DXに欠かせない?ジョブ型人事制度のメリット・デメリットを解説
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  • 2021/10/05

DXに欠かせない?ジョブ型人事制度のメリット・デメリットを解説

ジョブ型人事制度とは、ジョブディスクリプションが明確で、職務が限定された雇用形態と、それに基づく採用、人材配置、評価の仕組みです。この記事では、企業がDXを推進し、コロナ禍でさらに成長するために必要なジョブ型人事制度の概要と、メリット・デメリットをご紹介します。

ジョブ型人事制度とは?

ジョブ型人事制度とは、ジョブディスクリプション (履行すべき職務の内容、範囲) が明確で、職務が限定された雇用形態と、それに基づく採用、人材配置、評価の仕組みです。欧米においては一般的な制度で、日本でも2013年に内閣府の規制改革会議において「正社員改革」の一環として「ジョブ型正社員を増やす」ことが提言されています。
参考: 内閣府 規制改革会議 雇用ワーキング・グループ報告書

なお、中途採用においては、もともと業務経験やスキルを明示して募集・応募するため、ジョブ型が定着しているとも言えます。しかし、入社後の評価や異動は従来のメンバーシップ型に基づいて行われるなど、一貫性がないことも多くあります。

ジョブディスクリプションとは?

ジョブディスクリプション (JD) は、担当する業務内容や範囲、必要なスキルと求められるレベルなどがまとめられた書類です。ジョブ型人事制度を導入した企業ではJDに基づいて採用活動を行い、社員の成果評価もJDの内容をベースに行います。

メンバーシップ型人事制度との違いは?

日本企業においては、従来ジョブ型ではなく、メンバーシップ型の採用・人事制度が主流でした。メンバーシップ型とは、特に新卒採用時に、業務内容やスキルレベルを明確に定義せず、面接やグループワークなどを通じて、「人となり」を評価して採用するやり方です。一括採用し、入社後の教育やジョブローテーションを通じて育成していく、という終身雇用が前提となった仕組みです。

一般に、ジョブ型人事制度を導入した企業では、求められるスキルもビジネスの状況によって変わるため、人材の入れ替わりが多く、その時必要なスキルを有しているかが評価基準になります。一方、メンバーシップ型の制度を維持する企業では、新卒から定年まで同じ会社で働き、年功序列型の社歴=給与というケースが多くなります。

終身雇用前提の仕組み

 

DXとジョブ型人事制度

近年、大企業を中心にDX (デジタル・トランスフォーメーション) の重要性が高まっています。DXとは、デジタル技術を活用した業務改革や、新規ビジネスの創出の取り組みで、特に昨今のコロナ禍により、対面と書類をビジネスの基盤としていた企業では、DXに取り組まざるを得ない状況になっています。

DXを推進するには、高度なスキルを持った専門人材が必要です。人材を外部から採用する場合、自社のDXを実現するために行って欲しい業務、つまりJDを明確に定義し、募集する必要があります。また、獲得した人材を適切に評価するためにもJDは有効であるため、DXの推進に伴って採用だけでなく人事制度全般をジョブ型に移行する企業も増えています。

ジョブ型人事制度が注目される背景

また、DX領域に限らず、総合職やバックオフィスにおいてもジョブ型の採用・評価が注目されています。その理由は以下のようなものが挙げられます。

リモートワークで業務内容と成果が明確化された

コロナ禍において、リモートワークが一気に進展しました。その結果、「どのような業務をするか、どの程度達成できたか」がはっきりとわかるようになりました。誰の生産性が高く、誰が低いかが明確化されたことで、年次やポジションによらず、具体的な成果に応じた評価が可能になりました。

人材の専門性を高め、企業の競争力を強化できる

既存ビジネスの強化や、新規ビジネスの創出には優れたスキルを持った人材が不可欠です。ジョブ型人事制度を導入した企業では、スキル要件を満たした優秀な人材だけが残ります。そのため、企業の競争力が高まります。

不足する専門人材を獲得するには業務内容の明確化が必要

AIやIoT、グローバルビジネスなど専門的な領域について、高いスキルを有した人材は多くありません。そのような人材を獲得するためには、JDを明確化し、アピールすることが重要です。曖昧な求人情報では、高度な人材の目に触れることはありません。

年功序列のメンバーシップ型では若手の高度人材を獲得できない

デジタル技術については、一般的に若い人材のほうが高度なスキルを有しています。メンバーシップ型の企業では、優れたスキルを持っていても、社歴に沿った給与で働くことになり、不満が高まります。結果として、自分を必要としてくれるジョブ型の企業に移ることになります。

実際に、富士通やNECなどのIT大手では、新卒でも高度なスキルを有する人材を1000万円の年俸で募集するなど、若い高度人材を獲得するためのジョブ型の採用が進んでいます。

若い高度人材の採用

 

ジョブ型人事制度のメリット・デメリットを紹介!

ここまで、DXを推進するためにはジョブ型への転換が有効であると述べてきましたが、メリット・デメリットを整理しておきましょう。

ジョブ型人事制度のメリット

  • JDが明確なので、採用時にミスマッチが起こりにくい
  • スキルが評価される実力主義なので、社員のモチベーションにつながる
  • スキルを磨いていくことができるので、従業員の専門性が高まり、競争力につながる
  • 人材の配置と給与に無駄がなくなり、経営が効率化する

ジョブ型人事制度のデメリット

  • JDには業務内容だけでなく勤務地なども明示するため、柔軟な人員配置が難しい
  • 従業員がスキルを発揮する機会がないと感じたら、早々に離職する可能性がある
  • JDの定義と見直し、成果評価と給与の設定など、人事制度の運用が複雑になる
  • 全社員に一律の研修を実施する意味がなくなるため、スキルアップは個人にゆだねられ、企業はそれをサポートすることになる
  • 全職種で網羅的なJDを作成する負荷が高い

 

ジョブ型人事制度は求職者にもメリットがある?

ここまで、企業のDX推進や経営効率化にジョブ型への転換が必要であると述べてきましたが、転職やキャリアアップを目指す人にもジョブ型の企業は魅力的です。

スキルと業務内容が明確なので、自分が専門性を有し、さらに高めていきたい領域に集中して取り組むことができます。また、スキルで評価されるので、優れた人材は年齢や社歴に関係なく、高い報酬を得ることができます。そして、合意のないジョブローテーションや転勤などがありません。

このような利点がありますので、キャリアアップを考えている方は、興味のある企業がジョブ型人事制度を導入しているかを調べてみるのもよいでしょう。

納得のいく働き方

この記事では、ジョブ型人事制度の概要と、そのメリット・デメリットを紹介しました。企業がDXを推進していくためにジョブ型への転換はメリットがあるといえるでしょう。また、従業員や求職者も、「自分は何ができるのか」を明確にし、スキルを磨いていくことがより良いポジションを得るために必要です。

ジョブ型の企業においては、集合型の新卒研修や全社一斉研修の重要性が低下し、個々人のスキルやキャリアプランに合わせた教育を提供していくことが必要になります。

ジョブ型人事制度への転換を図り、人材育成の仕組みを変革した事例として「IT企業からDX企業への転換――。富士通グループが取り組む人材育成とは?」をぜひご参照ください。