ビッグデータや機械学習を活用したビジネスの普及に伴い、大規模なデータを扱えるデータサイエンティストの需要が高まっています。データサイエンティストは、今後も需要が伸びていくと考えられている職種であり、スキルを修得すれば年収アップが期待できます。
ここではデータサイエンティストの仕事内容と求められるスキル、おすすめの資格について紹介します。
公開日:2021年7月21日
INDEX
データサイエンティストの資格を知る前に:そもそもデータサイエンティストって何?
データサイエンティストとは、大量のデータを収集・分析する人のことで、比較的新しい職業です。データの収集、管理、仮設検証、結果報告などを行い、情報をビジネスなどで役立てる「データ」として整えることが主な業務です。
最近では企業の「ビッグデータ」への関心も高く、データを専門的に扱うデータサイエンティストの需要も拡大しています。
データサイエンティストは、データの処理を専門に行う職業であるという点で、一般的な「エンジニア」とは異なります。データサイエンティストになるために必要となる資格はありませんが、スキルアップや、スキルを保有していることを証明するために、いくつかの資格を取得することもおすすめです。
まずは、データサイエンティストの具体的な仕事内容や年収を紹介した上で、おすすめの資格についてもご紹介しましょう。
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データサイエンティストの仕事内容は「デ―タサイエンス」という学問に基づいています。データサイエンスとは、データ分析や、その分析手法に関する学問のことです。
詳しくは「【データサイエンス入門】必要なスキルや資格は?」をご覧ください。
データサイエンティストは新しい仕事であるため、仕事内容は会社によってまちまちです。しかし、どのような会社でも、基本的な業務の流れは以下の通りです。
- データの収集
必要となるデータを収集し、データベースに保存する。 - データを利用しやすく加工
収集されたデータを利用しやすいように、不要な部分を取り除くなどの加工をする。 - データを実際に集計・分析
ビジネスに活かしやすいように、データをさまざまな視点から集計・分析する。 - 整理、レポート化
分析されたデータを整理し、レポートを作成して報告する。
これらの作業に先立ち、データから明らかにしたいことなどの要望をヒアリングする要件定義段階を設けることもあります。
また、データ分析の結果を踏まえた改善策の提案や、データを今後も継続して使えるようにするために、企業のIT部門などとの連携も行います。
さて、気になるデータサイエンティストの年収ですが、こちらも会社によって異なります。
パーソルキャリアが調査した「平均年収ランキング 最新版」によると、データサイエンティストの平均年収は「516万円」であるとされています。こちらは、あくまで平均年収ですが、中には年収1,000万円を超えるデータサイエンティストもいるようです。
データサイエンティストの資格選び。求められるスキルから選ぼう
データサイエンティストに必要とされる知識やスキルを7つ紹介します。
- IT技術・プログラミングスキル
- データの分析手法に関する知識
- データ分析ソフトウェアに関する知識・スキル
- データベースに関する知識・スキル
- 機械学習に関する知識
- ビジネスに関する知識・スキル
- データ理解力
IT技術プログラミングスキル
データの分析基盤として用いられるPython、R言語、Ruby、SQLなどのプログラミング言語のうち、1つ以上の言語のスキルが求められます。各言語の詳細については、以下のページをご覧ください。
- Python:Pythonとは?何に使えるの?Pythonの特徴や使い道を詳しく解説!
- R言語:【R言語入門】統計学に必須な”R言語”について1から解説!
- Ruby:Rubyとは?初心者向けプログラミング体験もできる記事!
データの分析手法に関する知識
データマイニングや統計学(統計処理)に関する知識です。データマイニングとは、統計学を使って大量の情報を分析する技術のことです。データマイニングや統計学の詳細については以下のページをご覧ください。
データ分析ソフトウェアに関する知識・スキル
データ分析を専門に行うソフトウェアに関する知識・スキルも必要です。例えば、Excel、R、SPSS、Tableauなどのスキルです。
- Excel
ご存じの通り、マイクロソフト社による、データの計算、分析、グラフ作成などの定番ソフトウェアです。 - R
オープンソースの統計処理のための計算やグラフ作成の言語・環境を指します。 - SPSS
IBMが販売している統計解析ソフトウェアです。プログラミングを必要としない操作性で、簡単に統計分析を実行できます。 - Tableau
タブローソフトウェア社が販売するBI(ビジネスインテリジェンス)に特化したデータの可視化ツールです。データ分析の専門知識がなくても、マウス操作で簡単にデータ分析できるソフトウェアです。
データベースに関する知識・スキル
データサイエンティストには、大規模なデータ処理に使われる、HadoopやSparkなどの知識・スキルも求められます。
- Hadoop
大規模なデータに対して、分散処理技術を活用して蓄積、分析するオープンソースのミドルウェアです。 - Spark
分散処理技術を活用する点ではHadoopと同様ですが、データをリアルタイムで高速に処理できます。
機械学習に関する知識
データサイエンティストには、AI開発に欠かせない「機械学習」に関する知識も求められます。
機械学習については、「【機械学習とは?】種類別に簡単にわかりやすく紹介!ディープラーニングとの違いやDQNについても解説!」で詳しく解説しています。
ビジネスに関する知識・スキル
