ブレンディッドラーニングとは?有効性と効果を高める方法を解説

ブレンディッドラーニングとは?有効性と効果を高める方法を解説

現在、企業研修の効果を高めるためのアプローチとして、ブレンディッドラーニングという手法が注目されています。この記事では、ブレンディッドラーニングの特徴から、実施するためのポイントと注意点までをトータルに紹介します。

ブレンディッドラーニングとはどんな学び方?

ブレンディッドラーニング (Blended Learning) は、集合研修やeラーニング、動画コンテンツなど、さまざまな学習方法を組み合わせた (ブレンドした) 教育手法です。それぞれの学習方法の利点を活かしつつ、欠点を他の方法でカバーすることで、効率的で効果の高い学習を実現できます。

学習方法の種類
さまざまな学習方法

ブレンディッドラーニングの形態

ブレンディッドラーニングの基本的なパターンは、eラーニングや動画コンテンツで基礎的な知識を習得し、それを踏まえた応用的・実践的な議論などのアウトプットを集合研修で行うものです。また従来の、教室 (研修会場) で知識を習得し、それを業務の中で実践するパターンの逆でもあることから、「反転授業」という言葉も使われます。

基本パターンと利点
ブレンディッドラーニングの基本パターンと利点

企業の従業員の能力開発という観点では、知識習得からアウトプットを1回で終わらせず、アウトプットの議論でさらなる理解、スキルアップが必要だと感じたトピックについて、再度eラーニングで学び、より高度な実践につなげる、というサイクルを生じさせることが理想的です。

ブレンディッドラーニングのサイクル
知識習得と実践のサイクルで成長する

ブレンディッドラーニングの有効性

企業研修においてブレンディッドラーニングを導入することは、研修を主催する企業 (人事) にも、参加する受講者 (社員) にもメリットがあります。なお、前提としてブレンディッドラーニングは、「1日では終わらない」高度なプログラムに適しています。そのため、1日や半日で知識を伝授して終わるような内容であれば、集合研修やオンライン学習のみで済ませたほうが効率的な場合もあります。

企業側のメリット

すべてのプログラムを集合研修で行う場合、前提知識の講義から始まることになり、研修期間が長くなります。それにより、外部の研修会場 (会議室) を確保したり、遠地の参加者の交通費、宿泊費の支給を負担したりと手間やコストがかかります。また、大量の教材を印刷したり、毎日の出欠管理や受講中の様子の観察したりする必要があり、主催者の作業も多くなります。

集合研修のデメリット
集合研修には無駄が多い

ブレンディッドラーニングでは、集合研修は必要最小限の期間、規模で行いますので、会場費、交通費、宿泊費を圧縮できます。また、事前知識についての受講者の理解度は、LMS (Learning Management System) などで一元的に確認できるので、教室で一人ひとりを細かく観察して、理解度を都度把握する必要もなくなります。

LMSについてより詳しく知りたい方は、「LMS(学習管理システム)とは?何ができる?導入事例とともに解説」の記事も合わせてご覧ください。

参加者のメリット

研修の参加者にもメリットが多くあります。まず、集合研修の期間が短くなるため、日程の調整がしやすくなり、移動の手間が省けます。また、人によってはすでに知っていることを、他の参加者に合わせて座学で聞くといった、無駄がなくなります。参加者がすでにオンライン学習で前提知識を身につけているため、それを踏まえたうえでグループワークや高度な議論を行うことができ、より実践的な学びを得ることができるのです。

ブレンディッドラーニングのメリット
ブレンディッドラーニングにはメリットが多い

ブレンディッドラーニングの効果を高めるには

ブレンディッドラーニングの効果を高めるための手法については、教育工学 (インストラクショナル・デザイン) の領域で長い研究の蓄積があります。

研修のデザインが成否を決める

ブレンディッドラーニングは、単にありあわせの動画コンテンツを視聴させ、それについて従業員に議論させるというものではありません。研修全体として、何を習得させたいのか、そのための知識やスキルをどのように分解し、習得するためにどのような単元が必要か、また、どのような課題に取り組ませるか、といった研修のデザインをしっかりと組み、オンライン学習の最初のトピックから集合研修の最後のプレゼンテーションまでを綿密に計画しなければなりません。

研修のデザイン
研修全体を貫くデザインが重要

フィードバック・コミュニケーションの仕組みを作る

オンライン学習のデメリットとして、受講者が孤独感を感じやすいということがあります。また、特に外部の研修会社のコンテンツを利用する場合、万人向けの一般論であることが多いので、自社もしくは自身にとって、必要な内容なのかが実感しにくい面があります。

そういった不安を取り除くために、オンライン学習の中で、経営層のメッセージや顧客の声など、「自分がこの知識を身につけなければならない理由」を理解するためのコンテンツを組み込むとよいでしょう。

また、受講者との質疑や受講者間での議論など、意見交換を行うためにLMSのチャット機能や掲示板機能を活用し、気軽に非同期的なコミュニケーションができる仕組みを用意しましょう。

研修の仕組み
自分事として捉え、モチベーションを維持する仕組みが必要

研修終了後、次のサイクルに進む仕掛けを考える

前述のように、ブレンディッドラーニングは、仕組みを取り入れた研修を1回行っただけで完結するものではなく、その結果を踏まえてさらに現在の自分やチーム、会社に足りないものを認識し、それについて学ぶサイクルを作ることが理想的です。研修が受けて終わりとならないよう、次のサイクルへの意識づけが重要です。

ブレンディッドラーニングを導入する際の注意点

企業研修において、ブレンディッドラーニングを成功させるには、事前学習の徹底が重要です。集合研修の場において意義のあるアウトプットを行い、スキルを高めるためには、事前学習で必要な知識を習得する必要があります。

特にコロナ禍の現在は、集合研修が「久々の外出の機会」であったり「同僚に会えるプチ出張」というような捉え方をされたりすることも増えています。また、研修を企画する人事なども、「同期とのコミュニケーションの機会」を目的に、スキルの担保を十分に行わずに集合研修を開催することがあります。

しかし、そのような動機で開催・参加しても、意義のある研修にはなりません。事前学習におけるテストに合格しなければ参加させないなど、研修主催者が参加者のレベルをコントロールすることが重要です。

また、集合研修のテーマも、「本当に集まって議論する意味があることか」ということを検討する必要があります。ブレンディッドラーニングが、自社の人材のどのような能力開発につながるかを、しっかりと意識して、導入の可否を決定しましょう。

 

コロナ禍の現在において、集合研修を削減するといった実務上の要請からブレンディッドラーニングに注目が集まっています。しかし、ここまで述べたように、ブレンディッドラーニングは、単に集合研修の一部をオンライン学習に置き換えることではなく、研修の効果を最大化するための教育手法です。

人事部門がブレンディッドラーニングに適した研修を企画し、全体像をデザインして、主体的に推進してこそ効果が得られます。ぜひもう一段上の人材育成を目指して、ブレンディッドラーニングを取り入れてください。