社員・人材の持つ才能を引き出し、それを有効に仕事に生かしていくことは、企業の経営者や指導者、人材育成の担当者に求められる能力であるといえます。
この記事では、人材育成で注目を集める「タレントマネジメント」を解説します。
タレントマネジメントとは? 企業で注目される人材育成手法
「タレントマネジメント」とは、社員の持つ能力を把握・管理し、適切な人材配置や人材育成に役立てることです。日本では、2000年代後半ごろから注目され始めました。
社員は、一人ひとり異なる個性や能力を持っています。その特性と能力、スキルを把握することは、より高いパフォーマンスを発揮できる部門への「適材適所」な配置や、より効率の良い人材育成、ひいては企業全体の成果につながります。
また、社員自身も「自分が得意な分野で働ける」「自分を理解してくれる指導者の下で働ける」ことから、モチベーションを保って働けるでしょう。
「タレント」の意味は? 才能をマネジメントする手法?
「タレント」とは、英語の「talent」に由来した言葉です。日本では「芸能人」などの意味で使われることの多い単語ですが、英語では「才能(また、才能を持つ人自身)」「素質」という言葉を持ちます。
このため、「タレントマネジメント」には、「個々人の才能を理解し、そのパフォーマンスを最大限に生かすこと」の意味があります。
タレントマネジメントは社員すべてに対して行うのが理想的ですが、特定の社員のみを対象として行われることもあります。ここで言う「特定の社員」とは、将来のマネージャーやリーダー候補者、幹部候補者というのが通例です。なお、この「特定の人材にしぼった育成」は、特に「排他的アプローチ」とも呼ばれます。
タレントマネジメントが注目される背景とメリットとは?
タレントマネジメントの考え方が注目されるようになった背景には、さまざまな社会的な変化があります。 ここでは、3つのポイントをみていきましょう。
働き方改革や業務効率化
1つ目のポイントは、働き方改革や業務効率化の流れが、人材育成の分野にも影響を与えたことです。
現代ではワークライフバランスを保つために、無駄な作業を削減し、仕事の成果を落とさずに効率よく短時間で行うことが求められています。それに伴って、ITサービスの導入などにより、従来は手作業で行われていた作業が、機械によって済ませられる場合も増えてきました。
このような流れを受けて、人材育成の分野においても、計画性を持った体制や、教育の成果を把握できるシステムが求められるようになってきました。
労働市場の流動化
2つ目のポイントは、労働市場の流動化です。
旧来の日本型雇用では「終身雇用」が行われていたように、これまでは1つの会社で定年まで働くというケースが多数派を占めていました。そのような雇用形態では、ジョブローテーションや転勤を通し、数十年間をかけて人材育成を行えました。
しかし、現在では転職する人が増え、企業にとっては、せっかくコストと時間をかけて育て上げた人材であっても、数年で流出してしまうということが課題となっています。
そこで、短期間で人材を育成するため、もともと個人にある素質を伸ばすタレントマネジメントの考え方が受け入れられているのです。 また、個人をモチベーションの高い分野に配置することで優秀な人材の流出を防ぐという意味でも、タレントマネジメントは効果的だといえます。
社会の変化の加速
3つ目のポイントは、社会の変化が加速していることです。
グローバル化、AIの台頭、少子高齢化、天災など、これまでの社会システムや価値観を大きく変えるような出来事が次々と起こる中で、企業においても、新しい事業や取り組みに対応できる人材を確保しなければならない局面が増えています。
これにより、企業は社員の持つスキルや知識を把握して、組織全体で見通しのある人材育成を行い、より適性を持つ人材を配置する必要が増しました。
タレントマネジメントを導入する注意点とは?
タレントマネジメントは効率的かつ効果的な人材育成に役立ち、社員のモチベーションを上げることから、会社の利益拡大にもつながります。
ただし、タレントマネジメントを導入する際には注意点もあります。
以下で、3つほどみていきましょう。
事業計画に合わせて「必要な人材像」を明確にする
タレントマネジメントでは社員の素質や個性、経験を考慮して人材育成を進めます。しかし、育成する資質や能力が業務の内容と合致していなければ、会社としての利益につなげることが難しくなります。
短期的な事業の計画だけでなく、中長期的な目標も踏まえたうえで「必要な人材」「社員に備えてほしいスキル」「伸ばしたい能力」などを定め、計画的に導入する必要があります。
また、それらをなるべく具体的に書きだすことも重要です。
調査、評価の項目とタレントマネジメントを一致させる
タレントマネジメントは「社員の才能を把握すること」から始まります。ただし、上でも触れたように、タレントマネジメントでは人材育成目標を定め、目標へ向けて計画的な取り組みを行っていきます。
そのため、従来の人事評価に使用する調査や評価の項目だけではなく、タレントマネジメントの観点から重要な指標となる項目を定め、それらの項目を対象となる社員が満たしているかどうかという調査や評価を行う必要があります。
組織全体でタレントマネジメントを理解する
タレントマネジメントでは、人事担当者が求める人材像のほかに、経営層、各部署が求める人材についても考慮しなければなりません。
また、先述した人事評価や調査、後述するタレントマネジメントシステムの導入について社内の協力を得るためにも、組織全体での理解が重要です。
タレントマネジメントを会社に導入する方法
タレントマネジメントを会社に導入する際は、以下の流れで進めていきます。
- 現状分析
- 人材の選定
- 人材の採用/配置/育成
- 評価
- システムの見直しなどを行う
タレントマネジメントシステムの導入も効果的
タレントマネジメントは人材育成の考え方のひとつであるため、社内で計画や方法を確立し、運用していくことも可能です。ただし、より効率的かつ効果的に行うためには、タレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。
タレントマネジメントシステムは、おもに一般的な人材管理システムの機能のほかに、スキルや経験、異動、研修の受講歴などを一元管理できる機能を持ったシステムのことを指します。そのほかにも、評価管理、育成計画管理、社員へのアンケートができるものなど、タレントマネジメントを行うために役立ちます。
オンライン学習ツールならデータに基づいた人材育成が可能
タレントマネジメントシステムには、さまざまな種類があり、それぞれの特色とメリットがあります。
社員教育やスキルアップに効果的なシステムのひとつとして、法人向けオンライン学習ツールの「Udemy for Business」が挙げられます。
Udemy for Businessは、質の高い講師陣やプログラミングなどの専門分野も充実した講座で人気の「Udemy」を、法人内で「定額学び放題」というプランです。
さらに、人材育成に役立つ以下のようなメリットを備えています。
- 約4,000講座のなかから、現場のニーズに合わせた講座をタイムリーに提供できる
- 実務直結型の講座が多く、短期視点での育成に特に強い力を発揮する
- 実務データを一元管理できる
- API/SSOも整備しているため、あらゆるプラットフォームとの接続が可能である
タレントマネジメントは、これからの人材育成において非常に重要な考え方だといえます。便利なタレントマネジメントシステムも数多くあるため、この記事を参考に、会社や目的に合ったシステムを選び、活用しましょう。
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