ビジネスモデルや経営戦略に対する理解や、レポートを作成して分析結果をクライアントに正確に伝えるためのコミュニケーション能力も必要不可欠です。
データ理解力
データサイエンティストには、収集したデータが示す内容を読み解き、ビジネスの課題を読み解くデータ理解力も求められます。
単にデータを処理して提示するだけでなく、改善するべきポイントや、これまでになかったアイデアを見出すスキルが必須です。
データサイエンティストの勉強におすすめの資格15選
データサイエンティストになるための必須の資格があるわけではありませんが、転職などでスキルを証明するためや、スキルアップ・勉強の目安として資格を取得するのもおすすめです。
ここでは、最新の資格も含めた15個を簡単に紹介します。
データサイエンス系資格試験
- データサイエンス協会:データサイエンティスト検定
データサイエンティスト検定は、一般社団法人データサイエンティスト協会が運営する資格試験です。2021年秋からの開始を予定しています。
データサイエンティスト検定の対象者は、データサイエンスの初心者やデータサイエンティストを目指すビジネスパーソンなどです。データサイエンス分野だけでなく、数理、AIに関する知識も求められます。
- 統計検定1級~4級
統計検定は、一般財団法人統計質保証推進協会が実施している検定です。4級から1級までありますが、データサイエンティストには準1級程度の知識が必要です。
準1級は大学で学ぶ基礎的な内容からさらに発展して、応用的な統計学の諸手法の取得することを目的としています。2019年6月16日に実施された準1級試験の合格率は21.0%でした。
- 統計検定:データサイエンス試験 基礎・発展・エキスパート
「統計検定 データサイエンス基礎」「統計検定 データサイエンス発展」「統計検定 データサイエンスエキスパート」の3つの検定は、2021年7月時点で試験配信開始の準備中です。統計検定と同じ、一般財団法人統計質保証推進協会が実施を進めており、コンピューターを利用するCBTという試験方式を用いて、具体的なデータの読み取りや解析などの能力を評価・認証します。
「データサイエンス基礎」は大学入試レベル、「データサイエンス発展」は大学教養レベル、「データサイエンスエキスパート」は大学専門レベルの内容となっています。これらは2021年以降に試験が開始される予定です。
- 人工知能プロジェクトマネージャー資格試験 新技術応用推進基盤
一般社団法人新技術応用推進基盤が運営する、人工知能プロジェクトマネージャー資格試験は、AIのビジネス活用を推進するリーダー層を対象とした試験です。
AIに関する知識やプログラミング技術だけでなく、データの所有権などの法律分野の知識も必要となります。
- AI実装検定
AI実装検定は、株式会社EQUATIONが運営する、画像分類のディープラーニング分野に特化した試験です。AIに興味がある人や、より本格的にAIを活用したい人が対象となっています。
画像分類のディープラーニングに関する数学やプログラミング、AI実装に関する基礎理論の知識が必要です。
- JDLA G検定・E資格
一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施している、機械学習や深層学習(ディープラーニング)の知識・技能を有しているか確認するための試験です。
試験は「G検定」と「E資格」の2つに区分されています。G検定は「ジェネラリスト」のための試験であり、ディープラーニングの基礎知識が問われます。一方、E資格は「エンジニア」のための試験であり、ディープラーニングの理論を理解し、実装する能力が問われる試験となっています。G検定の合格率は60%から70%程度、E資格の合格率は60%程度です。
G検定については「G検定(ジェネラリスト検定)とは?概要から試験対策まで」で詳しく解説していますので、ご覧ください。
- Python3エンジニア認定基礎試験・認定データ分析試験
一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営している、プログラミング言語Pythonを利用するデータサイエンティスト向けの試験です。Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法が問われます。
「Python3エンジニア認定基礎試験」は、Pythonの基礎的な文法について出題されます。詳しくは「Pythonの資格「Python 3 エンジニア認定試験」はどんな資格?海外の資格も紹介!」をご覧ください。
「Python3エンジニア認定データ分析試験」は、Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法について出題されます。
- 統計士・データ解析士
一般財団法人実務教育研究所が開講している講座を修了することで、「統計士」と「データ解析士」の資格を取得できます。「統計士」の取得には「現代統計実務講座」を修了し、「データ解析士」の取得には「多変量解析実務講座」を修了する必要があります。
現代統計実務講座は、統計を基礎から体系的に理解し、統計的手法を身に付けたい人向けの講座です。一方、多変量解析実務講座は、統計の基礎知識のある人で、統計的技法を仕事に活用したい人を対象としています。
- アクチュアリー資格
アクチュアリー資格は、公益社団法人日本アクチュアリー会が運営する資格試験です。
アクチュアリーとは、統計学や確率論などの手法を用いて、ビジネス分野におけるリスク評価やデータ分析を行う職業を表します。保険や会計、投資分野で役立つ知識を学びたい人、仕事で扱っている人がアクチュアリー資格の対象です。
アクチュアリー資格の試験では、経済や会計、保険に関する数理モデルなどの知識が求められます。
