「Gradle(グレイドル)」を活用すれば、Javaをはじめとするさまざまなプログラミング言語の開発を効率化できます。Gradleは非常に便利ですが、
・Gradleで何ができるのかわからない
・具体的なインストール手順や基本的な使い方が知りたい
と考える方は多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、
・Gradleの概要や特徴
・ほかのビルドツールとの違い
・Gradleのインストール手順、基本的な使い方
についてわかりやすく解説します。
INDEX
Gradle(グレイドル)とは?
Gradleは、Java開発を中心としたソフトウェア開発のビルド自動化ツールです。オープンソースで提供され、プロジェクトのコンパイル、テスト、パッケージング、デプロイメントなど、ソフトウェア開発における多様なタスクを効率的に管理できます。
Gradleの最大の特徴は、JVM上で動くGroovyスクリプト言語を使用してビルド設定を記述する点です。従来のXML形式の設定ファイルと比較して、より柔軟で読みやすい設定が可能です。Java、Kotlin、Scala、Pythonなど、複数のプログラミング言語に対応しており、特にAndroid開発では標準的なビルドツールとして広く利用されています。
プラグインによる拡張性が高く、開発者は必要に応じて機能を追加できます。また、Maven互換のリポジトリを使用でき、依存関係の管理も容易です。インクリメンタルビルドやキャッシュ機能により、大規模プロジェクトでも高速なビルド処理を実現できます。
Gradleを活用できるプログラミング言語について、基礎から学びたい方は以下の記事をご覧ください。
◆Java入門!言語の特徴や環境構築・基本処理の記述方法を解説!
◆【Kotlin入門】言語の特徴や環境構築の手順・基本文法を解説!
◆Python入門!導入方法や基本的な使い方を分かりやすく解説
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Udemyで講座を探す >Gradleの特徴
Gradleは、従来のビルドツールとは異なる独自の特徴を持ちます。Gradleを活用するうえで知っておくべき特徴について、一つずつ見ていきましょう。
XMLの設定ファイルではなくGroovyのスクリプトで記述
Gradleは、従来のXML形式の設定ファイルを利用せず、Groovyスクリプト言語を用いたビルドスクリプトを採用しています。Javaでコーディングする場合と同じように、直感的にスクリプトを記述できるため、Java経験者にとって学習コストが低い点が特徴です。
Groovyはその言語的特性から、Rubyの影響を受けた動的プログラミングも可能であり、プロジェクトの要件に応じて柔軟に記述できます。
Rubyについては「Rubyとは?初心者向けプログラミング体験もできる記事!」で解説しています。
プラグインが豊富
Gradleの基本機能は、最小限に抑えられていますが、その分、多様な目的に対応する豊富なプラグインが用意されています。開発者は必要な機能のみを選択してインストールでき、プロジェクトに最適化されたビルド環境を構築することが可能です。
さらに、独自のプラグインを作成することもでき、拡張性が高い点も特徴の一つとなっています。
記述の間違っている箇所が明確
Gradleのビルドスクリプトは、従来のXML設定ファイルと異なり、スクリプト言語であるGroovyを使用するため、エラーの検出と修正が直感的に行えます。プログラミング言語でコーディングする場合と同様に、問題のある箇所が明確に示されるからです。
コンパイル時に、スクリプト内の文法的な誤りや、設定ミスがリアルタイムで検出されます。統合開発環境(IDE)上では、エラーの正確な行番号と詳細な説明が表示されるため、迅速かつ容易にデバッグすることが可能です。
省略記法が多い
Gradleで使用されるGroovyは、簡潔な記述を可能にする多くの省略記法を提供しており、コードの記述量を大幅に削減できます。一例として、次のような省略記法が挙げられます。
- セミコロンの省略
- メソッド呼び出し時のカッコの省略
- returnキーワードの省略
- 型宣言の省略
など
省略記法により、簡潔に記述できる点は大きな特徴の一つですが、省略記法についての知識がないとコードの読解に支障をきたす可能性も考えられます。Groovyを利用する際には、省略記法も併せて学ぶことが重要です。
必要なライブラリを自動的にダウンロード
Gradleには、Mavenリポジトリと同様の「Repository(リポジトリ)」機能があり、ビルドに必要なライブラリを自動的にダウンロードできます。開発者は参照先のリポジトリや優先順位を柔軟に設定できるため、効率的な依存関係管理が可能です。
注意点として、Gradleには独自のリポジトリがありません。MavenCentralなど外部のリポジトリから依存関係を取得している点は覚えておきましょう。
ほかのビルドツールとGradleの違い
Gradleはビルドツールの一種であり、Gradle以外にもビルドツールは存在します。Java用のビルドツールとして有名な「Ant」や「Maven」と比較し、どのような違いがあるか解説します。
結論からいうと、GradleはAnt・Mavenの歴史を継ぎ、両者の良いところ取りをした優れたビルドツールといえます。
Ant
