女性管理職の割合の低さは、国内における多くの企業で課題となっています。女性管理職比率を高めるためには、評価基準や制度の見直しなど企業としての取り組みが重要です。
この記事では、女性管理職を増やすためにすべきことや企業側のメリット、女性管理職に求められるスキルについて解説します。
現在の女性管理職の割合は?
帝国データバンクの調査によると、2021年の女性管理職の平均割合は8.9%で、過去最高となりました。また、2020年から女性管理職の平均割合は1.1%増加し、伸び幅も過去最大を記録しています。
ただし、政府が定める女性管理職比率30%以上の目標を達成した企業は、調査対象となった企業のうち8.6%です。女性管理職の平均割合は過去最高を更新したものの、低水準にとどまっています。
また、男性管理職の比率が多い状況が、今後も変わらないと見込んでいる企業は、全体の58.9%でした。
出典:[女性登用に対する企業の意識調査(2021年)]
女性管理職比率が増加しづらい要因
女性管理職比率が増加しづらい要因の1つに、家事や育児の負担があります。企業の育児制度は充実してきてはいるものの、いまだ家事や育児の負担は、男性よりも女性の方が大きい傾向があります。そのため、家事や育児の負担から、仕事の責任が大きい管理職を希望する女性が増えていません。
また、育児中に仕事を離れたり、時短勤務を余儀なくされたりすることも、女性管理職比率が低い要因として挙げられます。同期の男性と比べて女性が十分な経験を積めないことが、女性管理職が増加しない要因となっています。
女性管理職を増やすことで得られる企業側のメリット
女性管理職を増やすことは、男女平等な社会の実現だけでなく、企業にとっても様々なメリットがあります。女性管理職の割合を増加させることで、得られる企業側のメリットは以下の通りです。
組織に多様性が生まれ意思決定の誤りを防げる
女性管理職の割合を増やすと、組織に多様性が生まれます。様々な考え方や意見を取り入れ、意思決定の精度を高められることは、女性管理職を増やすメリットです。
同じような考え方を持った人達の集団では、意思決定に見直すべき点があっても、気づけない場合があります。誤った考えを正しいと思い込んでしまう現象は、集団浅慮やグループシンクと呼ばれ、企業に不利益をもたらすため注意が必要です。
女性管理職を増やすと、こういった意思決定におけるグループシンクを防ぐことができます。
優秀な人材の確保や流出防止
内閣府が作成した資料によれば、1980年から1995年までに生まれたミレニアル世代は、就職先の多様性を重視しています。就職先を選定する際に、企業の多様性や平等性が重要であると回答した人は男性で74%、女性で86%に上ります。
また、多様性のある組織で働いていると感じる従業員は、そうでない従業員より5年以上長期で勤続する予定と回答しました。
出典:[内閣府男女共同参画局 助成活躍で企業は強くなる]
このように多様性を重視する働き手が増えてきた近年では、女性管理職を増やすことが優秀な人材の確保や流出防止に繋がります。
職場環境の改善
働きやすい職場を実現するためには、悩みや問題を相談しやすい環境作りが重要です。しかし、内容によっては女性従業員が男性上司に相談しにくい場合もあります。
女性管理職が増えると、男性上司には言いにくい女性従業員の悩みを相談しやすい環境がうまれやすく、女性管理職が部下の悩みを把握したことをきっかけに、より働きやすい制度作りが進む可能性があり、男女ともに安心して働ける職場作りに繋がります。
女性管理職に向いている人とは?
女性管理職として企業で活躍する人には、いくつかの特徴があります。
まず、部下と上司の間で調整力を発揮できる人は、女性管理職に適任です。部下への気配りができ、上司からの指示をうまく伝える調整力がある人は、リーダーとして活躍できます。
また、企業内部だけでなく、外部の人とも円滑にやり取りできる人も女性管理職に向いています。相手の意見や要望を正確に理解し、良好な人間関係を築くコミュニケーション能力が必要です。
さらに、自分の意見をはっきり主張できる人は、女性管理職に向いています。管理職になると、会議などで意見を求められる機会も増えるため、思考を整理してはっきりと伝えられる能力が必要です。
女性管理職に求められるスキル
管理職は男女の違いを問わず、基本的に同じスキルが求められます。
管理職には、部下の個性を見極め、適切な仕事を任せるスキルが必要です。得意分野や仕事の進め方などは人によって異なります。管理職が部下の特徴を把握した上で仕事を任せると、チームの生産性を高めることが可能です。
また、部下の相談に応じるスキルも管理職に必要な能力として挙げられます。仕事の進め方に関する相談だけでなく、将来のキャリアなどに関する相談にも応じられるスキルが必要です。単に自分の意見や解決策を提示するだけでなく、部下の抱える不安を引き出せるコミュニケーション能力が求められます。
女性管理職を増やすために企業がすべきこと
女性管理職を増やすためには、企業側の取り組みが重要です。女性が働きやすい環境作りや、管理職になることに対する不安の軽減などが、主な取り組みとして挙げられます。
女性管理職を増やすために企業がすべきことは以下の通りです。
昇進の基準を公平にする
昇進の基準を性別や年齢を問わず公平なものにすることも、女性管理職を増やす取り組みの1つです。
人事評価が男女で異なっていたり、基準が不明確だったりすると、管理職にキャリアアップするモチベーションが上がりません。管理職への昇進を促すには、従業員の能力や実績、目標達成度などを公平に評価するための基準が求められます。
そのためには、男女問わずキャリアアップできる明確な基準を設け、評価や面談を定期的に行う必要があります。
管理職になるための研修を設ける
管理職になるための研修を設け、女性従業員が参加できるようにすることも効果的です。
管理職には、自社製品やサービスに対する理解だけでなく、リーダーシップやマネジメントに関するスキルも求められます。また、自社の経営方針や事業計画への理解も必要です。
管理職に必要なスキルや知識について学べる研修を用意すると、管理職になることへの不安が軽減できます。
産休制度や育休制度などを充実させる
産休・育休制度をはじめ、テレワークや時短勤務などの制度を充実させることは、女性管理職の増加に繋がります。
柔軟な働き方ができる環境を作ることで、仕事とプライベートの両立させやすくなり、プライベートが忙しい女性であっても職場で活躍することができるようになります。
ロールモデルとなる人材を育成する
女性管理職のロールモデルとなる人材が社内にいると、女性従業員がキャリアアップを前向きに検討しやすくなります。
女性従業員が管理職を目指したくなるような人物像を設定し、ロールモデルとなる人材を育成すると、女性が管理職として活躍する具体的なイメージが描きやすくなるでしょう。今までキャリアアップをあきらめていた従業員も、前向きにキャリアアップを検討するようになります。
国内における女性管理職の割合は上がっているものの、政府が定めた目標と比べるといまだ低水準です。女性管理職が増えにくい要因として、育児や家事の女性の負担が男性より大きいことなどが挙げられます。
女性管理職を増やすことは、男女平等社会の実現だけでなく、企業の人材確保や職場環境の改善などにも効果的です。企業の多様性を高め、より良い組織を作りたい場合、職場環境の整備やロールモデルの育成などに取り組むことが大切です。
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