近年注目されている「働きやすさ」の観点である「心理的安全性」について紹介します。心理的安全性が高いチームでは、働きやすさと高い生産性が両立できます。心理的安全性とは何か、どのようにして高めるのかを見ていきましょう。
心理的安全性とは?
心理的安全性(Psychological safety)は、1960年代から心理学の領域で研究されている概念です。企業における組織構造や効果的な人材育成を研究する中で、「自分が上司や同僚に受け入れられているか、組織の中で価値があるかという不安」を軽減できる現象・状態と定義されました。このように、新しい言葉ではありませんが、近年、企業における経営やチームマネジメントに関連して、注目が高まっています。1990年代から、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が、心理的安全性の効果について積極的に研究成果を発表しており、広く知られるようになりました。
下に、Googleトレンドにおける「心理的安全性」という検索ワードのトレンド推移を示します。2021年ころから注目が高まってきているようです。
心理的安全性が注目されるきっかけとして、Googleが行った自社における生産性向上の取り組み「プロジェクト・アリストテレス」があります。プロジェクト・アリストテレスは、Google社内に存在する数百ものチームの働き方を分析し、生産性の高いチームとそうでないチームの違いを明らかにしたものです。
プロジェクト・アリストテレスにおいて、心理的安全性はチームの生産性を左右する最も重要な因子とされています。
心理的安全性を高めるメリット
心理的安全性と生産性向上の関係を、もう少し詳しく見てみましょう。心理的安全性の担保されたチームでは、以下のようなメリットがあります。
対人関係に関する心配事がなくなり、エンゲージメントが高まる
心理的安全性が担保された組織では、メンバー同士の信頼関係が構築されているため、対人関係について心配することなく働けます。また、そのような環境で働くことで、組織や企業に対するエンゲージメントが生まれ、もっと貢献しようという意識が高まります。
従業員間のコミュニケーションが活発になる
心理的安全性が担保された組織では、リスクを恐れずに発言できるため、積極的なコミュニケーションが生まれます。様々なアイディア、知識の共有が行われ、それについて議論することで、組織全体の仕事の質が高まります。
組織全体の方向性が定まる
コミュニケーションが活発になるというのは、メンバー同士だけではなく、メンバーとマネージャー、経営層との間も同じです。様々な階層間でのコミュニケーションが活発化することで、企業や組織の目指す方向性が具体化し、共有されます。
リスクが顕在化し、対策できる
心理的安全性が担保された組織では、メンバーが自身のミスや担当作業における不具合を報告しても、自分だけが責められたり、人間性を否定されたりするようなことがありません。そのため、組織全体の便益(メリット)を意識し、少しのリスクでも気軽に報告できるようになります。リスクが拡大し、トラブルになる前に顕在化させることで、適切に対処できます。
心理的安全性を高めるには?
心理的安全性を企業・組織で高めていくにはどのようにすればよいのでしょうか。一言でいうと、「対人リスクを取り除くこと」です。前述した、Googleのプロジェクト・アリストテレスでは、心理的安全性について以下のように説明されています。
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。
経営層やマネージャー、そしてチームメンバーがお互いにどのように振る舞えば、対人リスクが低減されるのでしょうか。次の節で具体的に紹介していきます。
心理的安全性の作り方を紹介!
心理的安全性の高いチームは、メンバーの協力によって作られます。そして、常に維持し続ける努力が必要です。以下に、対人リスクを低減するためのポイント4つを紹介します。
1.上司に質問しやすい環境を作る
仕事の中で生じる対人リスクの中でも大きなものは、上司との関係です。わからないこと、判断に迷うことを質問しにくい環境では、成長は望めませんし、トラブルにつながるような事象の報告もためらってしまいます。メンバーが質問しやすいよう、上司はオープンな姿勢を心掛ける必要があります。
また、日々の会話だけでなく、1on1ミーティングなど、機会を作って全員としっかりとコミュニケーションとるようにしましょう。一方で、何でも周囲に聞いてしまう馴れ合いの状況にならないよう、まずは「自力で取り組む」、「わからない時だけ上司や同僚に聞く」という環境づくりも意識しましょう。
2.発言をする人が偏らないようにする
会議や日常でのちょっとした相談などでは、オンライン、オフライン問わず発言者が偏る傾向にあります。できるだけ、メンバー全員が1回は発言できるように会議などを運営する必要があります。
例えば、会議の本題に入る前にアイスブレイクを設けて、会話しやすい雰囲気を作ることも重要で、他にも口頭ではなく付箋やチャットに意見を書き出し、近い意見をグルーピングするラウンドロビン方式と呼ばれるやり方をとるなどの方法があります。
3.多様な意見を受け入れる
対人リスクを感じる主な要因は、「自分の存在や発言が他者に受け入れられるだろうか」という不安です。不安を低減するには、メンバーの多様な考え方を受け入れることが必要です。チーム全体で、少数意見を否定せず、できるだけ理解しようとすることで、発言しやすい環境を作りましょう。
チームとしての意思決定を求められる場合にも、できるだけ多くのメンバーの意見を聞き、合意を図ることが重要です。
4.互いに感謝の気持ちを持つ
心理的安全性を高める、最もシンプルな方法は、あいさつや感謝の気持ちを伝える、といった日々のコミュニケーションをとることです。また、メンバーが担当する業務を終えた際に、マネージャーから感謝の言葉を伝えることで、達成感や満足感が得られ、チームにおける自分の存在価値や責任感を高めることができます。
他にも感謝の気持ちをかたちにする取り組みで、サンクスカードやピアボーナスといったものがありまです。ピアボーナスは、従業員同士で感謝の気持ちをポイントとして送ったり、一定期間ごとにランキングを公表し、何らかのギフトに交換したりする福利厚生の一種です。
この記事では、近年注目されている「働きやすさ」の観点である「心理的安全性」について紹介しました。心理的安全性は、ハイパフォーマンスにもつながります。マネージャーとして、チームメンバーとして、心理的安全性を高めることを意識し、働きやすさと高い生産性を両立することを目指しましょう。
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