの「マスメディア」が主流でした。ところが、インターネットの発達によりオンラインでの広告や宣伝も可能になり、ターゲットとなる顧客にカスタマイズされた情報を直接届けることが可能になりました。さらに近年では、SNSなどを使った個人での情報発信も盛んになったことから、オンラインでの口コミも重要度を増しています。
現在の企業のマーケティング担当者は、より多くのチャンネルを駆使し、複雑なカスタマージャーニーを理解する必要があります。顧客の行動や思考を的確に理解し、コミュニケーションの接点を整理してマップ化することで課題を見つけ、効率的なコンテンツ制作やマーケティング戦略が可能になります。
カスタマージャーニーを把握することは、今後メディアの多様化とともにさらに重要になるでしょう。
カスタマージャーニーを作成するメリットとは?
カスタマージャーニーを作成するメリットは、顧客の行動や思考をより深く理解することで、顧客の視点に立ってマーケティング施策を発想できるようになることです。顧客の気持ちを理解することによって、本当に求められている情報を的確なタイミングで提供できるようになります。
具体的には、以下のようなプロセスでメリットを得られるでしょう。
- 顧客の購買行動を時系列でマップ化する
→改善すべき課題が浮き彫りになり、それらを一から把握し直すことで、次の施策の戦略立案に活かす - 購買行動を細かく可視化する
→チーム内で目指すべき目標や現状の課題を共有でき、統一できる意思決定や改善のサイクルが迅速になる - カスタマージャーニーで携わる人が共通意識を持つ
→消費者に響く施策を素早く打ち出すことができる
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カスタマージャーニーマップを作成する際に重要なのは、顧客の視点に立って行動や感情の変化を読み解くことです。コミュニケーションが発生するタッチポイントごとに、それぞれの情報を抜き出しマップ化していくことで、今まで見えてこなかった課題がはっきりとしてきます。
では実際に、カスタマージャーニーマップをつくってみましょう。
マップを作る前に考えておくべきことや準備すべきこと
カスタマージャーニーマップを作成するにあたり、まずは自社の商品やサービスに関する情報や、現在行っているマーケティング施策などを全体的に俯瞰しながら網羅する準備を行います。
お客様の行動や心理の変化を、一連の流れとしてとらえられるように、全体を時系列で理解できるように必要な情報を用意しましょう。
ペルソナの設定
顧客をいくつかのグループに分類し、セグメンテーションを行います。そのグループの中から、特に自社のサービスや商品を利用しそうな人物像をピックアップし、ペルソナを作成します。
例えば、以下のようなものがペルソナです。
「35歳男性、3年前に結婚をして1人目の子供が今年生まれた。これをきっかけにマイホームの購入を考えている。仕事はメーカーの営業。毎晩帰りは遅いが、土日は必ず休みのため、妻とショッピングに行くことが多い。趣味はネットサーフィンと旅行」
細かい設定は、顧客へのインタビューやアンケート、市場調査、ネット調査をもとに自分で考えて補います。ペルソナを決めることで、自社商品と接する可能性が高い場所が見えてきます。
※ペルソナについては、マーケティングで重要なペルソナとは?メリットから作り方まで解説! をご覧ください。
ゴールを明確にする
ペルソナの設定が終わったら、次にカスタマージャーニーのゴールを設定します。問い合わせや資料請求なのか、新規購入なのか、リピート購入か、あるいは他人に口コミで推奨してもらうことがゴールなのかによって、施策の内容は大きく変わります。
カスタマージャーニーマップのフレームをつくる
ゴールが明確になったら、そこに到達するための流れをまとめるために、カスタマージャーニーマップのフレームを作成します。横軸には「認知」「興味」「比較検討」「購入」といった顧客のフェーズを、縦軸には「感情」「思考」「行動」といったペルソナ自身のことを書きます。
購入までのシナリオ設計(仮説設計)
フレームが出来上がったら、特定のペルソナごとに、自社の商品・サービスを購入するまでにどのような行動をとるのか、タイムライン上に沿って設計します。
例えば、初めて商品を認知するのがネット広告なのか、週末に出かけたショッピングモール内の実店舗なのかで、その後の行動は変わりますし、そこで抱く感情やモチベーションも異なります。
また、初めて商品が認知された場所を「チャネル」といいます。チャネルの中でも、複数の接触方法がある場合、実際に接触した方法を「タッチポイント」といいます。
ネット広告で興味を持ったとしても、それが検索連動型広告なのか、メディア内の記事広告なのかなど、考えられる接点はさまざまです。
どのような施策をとれば、より多くのペルソナに効果的に出会えるのか、入念に考えましょう。
仮説の検証
設計した通りに顧客が動いているかどうか、アンケートや顧客参加型の調査を行って確認します。
意外と想定と異なる点が多いことに驚くはずです。例えば、あまりSNSは見ないだろうと予測していた世代が実は頻繁にSNSを利用していた、ということもあるでしょう。
実際の声を取り入れ、作成したペルソナとの差を埋めていきましょう。
課題の明確化とマーケティング施策への落とし込み
