思考習慣の見直しで、目的実現のための
学び時間を確保!

  • 30代
  • コンサルティング
  • 経営者
  • Before

    職業 一般事務

    役職 派遣社員

  • After

    職業 行政書士

    役職 経営者

取材にご協力いただいた方 南部成美さん

一人で仕事や育児、家事を抱えてしまい、倒れてしまった南部成美さん。
心理学を学び、「思考習慣」を見直すことで時間を作り、短期集中で法律やビジネスを学んで、「女性の生き方・働き方の選択肢を広げる」ための事業を起こす目標を達成しました。
現在もMBA取得を目指して学び続けていますが、得た知識をもとに交わすお子さんと会話が、一番のアウトプットになっているそうです。

仕事に育児に家事に……、学ぶ以前に必要な「土台」とは?

「今のままでは時間を作ることもできないですし、何かを学んで吸収していく土台がないなと思いました。幸い、心理学の本はよく読んでいたので、『思考習慣』を変えれば行動も変えられる。時間を作ることもできる。事業を立ち上げるという目的にも向かっていけると思いました」

転勤先の静岡で専業主婦として暮らしていた南部成美さんが、2人のお子さんとともに家を出たのが2018年、33歳のときでした。

静岡を出て初めての土地で暮らすことになりましたが、再就職は難航しました。保育園と学童の空きを探し出し、なんとか派遣社員として働き始めたものの、仕事も育児も家事もこなす生活は余りにも負担が大きく、仕事帰りの路上で倒れてしまったことも……。

幸い、通りがかった母子に助けてもらいましたが、そのとき、見ず知らずの人がかけてくれた「がんばったね。もう大丈夫よ」という優しい言葉に、南部さんは大泣きしたそうです。

「あの親子が自分を救ってくれたように、私も誰かを助けられる人になりたい」

そう強く思うようになり、それは自らの経験が重なったことで、「女性の働き方や生き方の選択肢を広げる仕事を」と、自ら事業を起こす堅い決意になっていきました。

「そのために、やはりビジネスの勉強はもちろん、起業するための法律やお金のことを学ぼうと思いました」

でも、ただでさえ忙しい毎日、「学ぶ」時間などあるのでしょうか?

「専業主婦をしていたときは、絶対に毎日手作りで何品の料理を作らなければならないとか、毎日、家じゅうを掃除しなければならないとか思い込んでいました。誰に言われたわけではないのに、そうしなければ『罪悪感』を持ってしまっていたんです」

それは派遣社員として働き始めても同じでした。懸命に働かなければ自分はダメになってしまう、子どもたちを幸せにすることはできない。根拠もなく、そう思い込んでいたのです。

その「思い込み」や「罪悪感」を払拭するところから始めなければなりません。「思考習慣」を変えて、行動も変えていく。そうすればきっと時間も作れるはず。

南部さんは「学ぶ」以前に、自分の土台を作らなければと気づきました。そしてそのためには、やはり「学ぶ」ことが必要だったのです。

「娘をひざに乗せて勉強していました」

「思い込み」を見直して、やらないことをどんどん決めていく

もともと大学では教育を学んでいたこともあり、教育学や心理学の本はよく読んでいました。それに加えて、南部さんはオンラインでアドラー心理学を学んだり、ライフチェンジプラクティショナーの資格を取ってNLPを実践することで、自分自身の「思い込み」を見直していきました。

「やらないことをどんどん決めていきました。1~2年ぐらいかけて、やらなくても済む仕組みも作っていきました」

たとえば、片付ける時間とモノを探す時間をカットするために家の中のモノを減らす。「衣替え」をなくすために服の数を絞る。洗濯時間を短縮すべく全自動洗濯機を購入する。乾いた洗濯物を畳まなくても良いようにハンガー収納にするなど、家事のあらゆる作業を徹底的に見直したそうです。

「勉強を始めるまでの私は、しっかりと子どもに手をかける『お母さん』でした。料理もおやつも全部手作り、工作も一緒に作って、おもちゃも手作りみたいな……」

好きなことではあったのですが、学ぶ時間を生み出すために、そのこだわりも見直しました。子育てのゴールと自分の人生の目的を明確にし、そのために「子どもと過ごす時間をどんなことに使い、子どもとどんな関係性を築いていきたいか」を考えて行動するようになりました。そうすることで南部さんは、必ずしも多くの「時間」をかけなくてもゴールに向かっていけると気づいたのです。