Ant(アント)は、Javaプロジェクトにおける最も古いビルドツールの一つです。XMLベースの設定ファイルを使用し、ビルドプロセスを定義します。Java開発向けIDEの一つである「Eclipse(イクリプス)」の標準ビルドツールとしても知られています。
Gradleとの大きな違いは、ライブラリの依存関係を自動的に解決できない点です。開発者は手動でライブラリを管理する必要があり、プロジェクト管理の観点から見ると、あまり効率性はよくありません。
それでも、Java開発における標準的なIDEであるEclipseの標準ビルドツールとして利用できる点は、評価すべき点といえるでしょう。
Eclipseについては、「Java向けのIDE「Eclipse(エクリプス)」のインストールや使い方を解説」で詳しく解説しているため、気になる方はこちらも併せてご覧ください。
Maven
Maven(メイヴェン、メイブン)は、Apacheソフトウェア財団が開発したAntの後継ツールです。POM(Project Object Model)という設計思想に基づいてプロジェクトを管理し、依存関係の解決を自動化できる点が大きな特徴です。
XMLベースの設定ファイル(pom.xml)を使用し、プロジェクトの依存関係、ビルド設定、ライブラリ管理を一元的に行うことができ、プロジェクトの構造化と標準化を実現しています。
Gradleと比較すると、Mavenは学習コストが比較的低く、初心者にとって理解しやすいビルドツールといえます。ただし、大規模プロジェクトにおいては処理速度が遅くなることがあり、Gradleに比べてパフォーマンス面で劣る場合があります。
Mavenについてより詳しく知りたい方は、「Mavenとは?機能やインストール方法を分かりやすく解説【Java】」も併せてご覧ください。
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Gradleのインストール手順
ここからは、実際にGradleをインストールして利用する手順を解説します。
まずは、Gradleをインストールしてみましょう。ここでは、Windows 11にて手動によるGradleのインストール方法を解説します。Gradleのインストール方法はいくつかあるため、そのほかの方法が気になる方は「Gradle Installation」をご参照ください。
1.Gradleのダウンロードページからbinary-onlyを選択し、ZIPファイルをダウンロード
2.適当な場所にファイルを展開する(ここでは「C:\gradle-8.12」となります)
3.環境変数を追加するために、検索窓で「環境変数」を検索し「システム環境変数の編集」を選択
4.システムのプロパティ画面で「環境変数」ボタンをクリック
5.環境変数画面のシステム環境変数で「Path」を選択し、「編集」ボタンをクリック
※ここでは、システム環境変数にパスを追加しています。ユーザー環境変数に追加したい場合は、画面上部の環境変数に追加してください。
6.環境変数名の編集画面で「新規」ボタンをクリックし、パスを追加してOKボタンをクリック
※前述のとおり、「C:\gradle-8.12」にファイルを展開しているため、追加するパスは「C:\gradle-8.12\bin」になります。
7.コマンドプロンプトを開き「gradle -v」コマンドを入力し、バージョンが表示されることを確認
ここまでで、Gradleのインストールは完了です。
Gradleの基本的な使い方
ここからは、Gradleの基本的な使い方を以下の流れで簡単に解説します。
プロジェクト作成
ここでは、基本的なJavaアプリケーションのプロジェクトを作成し、実行するところまで解説していきます。
まずは、プロジェクトのディレクトリを作成しましょう。今回は「C:\code\gradle-project」を作成して進めていきます。ディレクトリ作成後、Gradleのプロジェクトを初期化するコマンドを入力してください。
gradle init –type java-application |
コマンド入力後、対話形式でプロジェクトの初期化が進みます。今回は次の通りに進めました。入力していない箇所は、デフォルトの値が選択されています。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 |
Enter target Java version (min: 7, default: 21): Project name (default: gradle-project): Select application structure: 1: Single application project 2: Application and library project Enter selection (default: Single application project) [1..2] Select build script DSL: 1: Kotlin 2: Groovy Enter selection (default: Kotlin) [1..2] 2 Select test framework: 1: JUnit 4 2: TestNG 3: Spock 4: JUnit Jupiter Enter selection (default: JUnit Jupiter) [1..4] Generate build using new APIs and behavior (some features may change in the next minor release)? (default: no) [yes, no] |