カスタマージャーニーマップが完成したら、全体を見渡しつつ、コミュニケーションの課題を明確にしていきます。足りない部分や、ボトルネックになっている部分などを見つけ、それに対する具体的なマーケティング施策を検討します。
複数の課題が見つかると思いますので、予算や効果によって優先順位を決めて、順番に取り組んでいくと良いでしょう。
カスタマージャーニーマップの活用事例
企業の業種や業態、商品やサービスの種類によっても、カスタマージャーニーの内容もさまざまです。ここでは、いくつかのカスタマージャーニーマップの活用事例をご紹介します。
活用事例1
鉄道会社Rail Europeのカスタマージャーニーマップは、鉄道利用者の乗車体験をまとめたものです。時間軸ごとの行動・思考・感情・体験がまとまっており、そこからの改善点も考察されており、とても分かりやすいです。
出典:カスタマージャーニーとは?|カスタマージャーニーマップ作成手順と作成ツール4選 | Senses
活用事例2
Exploratoriumというサンフランシスコにある博物館のカスタマージャーニーマップです。博物館への訪問前、訪問中、訪問後の顧客の流れが視覚的に整理され、見やすくまとめられています。それぞれのタッチポイントに関する情報をまとめることで、課題が見つけやすくなります。
出典:カスタマージャーニーとは?ジャーニーマップの作り方や具体的な事例をご紹介|マーケティング入門|MA(マーケティングオートメーション)ならMarketo Engage
活用事例3
病院の医療従事者をペルソナとしてつくられた、カスタマージャーニーマップのサンプルです。ターゲットとするペルソナによって、カスタマージャーニーの要素や流れも変わってきます。
出典:Customer Journey Maps: The Top 10 Requirements – Heart of the Customer
カスタマージャーニーを活用するうえで気を付けるべきポイントとは?
作成したカスタマージャーニーは、作ったあとの運用こそが本来の目的です。
カスタマージャーニーを活用するときのポイントと注意点をお伝えします。
ユーザーエクスペリエンスを重視
カスタマージャーニーのゴールは、より良いユーザーエクスペリエンス、つまりユーザーに大きな満足感を提供することです。
インターネットやスマートフォンの普及により、企業は多様なサービスを消費者に届けることができるようになりました。
その中で独自性があり、ユーザーの状況に合わせた適切な体験を与えることで、市場における競争優位性を保つことができます。
実際の声をヒアリング・定期的なメンテナンス
アンケートやインタビューで定期的に生の声を収集し、作成したマップのメンテナンスをすることが成功の秘訣です。
また、マーケターの思い込みがカスタマージャーニーに反映されてしまうことはよくあるので、一度決定したら終わりではなく、コンスタントに改善していくことを心掛けましょう。
カスタマージャーニーの作成や分析に役立つツール
どうしても自力でマップを作るのが難しいという人は、作成ツールや分析ツールを活用すると良いでしょう。
・「Experience Fellow」というツールは、被験者の体験を入力することで、カスタマージャーニーマップを自動で作成してくれます。作成したマップのエクスポートもできるので、チーム内ですぐにフィードバックを得ることができます。
・分析ツールとして優秀なのが、「The Customer Journey to Online Purchase」です。Googleがリリースしているツールで、Googleアナリティクスから得られたユーザーの行動パターンをまとめたカスタマージャーニーマップを閲覧することができます。ジャンルや国などを指定して検索できるので、近い業種のマップを探してみると、作成の手助けになるでしょう。
・Lucidchartの「カスタマージャーニーマップ作成ツール・テンプレート」を活用すると、カスタマージャーニーマップの作成に必要な図の作成やデータの視覚化を行うことができます。
参考:カスタマージャーニーマップ作成ツール・テンプレート | Lucidchart
・「KARTE(カルテ)」は、サイトやアプリの訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析し、顧客体験の向上に役立つプラットフォームです。カスタマージャーニーの検証にも役立ちます。
参考:CX(顧客体験)プラットフォーム KARTE(カルテ)
必要に応じてこれらのツールも活用しつつ、ぜひカスタマージャーニーマップを作成してみてください。顧客視点でコミュニケーションのタッチポイントを見直し、ゴールに合わせてマーケティング施策の課題を解決する糸口になることでしょう。
マーケティングに思い込みは禁物
カスタマージャーニーマップを作る上で大切なことは、顧客の感情や行動を徹底的に調査分析することです。
きっとこうに違いない、という気持ちでカスタマージャーニーを組み立てることは、非効率的な施策を繰り返す原因となります。思い込みを排除し、仮説と検証、分析のサイクルを回し続けることが優れたマーケターへの一歩となるでしょう。
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