組織の課題に目が向くきっかけになった
「コーチング」の学び

  • 30代
  • ITエンジニア(マネジメント職)
  • 会社員
  • Before

    職業 ITエンジニア(マネジメント職)

    役職 会社員

  • After

    職業 ITエンジニア(マネジメント職)

    役職 会社員

取材にご協力いただいた方 坂巻一義さん

ITエンジニアとしてキャリアを築いていた坂巻一義さんですが、コーチング研修を受けたことで、行動に変化が生じました。
以後、特命チームを設立して、組織課題の一つであるエンジニア不足を解消する方策を提言したり、 新規事業の立ち上げに関わったりし、組織課題の解消に向けて大きな一歩を踏み出しました。
それに応じて「学び」方も大きく変化してきました。

「できます」と答え、新しい分野の勉強を始めることも

「学生の頃から、ただひたすらITの世界へと考えていました」

AWS(Amazon Web Services)の活用支援として幅広いサービスを提供しているクラスメソッド株式会社(以下、クラスメソッド)。そこで現在、新規事業の創出に携わっているのが、坂巻一義さんです。

学生時代から、ITの世界でやっていきたいと強く願い、情報処理関係の資格取得のために書籍で勉強しました。15年ほど前のことです。

「業界は即戦力を求めますが、現場で通用するスキルを身に付けるには実務経験が不可欠です。資格がイコール、現場力ではないとはわかっていましたが、自分の力を示せる、わかりやすい一つの指標と考え、目標にしました」

急激なスピードで進歩し、めまぐるしく状況が変わっていくITの世界で働くには、高度なスキル・スキルのアップデートが必要です。ところが、そのようなスキルを習得していくには、自己学習だけでは限界な部分があると感じています。大きなジレンマですが、それを突破する一つの手段が資格の取得だったのです。

専門の参考書を買い込み、ひたすら独学で学びました。そのかいあって、卒業後はITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせることができました。その後も坂巻さんにとって、仕事と「学ぶ」ことは一体となって進んでいきます。

どんな依頼にもまず「できます」と答え、それから新しく勉強を始めることは、珍しくありませんでした。

それは一つの営業スタイルであり、仕事への姿勢、気持ちの持ち方の表れでした。坂巻さんはそれを「気力」、あるいは「マインドセット」と表現しています。「学び」といえるかどうかは別として、業界で生き抜くために、身につけなければならなかったことです。

こうして第一線で仕事をし続けてきた坂巻さんですが、30代の前半に大きな転機を迎えます。AWSが業界を大きく変えようとしており、自分の将来も見直さなければと思ったのです。

「これまで苦労していたことが、AWSでものすごく簡単にできてしまう。自分で操作してみてそれを実感しました」

AWSの可能性に衝撃を受け、第一線で働きたいと転職

多くの企業では、独自のサーバーを保有し、そこに開発したソフトウエアを入れて、事業の展開に活用したり、仕事の効率化を図っています。

AWSは、サーバーそのものをクラウド化することで、サーバー構築やメンテナンスの手間を省けるだけでなく、備わっている多くのサービスを利用することで、ソフトウエア開発を大幅に簡略化することができます。

その可能性の大きさに「衝撃を受けた」坂巻さんは、AWSの現場への配属を調整し、それと同時にAWS関連の資格を調べ、さっそく学びをスタートさせます。実務経験、資格をテコに、2018年、現在のクラスメソッドへの転職を果たしました。同社がAWSの活用支援としては最も優れていると考えたからです。

AWSの仕事をするためにスキルを身につけたい。とはいえ、現場で通用するスキルを身に付けていくには多くの実務経験が不可欠。かつてITの世界に飛び込むときにぶつかった同じジレンマが今回も立ち塞がりましたが、それを坂巻さんはやはり資格取得という手段で突破しました。

坂巻さんは、AWS事業本部のコンサルティング部に所属することになり、クライアント企業の課題を、AWSで解決していく仕事に就きました。希望通りの仕事で、自分のスキルも高まっていくことを実感できたそうです。

しかし、その状況も1年後にリーダーとなり、2年後にマネージャーとなってからは、少しずつ変わっていきました。

マネジメントの勉強を始め、チームのパフォーマンスを最大化することに意識を向けていますが、それだけでなく、ほかにもできること、すべきことがあるのではないかと自身に問いかけていたようです。

「メンバーはプロフェッショナルな方が多いので、特にフォローせずとも各自の現場は進行しています。コミュニケーションを強化し、より顧客に対する価値を検討したり、問題を事前に捉えるようなアプローチを行ってはいましたが……」

しかしまもなく、坂巻さんの行動に変化が生じます。コーチングの研修を受け、大きな衝撃を受けたのです。

研修で得た“ビルダー”としての自覚、課題を見つけアクションを起こす

研修の目的は、クラスメソッドの企業理念、「オープンな発想と高い技術力により、すべての人々の創造活動に貢献し続ける」ためにプロ集団になることでした。

その研修では、企業理念が掲げるプロ集団を実現するために「ビルダー」であるとはどういうことか? という問いに対する答えを探し、自分の考えを行動に移すことでした。

自分なりのビルダー像を定義するという課題の中で、坂巻さんはマネージャーとしての普段の自分の仕事を振り返っていきます。チームのパフォーマンスを最大にするだけでいいのか――実はそんな疑問が、常に頭の隅にありました。

そして行き着いた答えは、「組織課題に対し問題提起ができて、自発的にアクションを起こせるのがビルダー」ということでした。

「何もない状態から、何かを作っていくのがビルダーと思えました。それでは自分の組織はどうなのか。今、取り組んでいるAWSのビジネスについて、私にはどのような課題があるのか、何ができるのか……」

次々と湧いてくる疑問を整理していくと、課題の一つに職場ではいつもエンジニアが不足しており、クライアント企業の要請に十分に応え切れていないのでは、という問題が浮かび上がってきました。

アクションを起こさなければ……。坂巻さんは部署内に特命チームを発足させることを進言しました。2022年7月のことです。

ちょうど、フリーランスのエンジニアを登録、派遣するグループ会社の設立が進んでいた時期だったため、その新会社と協力することで、不足するエンジニアをフリーランスから募り、教育事業も同時に行ってスキルの養成を図っていく。そんな事業の枠組みを作っていきました。

それが、組織の慢性的なエンジニア不足の緩和に寄与していきました。

1年後の2023年7月、坂巻さんは新規サービス立ち上げのチームに異動になり、現在は、組織の課題に取り組んでいます。

「たとえば新しくサービスをつくろうとすれば、すでに成功しているフレームワークが参考になるはずと、ITIL※を調べます。そして、自社サービスとしてそれをどう応用できるのか、どう表現できるのかを考えていきます」

坂巻さんは自分の仕事を次のようにも表現しています。

「課題解決のため、インプットもアウトプットもしますし、周囲の人からフィードバックももらって、改善して品質を高めることもします。その一連の作業を仕事として普通にやっているという感じです」

インプット、アウトプット、そしてフィードバックによる改善。どこまでが仕事でどこまでが「学び」なのか、区別することは難しいですが、これらを一体として進めることで、新しいサービスが形作られていくことがよくわかります。

ビルダーとしての坂巻さんの仕事はこれからより本格化しそうです。

※ Information Technology Infrastructure Library:ITサービスマネジメントの成功事例をまとめた国際的なガイドライン。

注目の講座

おすすめ記事

×