最後に「BUILD SUCCESSFUL」と表示されれば完了です。
プロジェクトのディレクトリ配下にさまざまなファイルやフォルダが作成されていることが確認できます。
プロジェクトをビルド
続いて、プロジェクトをビルドします。
はじめに「app」ディレクトリ配下の「build.gradle」ファイルを開いて必要に応じて修正します。
C:\code\gradle-project\app\build.gradle |
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plugins { id 'java' id 'application' } repositories { mavenCentral() } dependencies { testImplementation libs.junit.jupiter testRuntimeOnly 'org.junit.platform:junit-platform-launcher' implementation libs.guava } java { toolchain { languageVersion = JavaLanguageVersion.of(21) } } application { mainClass = 'org.example.App' } tasks.named('test') { useJUnitPlatform() } |
※コメント行は記載割愛
ファイルのなかで依存関係やプラグインを設定します。今回は「plugins」部分に「id ‘java’」を追加したのみです。ファイルの編集が終わったら、プロジェクトのビルドコマンドを実行します。
.\gradlew build |
「BUILD SUCCESSFUL」が表示されれば、完了となります。
タスクを作成する
Gradleのタスクとは、ビルドプロセスにおける基本的な作業単位です。プロジェクトのコンパイル、テスト、デプロイメントなど、特定の処理を実行するための最小の作業モジュールといえます。
タスクは、build.gradleファイル内で「task」キーワードを使用して定義します。ここでは、「greeting」タスクと、カスタムタスク「customTask」を作成してそれぞれ実行してみましょう。
build.gradleファイルの下部にタスクを追加します。
C:\code\gradle-project\app\build.gradle |
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task greeting { doLast { println 'Hello, Gradle!-greeting' } } task customTask { description = 'Example CustomTask' group = 'custom' doFirst { println 'First Action' } doLast { println 'Last Action' } } |
※追記部分のみ記載
ファイル編集後、保存したら次のコマンドでタスクを実行してみましょう。
.\gradlew greeting .\gradlew customTask |
それぞれ、設定したとおりに出力されていることがわかります。
アプリケーションを実行する
最後に、アプリケーションを実行してみましょう。
プロジェクトの初期化でサンプルコードが作成されているため、メッセージの内容を修正して実行してみます。
C:\code\gradle-project\app\src\main\java\org\example\App.java |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
/* * This source file was generated by the Gradle 'init' task */ package org.example; public class App { public String getGreeting() { return "Hello, Gradle World!"; } public static void main(String[] args) { System.out.println(new App().getGreeting()); } } |
アプリケーションを実行するコマンドは次の通りです。
.\gradlew run |
アプリケーションが実行され、文字列が出力されていることが確認できます。
Java開発に必要なビルドの基礎知識を身につけよう
Gradleは、Java・Kotlin・Scala・Pythonなどの複数の言語に対応したソフトウェア開発のビルド自動化ツールです。オープンソースで提供されているため、誰でも気軽に利用できます。
AntやMavenなどと異なり、XML形式の設定ファイルではなく、Groovyスクリプト言語を使用してビルド設定を行うため、より柔軟で読みやすい設定が可能です。使いこなすにはある程度の学習コストがかかりますが、簡単なところから始めてみてはいかがでしょうか。
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