デジタル・ガバメント実行計画とは、2018年に閣議決定されたプロジェクトで、デジタル社会の到来に向け、様々な行政サービスのデジタル化やデジタルサービスの普及などの方針が示されています。
2022年3月現在、まさにデジタル・ガバメント実行計画の実行期間中であり、様々な施策が進められています。
この記事では、デジタル・ガバメント実行計画の概要、推進事例、今後などについて解説します。
デジタル・ガバメント実行計画とは?
デジタル・ガバメント実行計画とは、2018年(平成30年)1月に閣議決定されたもので、3度に渡り改定(2022年3月時点)されつつ、推進・実行されている日本政府のプロジェクトです。
- 2018年1月16日 :初版(eガバメント閣僚会議決定)
- 2018年7月20日 :改定(デジタル・ガバメント閣僚会議決)
- 2019年12月20日 :改定(閣議決定)
- 2020年12月25日 :改定(閣議決定)
「デジタル・ガバメント実行計画」では、これまでの施策と、2021年(令和3年)9月1日に設置されたデジタル庁を見据えた、デジタル活用の方針について示されています。
「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」
引用:デジタル庁 デジタル・ガバメント実行計画
国や地方の行政サービスを率先してデジタル化を進めることで、社会全体のデジタル化を促進させ、デジタル・トランスフォーメーションを実現するのが、この計画の目標です。
単に情報システムを構築し、手続きをオンライン化するだけでなく、『利用者から見て一連のサービス全体が、「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な行政サービス』を目指しており、これを通じて社会課題の解決、経済成長の一助となるように、施策を練っています。
このために、次に解説する「サービス設計12箇条」を掲げています。
サービス設計12箇条
デジタル・ガバメント実行計画では『「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な(行政)サービス』を目指すことが、非常に意識されています。
これを実現するために、「利用者中心の行政サービス」を提供するのに必要となるノウハウとして、以下の「サービス設計12箇条」を設定しています。
<サービス設計 12 箇条>
- 第1条 利用者のニーズから出発する
様々な立場の利用者を想定し、それぞれの視点で必要なサービスを考える。
さらに、サービスを提供する職員もサービス利用者として、運用しやすく、利用しやすいサービスを提供する。
- 第2条 事実を詳細に把握する
思い込みや仮説ではなく、データや事実に基づいて検討し、サービスを改善する。
- 第3条 エンドツーエンドで考える
ニーズ分析では、個々のサービスや手続きではなく、他の行政機関・民間企業が担う、サービスを含めた一連の流れとして考える
- 第4条 全ての関係者に気を配る
利用者だけでなく、全ての関係者が利益を得られるように考える。
また、デジタル機器が扱えない人でも、サービスを享受できるようにする。
- 第5条 サービスはシンプルにする
デジタル技術に明るくない人や、初めて利用する人などでも理解しやすいよう、シンプルに設計する。
- 第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
サービスを設計する際や、既存のサービスの改善のために、セキュリティ対策を十分に行った上で、IoT、ITの導入を積極的に検討する。
- 第7条 利用者の日常体験に溶け込む
利用者が普段から利用するサービスや、プラットフォームを積極的に利用するなど、利用者が利用しやすいように心がける。
- 第8条 自分で作りすぎない
行政自らが作るべきシステムかを考え、可能なら既存のシステムの再利用や民間サービス利用する。
また情報システム設計の際にも、拡張性や流用性の高いシステム構築を心がける。
- 第9条 オープンにサービスを作る
サービスの設計では、関係者や利用者の意見を取り込み、提供状況や品質など、可能な限り公開する。
- 第10条 何度も繰り返す
サービスの提供を開始しても、利用者や関係者から意見を聞き、常に改善を図る。
- 第11条 一遍にやらず、一貫してやる
プロジェクトの全体像を把握しつつ、優先順位や実現可能性を考慮して、改善・軌道修正を重ねて段階的に実施する。
- 第12条 情報システムではなくサービスを作る
サービスの向上を図ることが第一であり、利便性を追求する。
全て情報システム化することに固執しない。
「デジタル庁デジタル・ガバメント実行計画 」の「サービス設計12箇条」より引用。
デジタル・ガバメント実行計画が定める期間
2020年閣議決定の「デジタル・ガバメント実行計画」では、計画期間を2020年12月25日から2026年(令和8年)3月31日までです。
そのなかで、2021年9月1日にはデジタル社会の形成に向け、デジタル庁が発足され、その在り方も含めて、改善されることが期待されます。
デジタル・ガバメントを推進するデジタル庁
デジタル庁は、国・地方行政のデジタル化や、デジタル・トランスフォーメーションの推進などを目的として設置されました。
デジタル庁は、以下の3つの政策分野が掲げられています。
「デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及」
マイナンバー(個人番号)制度の普及や、GビズID、電子署名などの法整備、政府共通のクラウド環境の整備、サーバーセキュリティの強化といった業務を指します。
「国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現」
「マイポータル」や「ワンストップサービス」といった政府業務、各種行政手続きのデジタル化、政府ウェブサイトの共通基盤の構築などのことです。
デジタル庁は新型コロナワクチン接種証明アプリなど、アプリの提供なども担っています。
国等の情報システムの統括・監理
民間とも連携して、行政サービスの効率化、改革を進めています。
デジタル・ガバメントの推進実例をご紹介!