また、なんとなく続けていた人との付き合いも、本当に望んでいないのであれば、断るようにしたそうです。

「本当はあれがしたかったのに、やりたくないことをしてしまった……。毎日、自分がその日に考えたことをノートに書いたり、スマホにメモしたりして、言葉にしていきました」

そうすることで多くの「思い込み」に気づけたそうです。そしてそれを克服していくと、意外なほど自由に使える時間が見えてきました。その貴重な時間を「本当に大切なこと」に使おうと心に決めました。自分で事業を起こすという目標を達成するのです。

「タイミングも大事でした。下の娘が小学生になると、PTAをはじめ親の出番がすごく増えてしまいます。その前になんとか行政書士とFP(ファイナンシャル・プランナー)の資格を取り、その翌年には起業しようと決めました」

平日は早朝4時から5時まで、休日は4時から8時までを勉強の時間にあてました。日中も通勤途中や手が空いた時間があれば、すぐにスマホを取り出してeラーニングに取り組みました。「耳学」も有効でした。

「家事や育児をしながらでも、動画の講義を音声だけで聞いたり、法律の条文などを自分で録音してそれを聞いたり、ずっと『耳学』していました」

座学に使える時間は短かったものの、すき間の時間を寄せ集めたり、「耳学」をしたりすることで、短期集中の「学び」を実現。南部さんはわずか4カ月で、行政書士とFPの資格を取得したのです。

女性起業家のための事業を開始、お子さんとの会話が一番のアウトプット

「法律の資格が取れたので、まずはこれを専門にやっていこう」。2021年7月、南部さんが開業したのが、なるみ行政書士事務所です。

自分と同じように、起業を志す女性を応援したい。サービス提供のための契約書や規約、法律的な義務とされる表記を用意したり、ホームページの表現が法律的に問題ないかチェックしたりするなど、起業家にとって、法律面のサポートは欠かせません。

女性起業家向けに「思考習慣」の講座も開催しました。自分を縛り付けている「思い込み」や「罪悪感」に気づき、そこから解放されれば、人は自在に動き回ることができる──。それを土台に、自分の本当の目標に向かうために集中することができます。

南部さん自身、その後も自分の「思い込み」を自覚しながら、それを克服して、事業を軌道に乗せてきました。

早くからオンライン秘書チームをつくり、自分でなくてもできることを任せるようにしたこともその一つです。

起業する前は、「仕事の手放しや外注をするには一定以上の収入がなければと思い込んでいましたが、早い段階で任せられるところは人に任せるようにしたことで、自分にしかできない仕事に集中することができ、事業の成長スピードが格段に上がりました」

現在、南部さんは、女性起業家が、思考を整理しながら時間を生み出し、ビジネスのコアを学び実践して事業を伸ばせるよう伴走する、個別コンサルティング付き講座を提供しています。

そして南部さんは、今も学び続けています。

「大学院でMBA取得を目指しています。マネジメントやマーケティングについて歴史をさかのぼって学ぶことで、経営について本質的な理解が深まります。また、今の自分の事業が社会でどのような意味を持っているのか、今後どのように貢献していきたいのか、より明確になりますし、10年後、20年後の事業はどうあるべきか、長期的な目線を持つことができるようになりました」

そこで学んだことも、女性起業家にとって役に立つ形で提供していきたいと言います。

「学ぶ」ことで自身の土台を作り、「学ぶ」ことで女性をサポートする事業を実現した南部さん。「学ぶ」効果はほかにもあります。

「学び始める前は、私が勉強をガリガリやるようになったら、子どもたちにどんな影響があるんだろうと、ちょっと心配になったこともありました。でも、それこそ『思い込み』でした。勉強したことを子どもたちにわかるように話そうとすると、自分の理解も深まりますし、子どもたちもお母さんとの会話がすごく楽しいって言ってくれるんです。私が大学院の課題に追われていると『ファイト!』と、応援もしてくれます」

学んだことを本当に自分のものにするには、何らかの形でアウトプットすることが大事とのこと。南部さんの場合、経営者として事業での実践や講座での情報提供は当然ですが、日常生活においては、お子さんとの会話が一番のアウトプットになっているようです。思考習慣の見直しで、家族の絆もより強いものになりました。

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