経理の魅力にはまり、自分への
挑戦として学びに打ち込む

  • 50代
  • 経理
  • 正社員
  • Before

    職業 エンジニア

    役職 会社員

  • After

    職業 経理

    役職 会社員

取材にご協力いただいた方 鈴木憲二さん

鈴木憲二さんが、会計の勉強を始めたのは47歳のときです。
いったん始めるとその緻密でシステマティックな世界に魅了され、以後、次々と資格に挑戦していきます。ついには経理部門に異動を果たし、SE時に習得したマネジメントのスキルも生きて、現在、仕事に熱中しています。
鈴木さんが経理を学び続けるのは「好きだから」、そして「自分への挑戦」だからだそうです。

大病がきっかけ、軽い気持ちで始めた会計の勉強だったが……

「借方・貸方の仕組みだったり、利益計算の仕組みだったり、損益計算書にしても、貸借対照表にしても、それぞれが連動し、よく考えられた仕組み。これを考えた人は天才だなと思いました。会計を学ぶことがすごく面白くなりました」

ベネッセコーポレーションの経理部門で働く鈴木憲二さんは、40代まで、ずっとシステムの分野でキャリアを築いてきた人です。

ソフトウェアベンダーでは、直接の顧客だけでなく、その向こう側にいる顧客(一般消費者)にも関わりたいと、ソフトウエアベンダーから事業会社である大手コンビニ本部の情報システム部門に転職し、さらにベネッセコーポレーションへ移って、デジタル教材の開発などのプロジェクトに関わってきました。

大きなプロジェクトでは、関わる人間は100名を越え、数年がかりの仕事になることも。そのプロジェクトの成功に向け、緻密に計画を策定し、計画に基づき、推進し成功に導くのが、鈴木さんが今まで担ってきたマネジメント系SEです。

ずっとこの世界で生きていくと思っていましたが、2011年44歳のとき、転機は突然やってきました。

「大病を患いました。医者からも、もしかしたら……、というようなことを言われ、会社には、少し身体に負担のかからないところへ異動させてもらったんです」

3週に一度のペースで2泊3日で治療入院、時によっては輸血にたよるような時期があり、土日と有休を使いながら苦しい治療を繰り返していました。鈴木さんは、この時期少し忙しい仕事からは離れ、部下もなく、自分の時間を持つことができました。数年苦しい治療が続き、少し治療が楽になってきたとき、せっかく時間があるので、将来的なSEとしての幅を広げるため、軽い気持ちで始めたのが簿記会計の勉強です。しかし、いざ始めてみると、その「論理的で、隅々まで考え尽くされたシステム」(鈴木さん)に、夢中になっていきます。

「ブックオフで参考書を買い込み、独学で勉強を始めました。3カ月で(日商簿記検定試験の)2級と3級を取ることができました。調子に乗って、その約半年後に独学で税理士試験に挑戦したものの、見事に落ちました。やっぱり簡単ではありませんでしたね」

気落ちするどころか、ほどなく税理士の予備校へ行き、本格的に勉強を始めました。

「独学には確かに意義はありましたが、仕事しながら限られた時間で勉強しなければならず、そうなるとやっぱり予備校はカリキュラムも教材もよくできていて、結局は、近道でした」

そしてその翌年の8月には税理士試験の簿記論に合格、1年後にも財務諸表論に合格しました。

そればかりではありません。社内の公募制度で経理部門へ異動を希望するなど、社内でアピールを続け、数年かかりましたが、最終的には経理部門への異動を叶えたのです。2019年のことでした。

希望通り経理へ異動、SEの経験も生きて

「机上で学んだことと実務とでは、やはり違っていましたが、それがまた面白くなって、ますますのめり込んでいきましたね」

現在、好きな経理の仕事に打ち込めるようになった鈴木さんですが、そこではSEの経験も生きているといいます。

「プロジェクトマネジメントのスキルは、どんな仕事でも使えると思います。課題が持ち上がったとき、会社の方針や法制度を踏まえたあるべき形を定めます。あるべき形と現状とのギャップを測り、それを埋めていくための施策とその具体的な進め方を計画し推進していきます。どんなスキルのメンバー何人で、いつ、どんなタスクを、どういった順番で、どうやって……、会議体は……と計画に落とし、具体的なスケジュールや段取りを立てていくわけです」

最近の仕事としてはインボイス制度の導入があり、そのプロジェクトリーダーを務めました。また、会計・税務システムやツールの導入にも関わりました。

「特に税務調整業務は定型的な仕事なのに、なぜ基幹システムやパッケージがないのか、と疑問に感じていましたが、毎年のように税制が改正され、かつ一つひとつの業務が小さく、大がかりなシステムを作るのには不向きなのだとわかりました。結果、汎用的な事務ツールであるエクセルで、少しずつ変更しながら調整するという仕事の仕方が定着し、各担当が、まさに職人技でさまざまな関数やマクロを駆使しています。」

これもまた、鈴木さんにとって「理想と現実との違い」でしたが、現在、プログラム言語や専門知識のない経理部門のメンバーでも、ノンコードで業務ロジックが作れるAlteryx(アルテリックス)というツールを使い、Excelやマクロで作り込まれた業務ロジックを可視化して、業務の生産性を向上するプロジェクトがあり、鈴木さんは、リーダーとしてその推進役を勤めています。

「会社全体でDXを進める本部や情報システム部門のメンバーと連携してプロジェクトを進めることが多くなってきており、よりよい解決方法に向けた議論や認識相違がないようにするため、前職の知識や経験はすごく役立っています」

学ぶのは「自分への挑戦」、仕事で輝いていたい

望みがかない、経理の仕事に夢中になっている鈴木さんですが、学ぶことも続けていくそうです。税理士試験の消費税法には、5回挑戦して合格しました。現在は残りの2科目の合格を目指しています。

「何のために続けているのか? 自分への挑戦というのが一番ですね。自分はやればできるはずだ。それを自分自身で確かめたい。これまで勉強やスキル向上に夢中になったことはありませんでした。今思えば、30代、40代は、子どもとの時間を大切にしたかったので、仕事以外で勉強する時間を作ろうという気は起きなかったのでしょうね。面白いものに出合えて、時間がある今だからこそ、学びたくなるんだと思います」

40代の終わりに好きなことを見つけられたこと、50代になって自由にできる時間が増えたこと、そして「自分への挑戦」という大義ができたこと、この3つが揃ったことで、自分は今「学び」に打ち込めるのだと鈴木さんは言います。

そして、このことはおそらく誰にとって同じであり、条件が揃うには、組織の支援も必要ともいいます。

たとえば、社内でUdemy Businessを自由に使えることは、好きなことに出合えるチャンスを大幅に増やしていけるはずです。また、自分の時間が作れるかどうかは個人のライフサイクルによるところもありますが、残業の多い職場では難しい場合もあるでしょう。

仕事に対してまじめで、ついつい遅くまで働きすぎてしまう人は多いと思うので、ノー残業デーや有休の奨励日といった制度も効果があると思います。

あとは鈴木さんのように「自分への挑戦」のなかで、「学ぶ大義」を見つけられるかどうか。個人の決意によって、チャンスと時間が揃えば、大義も見つけやすくなるのではないでしょうか。

「学んだ結果として好きな仕事に打ち込めれば、輝けるはずです。自分も輝いていたい。周りから見たときも『あのチームで働きたい』、そう思ってもらえるような、楽しくいい仕事をしていけたらいいなと思っています」

病気は奇跡的に回復しました。鈴木さんは今も「学び」と仕事に熱中しています。

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