デジタル・ガバメント実行計画が閣議決定され、多数の行政サービスのデジタル化が進められてきました。
ここからは、デジタル・ガバメント実行計画で推進されたプロジェクトの実例をご紹介します。
マイナンバーカードの普及
デジタル・ガバメント実行計画では「マイナンバーカードの普及拡大が社会全体のデジタル化のカギを握っている」ため「マイナンバーカードの普及に全力で取り組む」としています。
2022年2月時点でマイナンバーカードの普及率は41%に達しており、2020年ごろから普及率の向上が顕著になっています。
これはマイナポイント事業が一因となっていると考えられます。
行政機関のクラウドサービス利用の徹底
従来の行政機関は、セキュリティ対策や移行リスクから、クラウドサービスの利用に消極的でした。
ですが、社会全体のクラウドの普及などの背景から、2018年6月に「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を策定し、行政機関でもクラウドサービスを積極的に利用する方針を固めました。
これのため、政府情報システムの基盤となるガバメントクラウド(Gov-Cloud)を整備し、早期に運用を開始するとしています。
2021年10月26日には、ガバメントクラウドの対象となるクラウドサービスが決定されています。
情報セキュリティ対策・個人情報保護等
2018年7月25日に、サイバーセキュリティ戦略本部が「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一 基準群」を決定しました。
この統一基準と個人情報保護法の遵守、非常時の業務継続性を確保するための対策を講ずることが、デジタル・ガバメント実行計画に記されています。
デジタル庁では、セキュリティのプロフェッショナル人材の中途採用に取り組んでいます。
デジタル・ガバメントの今後の見通し
デジタル・ガバメント技術検討会議の「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン(2020年3月31日)」において、2030年の行政サービスのあり方や方向性が示されています。
まとめると、以下のような5つの要素の達成を目標に掲げています。
国民、事業者にとって快適なサービス
一人一人の時間や都合に合わせたサービスの提供や、申請主義から申請不要の「ノンストップサービス」への転換、民間企業との協業、国際化への対応など
行政サービスの担い手が活躍できる環境
今までにないサービスを提供できるように、行政職員がサービスの担い手として多様化してゆく。また、行政職員が働きやすく、ライフスタイルに合わせた働き方ができるように改革を進める。
効率的で効果的な行政サービス実現
変化の早いデジタル社会に対応できるように、サービスの改革も早く柔軟にする。縦割りではなく、共通の情報システムは活用し、足りない部分を保管する形式にする。効率性とセキュリティの確保。
行政サービス実現のためのプロフェッショナルチーム
迅速に柔軟に対応できるように、デジタル人材の多様化を目指し、相互に協力して問題解決に取り組む。
インクルーシブな社会実現に向けた視点
デジタル技術に消極的な国民を、取り残さないようなサポート体制を整備する。また、これまでアナログで対応できなかった人へのサービス提供を実現できる可能性について検討する。
デジタル・ガバメント実行計画について解説しました。デジタル・ガバメント実行計画期間には、デジタル庁も新設され、行政サービスのデジタル化、デジタルサービスの普及などの改革が進められています。
これにより、行政手続きのデジタル化や効率化だけでなく、社会全体のDX推進が期待されます。
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