エンジニア入門者向け資格「基本情報技術者試験」とは?勉強法を解説

エンジニア入門者向け資格「基本情報技術者試験」とは?勉強法を解説

基本情報技術者試験は、エンジニアを目指す学生や社会人にとって、第一歩となる試験です。

試験勉強を通じて、エンジニアとして必須のITスキルを身につけられるだけでなく、合格すればIT企業への就職も有利になります。

エンジニアにとって登竜門的な試験である基本情報技術者試験について、試験の概要から具体的な学習方法までご紹介します。

基本情報技術者試験とは?SEビギナー向けの資格?

基本情報技術者試験は英語では「Fundamental Information Technology Engineer Examination」とつづり、国内ではFEとも呼ばれている国家資格です。

運営するIPA(情報処理推進機構)は、試験の対象者像を「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身につけた者」と設定しています。ITエンジニアとしてのキャリアのスタートラインに位置づけられた試験です。

基本情報技術者試験は、国家試験である情報処理技術者試験のうちの1つです。年間で10万人以上が受験する試験であり、IT試験全体でみても、国内No.1の受験者数を誇ります。

試験は、毎年4月の第3日曜日(春期)と、10月の第3日曜日(秋期)の2回行われます。試験は午前と午後に分かれ、それぞれ150分間、計300分間の試験時間で実施されます。

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基本情報技術者試験は、プログラムやシステム開発の知識が要求されます。基本情報技術者試験で求められる知識は、エンジニアにとっては必要最低限なものであるため、将来エンジニアになることを目指して勉強するのであれば、文系の学生や初心者でも取得したいレベルの試験と言えます。

またIPAでは、基本情報技術者試験と同様の試験範囲で、さらに応用的な知識・技能が求められる「応用情報技術者試験」も実施しています。そのほか、基本情報技術者試験よりも難易度の低い「ITパスポート」という試験も実施しています。

基本情報技術者試験を取得するメリットは?

基本情報技術者試験を取得するメリットは、試験対策を通じてプログラミングやシステム開発の知識を身につけることができ、さらに、合格することでそれらの知識を保有していると証明できることです。

例えば、学生のうちに合格すれば、IT企業への就職活動が有利になり、エンジニアとしてのキャリアを切り開くきっかけになります。また、社会人として非IT企業からIT企業への転職を考えている方は、ITの知識や技術力を身につけたことをアピールできます。

もちろん、資格を所有しているだけでは、すぐにエンジニアとして最前線で働けるというわけではありません。しかし、就職や転職に関して実績として認めてくれる企業は少なくありません。

 

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基本情報技術者試験の出題範囲・難易度は?

基本情報処理技術者試験は、午前が小問形式、午後は大問形式の問題構成となっています。

午前の試験は4択のマークシート形式で出題され、テクノロジ系50問、マネジメント系10問、ストラテジ系20問からなる合計80問構成です。

以下の表で、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野の出題内容をまとめました。

テクノロジ系
大分類 中分類 問われる内容
基礎理論 基礎理論 2進数のような基数、集合、ベン図、論理演算などの基礎理論。
データ構造やアルゴリズムなどのプログラミングの制御構造など。
アルゴリズムとプログラミング
コンピュータシステム コンピュータ構成要素 コンピュータやシステムを構成している各種要素の知識。OSやファイルシステムの種類。言語処理ツールやオープソースのソフトウェアなど。電子回路や機会の制御などのハードウェアの知識
システム構成要素
ソフトウェア
ハードウェア
技術要素 ヒューマンインターフェース ヒューマンインターフェース、マルチメディア、データベース、ネットワークなどの種類と知識。情報セキュリティの管理や対策方法。
マルチメディア
データベース
ネットワーク
セキュリティ
開発技術 システム開発技術 システムやソフトウェアの要件定義、詳細設計、構築方法。ソフトウェアの開発モデルや知的財産の知識。
ソフトウェア開発管理技術
マネジメント系
大分類 中分類 問われる内容
プロジェクトマネジメント プロジェクトマネジメント プロジェクトマネジメント。プロジェクトのステークホルダーやスコープの定義、スケジュールやコストの管理など。
サービスマネジメント サービスマネジメント サービスマネジメントの要求事項やSLA。サービスの計画や設計、サービス提供のプロセス、運用方法など。
システム監査
ストラテジ系
大分類 中分類 問われる内容
システム戦略 システム戦略 情報システム戦略の意義と目的、方針と目標の設定、BPRや業務分析、クラウドコンピューティングなど。
システム企画 システム化計画の構想や基本方針、要件定義の手法や情報システム戦略との整合性など。
経営戦略 経営戦略マネジメント 競争戦略、差別化戦略、ブルーオーシャン戦略など。コアコンピタンスやM&A、マーケティング、PEST分析、SWOT分析など経営戦略全般。
技術戦略マネジメント 技術開発戦略の立案。製品や技術動向、成功事例、技術経営(MOT)、特許取得ロードマップなど。
ビジネスインダストリ ビジネスシステム、物流情報システム、医療情報システム、IoT。ECやSNSなどのe-ビジネス。個人用情報機器、産業機器など。
企業と法務 企業活動 経営管理、PDCA、経営組織の種類。コーポレートガバナンスやCSR、ヒューマンリソースなど。
法務 知的財産権、不正競争防止法。サイバーセキュリティ基本法や不正アクセス禁止法。労働関連法規など。

 

午後の試験は長文形式の問題が出題されます。2019年秋期試験までは13問中7問解答の形式でしたが、2020年春期試験より11問中5問解答の形式に変更されます。午後も、マークシートの多肢選択式です。