- 画像処理エンジニア検定
画像処理エンジニア検定は、公益財団法人画像情報教育振興協会が運営する資格試験です。対象者はエンジニアやプログラマーなどで、資格の取得により画像処理に関する知識とスキルが証明できます。
データサイエンティストの中でも、特に画像処理の分野で活躍する人にとって、画像処理エンジニア検定は有用な資格です。試験ではデジタル画像の基礎知識や、画像処理システムに対する高度な理解などが求められます。
データ分析ソフトウェア関連資格
- Microsoft Power BI
Microsoft社が開発するデータ分析ソフト「Microsoft Power BI」には、データの準備やモデル化に関する能力を評価する資格試験があります。
Microsoft Power BIを使用する企業で働くデータサイエンティストや、Microsoft Power BIを活用したい人が資格試験の対象です。
拡張性の高いデータモデル設計や、データの変換、データの可視化などに関する知識が求められます。
- Tableau
データ分析ツール「Tableau」に関するスキルを証明したい場合、タブローソフトウェア社が認定するDesktop Certified Associateや、Desktop Certified Professionalなどの資格が有用です。
Desktop Certified Associateは初級~中級の資格で、Tableauの基礎知識を理解していて、5か月以上使用経験がある人を対象としています。Desktop Certified Professionalは上級の資格で、1年以上の使用経験があり、Desktop Certified Associate有資格者が対象です。
両方の資格で、データ分析やTableau Desktopの機能に関する幅広い知識が求められます。
- Qlik Sense
データ分析ツール「Qlik Sense」に関する資格は、ビジネスアナリスト認定、データアーキテクト認定、システム管理者認定の3つです。いずれの資格も、日々の業務でQlik Senseを活用している人が対象となっています。
ビジネスアナリスト認定では、Qlik Senseを使ったアプリケーションの開発経験が必要です。データアーキテクト認定では、Qlikプラットフォームのアーキテクチャに関する理解やデータ設計能力が求められます。
システム管理者認定は、Windows Serverベース環境での6か月以上の管理者経験や、ネットワークに関する知識などが必須です。
- データ分析実務スキル検定(CBAS)
株式会社データミックスが運営するデータ分析実務スキル検定(CBAS)は、ビジネスの現場で役立つデータ分析スキルや、データ活用スキルを学びたい人を対象としています。
CBASでは、ビジネスパーソンが最低限知っておくべきデータサイエンスの知識が学べます。データ分析の実務スキルや、統計学・機械学習に関する知識、PythonやSQLなどのプログラミング言語に対する理解が必要です。
- LAD
グラフ社が運営するLADは、組織内でデータサイエンティストを育成したい企業向けの認定資格として作られました。実務の中でAIエンジニアやデータサイエンスを活用したいビジネスパーソンがLADの対象です。
LADの資格試験では、国内唯一のデータサイエンスMBAとして年度毎に最適構成のデータ分析環境やプログラミング言語の知識、機械学習や事業実装を実現する包括的な体系理解などが求められます。
データサイエンスの資格の需要が高まる背景
データサイエンスやAI、IoTの活用が国際的に広まっているなか、専門知識を得るためのカリキュラムや、スキルを証明するための資格が重要視されています。
2021年4月には、一般社団法人情報処理学会によって、データサイエンスの専門教育向けカリキュラムが策定されました。また、ビジネスパーソンのデジタルリテラシーを高めるために、官民連携のデジタルリテラシー協議会も設立されるなど、データサイエンス分野の取り組みが活発です。
これらの背景から、データサイエンスの知識は、今後のビジネスにおいてより欠かせない一般的なものになっていくと予想されます。
同時に、先ほど紹介したような専門資格の有無が、知識を測る際の重要な材料となるはずです。
成長過程にあるデータサイエンスの分野において、専門資格を有するデータサイエンティストの需要は、今後ますます高まっていくと考えられます。
おすすめ勉強方法
データサイエンス分野に必要な知識やツールに関する情報は、日々アップデートされるため、書籍や参考書があまり豊富ではありません。数年前に出版された書籍の内容が、すでに古くなってしまっているケースもあります。
データサイエンス分野の勉強をする際には、オンライン学習がおすすめです。オンライン学習は教材の内容が常に更新されているため、最新の情報に触れながらデータサイエンスを学ぶことが可能です。
オンライン学習サイトのUdemyなら、幅広い資格試験にも対応しています。データサイエンス関連の資格取得を目指す人は、Udemyの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ビッグデータや機械学習の発展に伴い、データサイエンティストの需要はこれからますます高まっていくことが予想されます。すでにエンジニアとして働いている人も、データサイエンスの技術を身に付けることができれば、スキルアップだけでなく、転職にも有利になることは間違いありません。
今回紹介したように、一言でデータサイエンティストと言っても、幅広い知識とスキルが求められます。まずは、現在の業務に関連する分野や、興味のある分野の勉強から始めることがおすすめです。
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