出題範囲は、以下のとおりです。

コンピュータシステムに関すること ソフトウェア・ハードウェア OSや処理装置、入出力装置など。
データベース データベースの種類と特徴、データベース言語(SQL)など。
ネットワーク インターネット、プロトコルなど。
情報セキュリティに関すること 情報セキュリティポリシ、マルウェア対策、個人情報保護など。
データ構造及びアルゴリズムに関すること 配列、リスト構造、グラフ、数値計算、誤差など。
ソフトウェア設計に関すること ソフトウェア要件定義、構造化設計、ヒューマンインタフェースなど。
ソフトウェア開発に関すること プログラミング(C、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフト)やテスト、デバッグなど。
マネジメントに関すること プロジェクトマネジメント プロジェクト全体計画、リスクへの対応など。
サービスマネジメント サービスマネジメントプロセス、サービスの運用など。
ストラテジに関すること システム戦略 情報システム戦略、業務プロセスの改善など。
経営戦略・企業と法務 経営戦略手法、マーケティング、企業活動など。

 

合格基準は午前、午後ともに100点満点中60点以上です。午前試験だけの合格や、午後試験だけの合格というシステムはないので注意が必要です。

合格率としては、20%~30%程度の難易度です。直近4回の合格率は、以下のとおりです。

実施時期 合格率
令和元年 秋期 28.5%
平成31年 春期 22.2%
平成30年 秋期 22.9%
平成30年 春期 28.9%

 

基本情報技術者試験の内容は、全くの初心者にとっては少し難しく感じるかもしれません。その場合は、少し難易度の下がる「ITパスポート」から受験するとよいでしょう。

ITパスポートの出題範囲は基本情報技術者試験と同じで、内容を簡単にした資格であるため、基本情報技術者試験を目指して学習している人が取得しても無駄になることはありません。

2020年春期試験からここが変わる!

基本情報技術者試験は、2020年春期試験から出題内容が大きく変わります。

以下で、一つずつ説明します。

変更点1:プログラミング言語としてPythonが追加(COBOLが廃止)

COBOLを選択する受験者数が減少していることや、教育期間で学ぶ機会も少なくなってきていることから、2020年春期からCOBOLに代わりPythonが採用されました。PythonはAI開発の分野で注目を集めているプログラミング言語です。

変更点2:午後試験が13問中7問解答から11問中5問解答へ変更

午後試験において、出題数が13問から11問へと減少し、それに合わせて必要回答数も7問から5問へと変更されます。

変更点3:アルゴリズム、プログラミング言語の配点が50点となり、午後問題の半分を占めることに

午後試験の「データ構造とアルゴリズム」と「ソフトウェア開発」の合計得点が50点となり、午後試験全体の半を占めるようになりました。

特に、ソフトウェア開発は「C」「Java」「Python」「アセンブラ言語」「表計算ソフト」の5つの区分から1問を選択して回答します。

プログラミングの実務に近い内容の出題の配点が上がることで、文系の受験者にとっては難易度が上昇したように感じられるかもしれません。配点の50%を占めることになるので、しっかりと対策することが必要です。

 

基本情報技術者試験はどれくらい勉強が必要?学習方法は?

将来、ITエンジニアを目指している人にとっては、基本情報技術者試験の合格は一つの目標と言えます。ただし、全くの初心者の場合は、まず難易度の低いITパスポート資格を受験すると良いでしょう。

すでにITパスポート合格レベルの知識がある場合、基本情報技術者試験合格に必要な勉強時間の目安は、3か月程度です。

Fill in the answer sheet in the exam with a pencil

午前試験の学習方法

基本情報技術者試験の午前問題は4択のマークシート形式です。基本情報に限らず他の区分の試験でも同様なのですが、午前の問題には過去問と設問も選択肢も全く同じ問題が出題されることがあります。

そのため対策として最も重要なのが、過去問を徹底的に繰り返すことです。過去問はIPAの公式サイトからダウンロードできるので、それを印刷して勉強しても良いのですが、これらには解説がありません。過去問を掲載している書籍やWebサイトなどで、解説を確認しながら勉強することがおすすめです。

午前問題に特化したスマホアプリなどもリリースされているので、アプリを活用してスキマ時間に1問ずつ解いていくという方法も良いでしょう。

基本情報技術者試験は試験範囲が広く、実際に問題をたくさん解くことで自分の苦手な分野などがわかってきます。弱点を把握して、次は間違えないようにテキストで知識を補強していくといった地道な学習を繰り返すことが、午前試験に合格するポイントです。

午後試験の学習方法

午後は長文形式の問題が出題されます。まずはこの長文に慣れることが、午後試験対策のポイントです。

また、2020年春期から配点が上がるプログラミング対策も重要です。プログラミング経験者であれば、得意なプログラミング言語や、すぐにマスターできそうな言語を選んで対策すれば良いでしょう。パソコンにプログラミング環境を構築し、実際に手を動かして学べば効率的です。

プログラミング未経験者や文系の受験者にとって、プログラミング言語対策はかなりハードルが高いでしょう。そのような受験者は、表計算を選択するのもひとつの手です。

また、Udemyでも基本情報技術者対策のコースが公開されています。まずはプレビューの動画を見て、講座が自分のレベルに合っていることを確認したうえで、コースを購入して学習しましょう。

 

基本情報技術者試験はSEを目指している学生や社会人にとって、登竜門となる資格です。IT企業の中には、基本情報技術者試験の合格者に対して、資格手当を支給する会社もあるくらいです。

特に、IT未経験の受験者にとっては、IT系企業で求められるスキルを一通り学ぶことができる価値のある資格だといえます。基本情報技術者試験に合格して、ITエンジニアとしてのキャリアを切り開きましょう。